第56話:ランランのカメラ講座~露出補正



 今日は、学校帰りに蘭先輩のお家にお邪魔。


 宿題やら予習復習を一緒に。


 同じクラスだから、宿題とかも全く同じなので、便利。


 勉強を終わらせて一息ついたところで、以前から疑問に思っていた事を蘭先輩に聞いてみる。


「ねぇねぇ、蘭、蘭」


「何ですか、永依夢エイム。私はパンダじゃありませんわよ?」


「?」


 パンダ??


「ランランは日本でいっちゃン最初のパンダやな。相方が、カンカン」


 ちなみに、方菜かたなちゃんも一緒。


「ほぅほぅ」


「んほんっ。パンダの事はどうでもいいですわ。で、何です?」


「えっと、写真と言うか、カメラと言うか、撮り方? の事なんだけど」


「詳しく」


 やだ。なんか蘭先輩、前のめってる……


 方菜ちゃんも知らんふりしてるようで聞き耳ってる。



 わたしの疑問は、こうだ。



 空を飛んでいる鳥さんを撮ると、鳥さんがどうしても暗く、黒くなってしまいがち。


 逆に。


 木に停まっている鳥さんや、森を背景に飛んでいる鳥さんを撮ると、鳥さんが真っ白になってしまいがち。


 もちろん。


 いい感じに撮れる時もあるけど、わりと暗すぎたり明るすぎたりになる事が多い。


 そんなわたしの説明に、蘭先輩は。


「ああ……オート撮影だと、どうしてもそうなりますわね……」


「そっか、蘭もカワサキさんもオートじゃなくて、マニュアルだっけ?」


「ええ、マニュアルで露出を決めてますから、撮り方自体が全く違いますわね」


「うーん。わたしのカメラ、マニュアル設定できないしなぁ」


「オート撮影なら、露出補正を使うしかありませんけど」


「露出補正、かぁ。あったかなぁ」


「多分、と言うか、絶対ある筈ですわよ? 露出補正が出来ないカメラなんてカメラじゃありませんわ」


 ふむふむ。


 今日は学校帰りなので、カメラが手元に無い。


 家に帰ったら確認してみよう。


「今度、公園フィールドで実際に現物を見ながら教えて差し上げますわ」


「はーい、よろしくねぇ~」


 蘭先輩の家をお暇して、方菜ちゃんと駅へ。


「あンたら、ほンま、仲ぇえなぁ」


「そう?」


 方菜ちゃんの家は、わたしの家の最寄駅からさらに二個先。


 公園フィールドにより近い場所らしい。


「ほな、また明日な~」


「うん、また明日。ばいばーい」


 ん。もう、すっかり方菜ちゃんも仲良しさんになってる気がする。



 家に帰って、カメラと言うか、取説を確認。


「露出補正……これか」


 カメラに、プラスとマイナスが書かれた小さな四角いアイコン。


「このボタンを押すと、目盛りが出る、と」


 液晶パネルの右側に、0を真ん中にして、下にマイナス、上にプラスの目盛りが出て来た。


「上ボタンで、プラス。下ボタンでマイナス、か」


 下ボタンを何度か押してみる。


 画面が暗くなった。


 上ボタンを押して、ゼロに戻して、さらにプラスへ。


「お、明るくなった」


 ゼロを基準に、プラス側、マイナス側に明るさを補正できるのが『露出補正』か。


 ふむふむ。なるほど。



 次の週末。


 いつもの公園フィールドに集まった面々。


 いや、もう、方菜ちゃんもデフォルトメンバーにしっかり。


 今日は、蘭先輩の撮影講座~。ぱちぱち。


「空が背景の時はカメラが明るすぎると判断して、暗く写そうとするんですわ」


「そっか。だから、この場合は、露出補正をプラスにして少し明るく写すようにすればいいのね?」


「その通り、ですわ。森が背景の時や木の中を撮る場合は、逆になりますわね。暗いと判断して、明るく写そうとする」


「そっちの場合は、露出補正をマイナスにして暗いめにする、と。なるほどなるほど」


 しかし、問題。


「例えば、空を飛んでる鳥さんが、降りて来て、森の前に来たら……」


 そう、空イコール補正プラスを森イコール補正マイナスに変更しなければならない。


「いいところに気が付きましたわね。そう、だから、オートは使えねぇんですわ」


 えええっ!?


「撮りたい鳥の明るさは一定なのに、背景の明るさ暗さにつられてしまうのがオート。マニュアルだと、鳥の明るさに合わせた状態で固定できるので、背景につられる事もないんですわ。だから、おじさまも私もオートではなく、マニュアルを使っているんですの」


 おぅ……そういうオチかぁ!


 あれ? でも。


「え、でも、完全に森の中に入っちゃったりしたら、もっと暗くなっちゃわない?」


「その場合は、根性で露出を変えるんですわ。このダイヤルを左に回せばシャッタースピードが落ちて、明るく。右に回せば暗く」


 蘭先輩が自分のカメラのダイヤル部分を見せてくれるけど、シャッターボタンのすぐ前にあって、指をちょっと動かすだけで操作できるみたい。


 こっちのカメラだと、露出補正ボタンを押してから、上下ボタンの操作。


 しかも、カメラの背面にそのボタンがあるので、親指で操作しなければならない。


「とっさにその操作は、無理っぽい……」


「ええ、一眼レフとコンデジの根本的な違い、ですわね。一眼はこういった操作性を重視してデザインされていますから」


 なるほど~。値段の差とかもあるけど、根本的なコンセプトも違うのね。


「ちなみに、このダイヤルやボタンの機能はカスタマイズ設定で自分の使いやすいように変更できますの」


 うはぁ……


「なぁなぁ、ちなみに、蘭はンのそのカメラ、なンぼぐらいなン?」


 横でぼーっと聞いてた方菜ちゃんが乱入。


 蘭先輩のカメラの値段に興味を持った模様。


 確か・・・


「新品で揃えたら、百万弱、ぐらいでしょうか。これは中古で揃えたので、七十万ぐらいでしたけど」


 どひーっ!



「やっぱり、エエ値段すンねンなぁ……」



 ちなみに。


 レンズが一番高くて、中古で五十万。カメラも中古で十万。三脚雲台は新品で十数万、だそうです……レンズの五十万もびっくりだけど、三脚で十万とか、何それって感じ……だよね?



 欲しくても、おいそれと買える金額じゃないよねぇ……んー。




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