始まり

ルーシア・アヴェーヌはこの国の次期王女です。



王立の学校で優秀な成績を納め、

スタイルも良く


そして、身分を超えて誰に対しても優しい。



ある日の政治学の授業、そこで彼女の出した回答は、この国の未来を素晴らしいものに変える。

そう確信を覚えるような物ばかりでした。



誰もが、彼女が次期王女となることに期待していました。



ただし、例外も居ます。



実はルーシアは、王とメイドとの子でした。

そのことはこの国の重臣であれば知っている話です。



王はお妃様との間に子が出来ないことをひどく悩んでいました。


王はお妃様を愛していたのです。

特に政治的理由など一切ない、正真正銘の恋愛結婚。


この時代においては珍しく、結婚するにはそれは多くの壁を乗り越える必要がありました。


そのために、お妃様との子供が必要だったのですが、子供はどうしても出来ず、ルーシアを子供ということにしたのです。



国王という身。王位を継承させる子が必要でした。

跡継ぎが無い、などというのはありえない。


王はルーシアも愛しました。

施せる教育は全て施し、そしてルーシアはそれを湯水の如く吸収し、期待以上に答えました。



彼女が13歳の時に、彼女の人生にこれ以上とない影響を与える事件が起きました。


お妃様が懐妊されたのです。

ルーシアは弟か妹の誕生を心から喜びました。


だが王様とお妃様は気が気ではありません。



愛する后との子に王位を継がせたい。

だが、ルーシアはあまりにも優秀すぎて、あまりにも国民から愛され、そして誰もが次の王女となることを望んでいました。



下手に次期王位を取り上げられません。


后との子がルーシア以上に優秀なら手はありますが、ルーシアは百年に一度の神童と呼んで差し支えない。

楽観視は出来ません。


ではどうするか。



時間を掛けて貶める。



そのために、王は法整備の準備を始めます。




新法

○失禁防止法案

 学生のうちにオモラシまたはオネショをしたものは留年の考慮あり。

 三度もすれば落第とする。


○夜尿対策法案

 12歳以上のオネショは長引く可能性がある。

 そのため、それを叱り正さねばならない。

 これの監督は、年下の家族が望ましい。



誰もが疑問符を浮かべる法律が出来た。

だが、この国では今、若年性のオモラシの頻発が問題になっているらしい。


そんな話、聞いたことはなかったが、資料にはたしかにそのように書かれていた。



これが自分の身に降りかかるなどと、誰が予想できるだろうか。



この国では、年齢に応じて教育機関を分けています。

なお、中学までは義務教育で、国民は例外なく通うことになります。



幼稚園  4~6歳

小学校  6~12歳

中学校  12~15歳

高等学校 15~18歳

大学校  18~22歳



ここ数年で突如として落第に関する法整備が進みましたが、前例はなく、年齢と学年は一致しました。

なんせ、主な理由はオモラシです。


誰もが存在自体忘れるような法律でした。

それに一回ぐらいなら、みんなでなかったコトにします。

学校は閉じた世界なので、1クラスぐらいならなんとかなるのでした。



昨年、飛び級も制定。

これがもっと早くに整備されていれば、ルーシアはすでに飛び級で学校教育は全て終了していたことでしょう。


そんなわけで、年齢と学年はだいたい一致するのでした。



ですが今年、この年齢と学年が異なるケースの、初の適用者が発生したのです。

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