知ってた事

「よっ!久々やなー」


「元気だったか?」


「元気、元気!せやけど、龍から飲みに誘ってくれる思わんかったわ」


「大阪に出張で来ててさ!つうか、まこはもう関西人だな」


「当たり前やん!もうこっちに住んで20年やで!バリバリやで」


「ハハハ、そうだな」


俺は、小学校からの幼馴染みである萩村誠はぎむらまことを呼び出して焼き鳥屋にやってきていた。


『お疲れー』


俺とまこは、運ばれてきたビールで乾杯をした。


「で、話ってなんや?」


「実は、凛が浮気してるんだと思う」


「確証は、あるんか?」


「いや、あんまりない。ただ、違和感が…」


「体重ねた時の微妙なズレみたいなんか」


そう言って、まこはねぎまを食べている。


「やっぱり、経験者は、違うね」


「そんなんで、褒められたないわ」


「ごめん、ごめん」


「何でか、龍には原因わかっとんやな」


俺は、頷いて焼き鳥のももを食べる。


「赤ちゃんか?」


俺は、まこの言葉にもう一度頷いた。


「電話でゆうとったもんなー。凛ちゃんに酷い事言うてもうたーって」


「そうなんだよ!あの日、凛に諦めないとか言っちゃったんだよな!可能性ゼロじゃないだろとかって言って」


まこは、俺の顔をジッーと見つめる。


「そりゃ、アカンわ」


「やっぱり、そうか」


「それは、龍が悪いな」


そう言って、ビールを飲み干すと店員さんにおかわりを頼んだ。


「やっぱり、そうだよな」


「で、何が聞きたいん?凛ちゃんと離婚するって話しなんか?」


店員さんは、ビールと新しい焼き鳥を置いていった。


「離婚なんかしないよ」


「まあ、それは、わかっとるけどな」


俺は、獅子唐を食べながらまこを見つめていた。


「龍は、凛ちゃんおらな生きてかれへんからな」


「何だよ!それ」


「だって、もう何年や?結婚しとるのと付き合ってんのいれたら」


「もうすぐ、15年になる」


「そんなんかー!そりゃあ、凛ちゃん子供欲しかったやろなー」


まこは、そう言ってねぎまを食べている。まこは、焼き鳥のねぎまが大好きな男だった。


「そうだよな」


「で、不倫相手との間に子供が出来る確率は?」


「ないに決まってる」


「やっぱり、アカンのか!凛ちゃん」


まこは、そう言って眉間に皺を寄せてながら顎を擦る。


「一緒に話を聞きに行った時にも、お医者さんに言われてたから!凛は、排卵しにくい体質だから薬で促さないと無理でしょうって」


「それやのに、治療諦めなアカンなったんやなー」


俺は、まこに電話で全て話していた。だから、まこは全部言わなくてもわかっていた。


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