見守る

「妊娠出来たら、それはそれで!ええやんって俺は思っとったんやで」


まこは、自分の時の話をし始める。


「まいちゃん?」


「うん!俺等も、10年不妊やったやろー。せやから、ようわかんで!まいは、不倫しとったしな」


「知ってる」


「まあ、よう龍に話したもんなー!やけど、俺は不倫相手との間に子供授かったら授かったで!よかった思ってたんやで」


「それは、何で?」


まこは、また顎に手を当てて話す。


「しんどかったんや!排卵日にねーとか、帰宅したら有無も言わさず風呂入らされて、終わったら大量のにんにくやら肉やら食わされて!やれ、サプリや酵素やゆうて!あの時、俺の心はボロボロやった」


「そうだったな」


「せやから、まいにゆうたんやで!そいつとの間に赤ちゃん出来たってええねんでって!俺、ちゃんとお父さんなるからって」


「そしたら、戻ってきたんだよな!まいちゃん」


「そうやねん!誠も苦しかったんやなーゆうてな」


まこは、ビールをグビグビ飲んで懐かしそうに目を細めて笑った。


「結局、夫婦の事なんか誰にもわからんのやで!だから、俺は龍がしたいようにすればええと思ってんねん。龍は、今の凛ちゃんにそいつが必要やってわかってんねやろ?」


俺は、首を縦に振った。


「ほんなら、待つしかないな!いつか、凛ちゃんは戻ってくるんやから」


「戻ってくるかな?」


「何、弱気な事ゆうとんねん!龍と凛ちゃんの15年が、そんなポッと湧いてきた男に壊されるわけあらへんやん」


そう言って、まこはビールを飲み干して店員さんを呼んで注文していた。そして、俺をジッと見つめて話す。


「経験者として、ゆうけどやな!絶対、ヤイヤイゆうたアカンで」


「やいやいって?」


「別れろとか浮気しとんやろとかな!」


「何で?」


「あれは、アカンで!火に油注ぐって言葉の通りやで!恋の炎、ボゥボゥ燃やして帰ってこんくなるからな」


「まいちゃんもそうだったの?」


「そやで!あっちと旅行まで行きよったわ!それも海外やで!信じられんわ」


そう言って、まこはぼんじりを食べている。ビールを店員さんが運んできて、また新たなねぎまがやってきた。


「せやから、龍はどしんと構えとけ!みみっちいことせんと!浮気ぐらいどうぞして下さいって気持ちでおれよ」


「わかった」


「責める時は、離婚する時やで!」


「うん」


「別れたくないんやったらジッーと我慢しとけ!まっとたら、そのうち自分でケジメつけて帰ってくるわ」


俺は、まこの言葉に頷いていた。


「でも、もしあっちを選んだら?」


「そん時は、思いっきりつめてやな!慰謝料ガッポリもろたったらええねん」


「それも、そうだな」


俺は、まこにニコリと笑いかけてビールを飲んだ。

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