俺と義妹、御主人様とメイドさん。
そんな朝の出来事から、休日は始まったわけだが。
義妹はメイド服を気に入ったらしく、それを着たまま朝食の準備をしてくれていた。一般家庭の厨房に、超ハイレベルなメイドさん。その異様な光景に、俺は真顔。
しかし、それにしても――。
「親父と義母さん、朝から出かけてるのか」
「はい。旦那様と奥様は、本日夜遅くまで御用事とのことです」
「…………本当に気に入ってるのな」
今朝は俺と涼香、二人だけのようだった。
両親は朝早くに出かけたらしく、書置きが置いてあったらしい。まぁ、それでないと義妹もここまで自由にコスプレしないだろうが。
ともかく、俺は朝の違和感をモーニングコーヒーで無理矢理流し込んだ。
それと同時に義妹が、ある料理を目の前に出してくる。
「はい、どうぞ。御主人様っ!」
「…………朝から、オムライス」
というのも、メイド喫茶のド定番オムライスだった。
ケチャップで文字を書くつもりなのか、涼香はうきうきとした表情でそれを手にしている。俺は苦笑いしかできず、ひとまず彼女のしたいようにさせることにした。
すると涼香は、鼻歌交じりにこう書くのだ。
『義兄さんLOVE』――と。
それを見た俺の率直な感想。
「義の部分、よく綺麗に書けたな」
「えへへ! 練習したんです!」
わざわざ練習したのかよ。
そんなツッコミをぐっと呑み込んで、俺はオムライスを口に――。
「あー! 駄目です! 待ってください!」
「……え?」
運ぼうとすると、涼香は俺からスプーンを奪い取って。
こちらに差し出しながら、こう言うのだった。
「はい、あーん、です!」――と。
――すまん、さすがに朝から刺激強すぎるわ。
俺は顔が熱くなるのを感じつつ、思わず彼女から視線を逸らした。
すると、そのことが不服だったのか。義妹は回り込むと、改めて言う。
「あーん、ですよ?」
「…………」
少し、圧強めで。
そうなっては俺も、拒否はできなかった。
素直にそれを口にして、よく噛み、呑み込んだ。そして、
「美味しい、っす」
「えへへ!」
感想を述べると、彼女はものすごく嬉しそうに微笑んだ。
可愛らしい笑顔に俺は、なんだか色々なことがどうでも良くなる。
ある日の休日。
刺激は強かったが、悪くない朝食かもしれなかった。
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