第29話:GW①~ツバメさんは難しい子
新学期、新学年、二年生がスタートして早々。
それまでの期間、学校ではクラス替えで新しいクラスの人達と交流したり、しなかったり。まあ、一年の頃からのグループとかあるしね。
新学期のイベント……健康診断、体力測定やらをこなしつつ、蘭先輩とつるんで色々と。
前のクラスの知り合いがほとんど居なかった事もあって、蘭先輩がいなかったらボッチ確定だったかも。あぶない。
「私も似たようなものですわ……
とは、蘭先輩、談。
目立たないようにって話だから、しょうがないのか。
そんな蘭先輩から、ゴールデンウィークを控えて『春の渡り鳥さん』について予習講座。
「例年ですと、キビタキ、オオルリ、ムシクイ、このあたりが撮れると思いますわ」
「サンコウチョウは?」
「運がよければ……」
「……運なんだ」
図鑑で教えてもらった鳥さん達をチェック。
キビタキさんは名前の通り、キレイな黄色がワンポイントで黄色黒のツートーン。
オオルリさんも名前の通り、瑠璃色でキレイだねえ。
ムシクイさん……は載ってない、と思ったらレンジャクさん同様、センダイムシクイ、エゾムシクイと種類があるっぽい。ウグイスさんに似た感じの色合いで、あんまりキレイってタイプじゃないのね。
サンコウチョウさん……言いにくいな。運がよければ見れるって事だけど、これは是非とも見てみたい。図鑑で見ると、オスの尾っぽが異様なくらいに長い。全体的に黒いんだけど、目の周りがキレイな水色の輪っか。
スマホでムービーを見て鳴き声とかも予習してみたけど……うーん、覚えられるかな?
ただ、サンコウチョウさんの鳴き声はすごく特徴的で、これなら覚えられる。
『日、月、星、ほいほいほい』
サンコウチョウの『サンコウ』は、この鳴き声の『日・月・星』の『三つの光』の意味なんだそうで。
へぇ~へぇ~へぇ~。
と、まあ、予習もバッチリ(?)で、四月末の土日も含めて、待望のゴールデンウィークですわよ!(蘭先輩風)
この時期にしか見られない渡り鳥さんを撮るため、カワサキさん、蘭先輩と早朝に待ち合わせしていつものオオタカ
最初の頃カワサキさんに教えてもらった通り『春秋の渡りが見れる』って場所がいくつか。そこを周って渡り鳥さんが来てるか? 確認してゆく。
ただ、早朝はまだ気温が低くて、渡り鳥さん達が活発に動き出すのは少し暖かくなってから。周ってみたけど、お目当ての鳥さんには出会えず。
少し暖かくなるまでカワセミさんの小池で待機。だけど、カワセミさんも居なかったので、ぼーっとしてたら……
目の前の池の水面を、すーーーっと横切る黒い影。一瞬、水面をタッチしたかと思うとすぐに飛び去った。
「何? 今の!?」
突然だったし、速すぎて、黒っぽい影としか。
「ん。ツバメだね」
「ツバメですわね」
カワサキさんと蘭先輩、即答。
そう言えば、
コンビニの屋根の下で巣を作ったりしてるね。
「水を飲みに来たかな?」
カワサキさんが補足してくれる。
ふむふむ。
とか、話してたら、また来た、ツバメさん。
さっきと同じように水面を軽くタッチして飛び去る。
ほんとに、一瞬。
見てると、次々とやって来ては水を飲んで? 去って行く。
どうやら、南の方から飛んで来て、北東の方へ向かって行くみたい。
数羽、同じようにやって来たかと思うと、十数分後にまた同じようにやってくる。
一羽来たら、続々と数羽……五、六羽来るので、最初の一羽を合図に、南の空をチェック。
ツバメさんが池の近くまで来たら、照準器でツバメさんを
二羽目が来た後、三羽目四羽目が同時に来た。そして少し後に五羽目。
い、忙しい……
五羽目が去って、一息ついたところで、プレビューで確認。
うん。全く撮れてないの。
カワサキさんと蘭先輩は、数枚、キレイに撮れている写真もあったらしい。
見せてもらったけど、すごー。
口を大きく開けて下のクチバシで水面ギリギリにタッチ。完全に水をすくって飲んでる感じだよねえ。
二人も全部キレイに撮れてた訳ではなく、ピンボケもあればタイミングが合わないものも多いとか。
やっぱり難しいのね……
わたしの腕と、このカメラじゃぁ、高速で飛びぬけるツバメさんは無理なのかなぁ。
それから数回、同じようにツバメさんが目の前で水面タッチを繰り返してくれたけど、ぱったりと。
「来なくなりましたね……」
「水飲みは終わりかな。エサ獲りに移ったか、巣造りに移ったか……」
と、カワサキさん。
「ツバメさんのエサ獲りポイント、行ってみます?」
と、蘭先輩。
「そんなとこ、あるの?」
「ええ。行きましょうか」
蘭先輩に連れられて、移動。
園路を走って、公園中央にある広場へとやって来た。
園路から見てもわかる。広場の中、低空を飛び交うツバメさん達、いっぱい、沢山。
「広場に生えた雑草の上に小さな虫が飛んでるんですわ。それを狙ってあんな風に低空を飛び回っているんですのよ」
へええ。
見ていると、ツバメさんたちは広場の上で大きな円を描くように超・低空飛行。
「あの真ん中に立って撮れば、撮りやすいですわよ」
円状の飛行ルートの中心部から、周囲を旋回するツバメさんを狙って撮ってみる。
大きな円周の旋回飛行なので、比較的撮りやすい。
たまに、上下に急激な動きをされたりするけど、そういうのはもう、無理無視。
沢山飛び交っているので、どの子を狙えばいいか分からなくなりつつも、とにかく目に入って、撮りやすそうな子を優先に。
右から左へ、ツバメさんを追いかけてシャッター。
左から来る子も居るので、そのまま次の子を追いかけて左から右へ。
右へ左へ、左へ右へ、ぐるんぐるん。
少し離れてカワサキさんと蘭先輩も同じようにぐるんぐるん。
はぁ、はぁ。
お天気もよくて直射日光が熱くて汗ばむ。
いや、これ、結構、と言うか、かなりいい運動になるね。
「ちょっと休憩しよっか」
ひとしきり撮影するとカワサキさんが声をかけてくれた。
三人で広場の端にあるベンチテーブルで一休みしつつ、撮った写真を確認。
うぉ。二百枚以上撮ったのね……
ツバメさんが画面に入ってるのが半分ぐらい。
ピントが合ってるっぽいのが、一、二枚……
拡大して見るけど、微妙にピンボケか手ブレか……
うう、すごく、すごく難しいのだわ。
これは、要、練習だわ。
「さて、そろそろ温かくなって来たし、キビタキ探しに行こか」
あ。
今日の本命は、そっちだった。
でも、すっかりツバメさんの魅力にも取りつかれちゃった感。
ツバメさんは秋まで居るみたいだから、まだまだチャンスはあるよね。
それより、今しか見れない渡り鳥さんに集中しなくちゃ、だわ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
近況へのリンク
※番外編で先に出しちゃってた分
https://kakuyomu.jp/users/nrrn/news/16817330654439478591
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます