第37話:夏の遠征③~関西ゆーたら、お好み焼きやろ!(鳥さんどこ行った!?



 サービスエリアでうなぎを堪能して、トビさんも撮影して(ミサゴさんには会えなかった)


 今は関西方面に向けて走る走る。

 走ってるのは車で、走らせてるのは涼子りょうこさんで、わたしは座ってるだけ。申し訳ないとは思うも、免許持ってないし、免許取れる年齢じゃないし。


 はっ。


「そういえば、カワサキさんは運転されないんですか?」

 ずっと涼子さんが運転してるけど、疲れるだろうし、交代で運転とかしないのかな?


「ウチ、免許持ってないんよ」

「え? でも、バイク乗ってますよね?」

「二輪免許だけね。普通免許……車の免許は持ってないんだわ」

 ふぉお。そういう人も居るのかぁ。わたしの両親は二人とも車の免許持ってるし、まわりの大人もみんな車持ってるから、持ってるのが普通だと思ってた。


 いろんな人がいらっしゃるんだなぁ。


 いや、マテ。

 カワサキさんや涼子さんが特に変わってる、って説も無きにしも非ず?


「大丈夫や。ウチ、千キロくらいやったらトイレ休憩だけで走れるで?」


 涼子さぁーん……ヤッパリ、スゴスギ。




 途中、休憩のためにいくつかサービスエリアに立ち寄ったけど、珍しい鳥さんには出会えなかった。

 

 どこのサービスエリアでもツバメさんが巣を作っていて、沢山飛び交っていた。飛んでるところを撮ってみたけど、速すぎて全然、ダメ。巣にとまってるところは何枚か撮れたけど。


 駐車場と言えばハクセキレイさん。あなた方、どこの駐車場にもいらっしゃいますね……。


 山中にあるサービスエリアではカワサキさんが「オオルリの声が聞こえる」って言ったけど、かなり遠かったみたいでその姿を見る事はできなかった。




 そして、夕日が沈む頃。目的地である関西圏のとある町へと到着。


「お疲れさんやでー」

 いやいや。本来、一番疲れてるのは涼子さんのハズですよね?



 トラックの荷台から荷物を取り出して、ホテルへチェックイン。

 ホテルの部屋は、二部屋。

 カワサキさんと涼子さん兄妹ペアで一室、蘭先輩とわたしのペアで一室。まあ、妥当なところ。


「荷物置いたら晩御飯、お好み焼き、行くでー」

 部屋に入るところで涼子さんの宣言。


 ぉー。


 お好み焼き! いかにも! 関西!


 ホテルはわりと市街地のど真ん中にあって電車の駅にも近い。

 四人連れ立って駅前の繁華街にあるお好み焼き屋さんへ。


 じゅーじゅー。


 ソースの焦げる音と匂いと熱気。目の前で焼き上がるまあるいお好み焼き。

 クーラーが効いているとは言え、ホットプレートの熱気がすごい。


 はふはふ。


 とってもふわっふわで、とろける!


 家で作るお好み焼きは、なんかベタっとしてて、もさもさした感じになりがちだけど。

 さすが、本場!


 柔らかい生地の中にあるイカの歯ごたえ。ぷりぷりのエビ。シャキッとしたキャベツがほのかに甘く、ちょっと焦げてパリっとした感じの豚肉だけど、噛めばジューシー。もぎゅもぎゅ。


 そして何より、ソースそのものが甘辛で、濃厚で、クセになりそう!


 んんんんんんんん。 われぬこの美味うまさ!


 これを『えも』と呼ぼう!(違う




 見ると、蘭先輩もうっとりとお好み焼きに舌鼓。


 鳥さんを忘れそうになるくらい、これは食遠征なのか、と。

 いやー、でもでも、せっかくだしー!




 お好み焼きを堪能した後は近くの喫茶店で少しまったりとしてからホテルに戻る。明日は早起き、ってことで、シャワーで汗を流して少し早目に就寝。


 車では座ってただけだけど、それでもやっぱり長旅で疲れも出たのか、蘭先輩とのおしゃべりもそこそこに。

 そのおかげもあってか、翌朝は目覚ましが鳴る前に目が覚めた。


 陽はまだ登っていない。


 カーテンを開けると、ほんのり明るくなった空。真夏とは言え、日の出前の早朝の空気が少しひんやりといい心地。

 えーっと、明るさの感じから、こっちが東、そっちが西かな。

 などと、ぼーっと外を見ていたら。


 ピピピ、ピピピ。


 わたしと蘭先輩のスマホのアラームが同時に鳴動。


「……ふゎぁ……おはよう、永依夢エイム

 アラームで蘭先輩も起床。


「おはよ、蘭。よく眠れた?」

「んー、ぼちぼち、ですわ」


 蘭先輩と二人、ぱたぱたと着替えやら身支度を整えていると、コンコン、とノックの音。


「準備、よい?」

 ドア越しに、カワサキさん。


「は~い、もうすぐ行けます」

「んじゃ、駐車場で」

「は~い」

 準備はほぼ終わっていたので、すぐに駐車場へ。


「お待たせしました」

 車はすでにエンジンがかかっていて、涼子さんが運転席に、カワサキさんが助手席に着いていて、わたしと蘭先輩も後部座席に乗り込む。


「ほな、行くで~」

 駐車場を出て、一般道路。

 しばらく市街地のビルや住宅の間を走って幹線道路っぽい大きな道路に出る。その道路を進むと、ビルやマンションの間から所々田畑が見えてきた。


 涼子さんは道路沿いにあるコンビニの駐車場に車を停めた。


「よーし。飲み物と氷仕入れたら、ここから自転車で移動するよー」

 と、カワサキさんが説明してくれる。


「ウチと涼子で自転車降ろしとくから、二人は朝ごはんと飲み物、買ってきておいて。熱中症対策で、水、お茶、スポドリと、氷。あと、塩飴とかもよろしく」

「了解っ」


 言われた通り、コンビニで朝食と飲み物等などを仕入れて車に戻ると、三台の自転車は車から降ろされて並んで……あれ?


 わたしの自転車が、何か、変。


 自転車の後ろ、何やら見覚えのないモノが付いてる?


 なんだ? あれは?







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