宿敵は元親友

@woshida

宿敵は元親友

「数千年に渡る戦いの決着を、今日こそつけてやる」


 エフ博士が言った。


「望むところだ!」


 こう言ったのはワイ教授だった。

 二人は、もはやこの二人以外に動くものとていなくなった街で、二人きりで対峙していた。

 生き物はみな、死んだ。

 数千年前、ワイ教授が編成したロボット軍団による、エフ博士の指導する世界人類連盟に対する猛攻があった。

 それにより、人類の半分が死んだ。

 エフ博士は、超能力を使う人造人間の軍団を作って対抗した。

 すさまじい超能力と、ロボット兵器のぶつかりあいで、人類の残った半分が死んだ。

 人類の生き残りは、エフ博士とワイ教授だけとなった。

 それでも、戦いは終わらない。

 エフ博士は老化しない特殊な肉体に、ワイ教授はロボットに自分の意識を移し、それぞれの軍団を指揮し続けた。

 二人の戦いは、人類が滅びてもなお何千年も続く、真のハルマゲドンだと言えた。


 一体なにが、二人のあいだにこれほどの憎しみを駆り立てたのだろう。

 二人は、高校時代、親友だった。

 学業も互角で、学校のトップクラス。

 お互いに認め合う、よきライバル。

 ところがある日、ちょっとしたいさかいがあった。

 エフ博士が学食で食べていた唐揚げ定食から、ワイ博士が唐揚げを一つ失敬。

 貧乏学生のエフ博士は大激怒。


「おい、一体、どうしてくれるんだ、貴重なタンパクだぞ」

「ふん、唐揚げ一つでぐちぐち言うとは、人間の小さい奴だな。そんなことでは、将来、大した人間になれないぞ」

「なにを馬鹿な、この私にとっては大事な栄養源と楽しみなんだ、この人非人め」

「ふん、よくも言ってくれたな。よろしい。今後お前とは絶好だ。常に、お前とは反対の道を行って邪魔してやるから、覚悟するがいい」


 その後、エフ博士は化学の道に進み、人類を導く同盟の指導者となり、ワイ博士はそれに逆らい続け――人類は滅亡した。


 ちょっとした諍いいさかいと物別れも、なかなか馬鹿にできないものなのだ。

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