第13話 アルバイトとレッスンの日々
ある日、先生にアルバイト先はないか相談する事にした。
「そうか君は何処でアルバイトして良いか困って居るんだね」
「はい、出来れば客商売以外が良いのですが」
「例えば工場とかだって沢山の人が働いている。いずれにせ知れ渡るだろう。それで良いのか」
「店員さん以外なら仕方ありません」
「そうか、君は事務はやった事があるのか」
「高校卒業して町役場に就職する予定でした。しかしコネガないと入れないと言われました」
「そうか地方にはそんな風習が残っているようだね」
「それならどうかな、息子が小さいが芸能事務所やっているが、そこで事務の仕事をしてみたら。空きがあるか聞いて見よう。翌日、佐原先生の息子で佐原音楽事務所に会ってから決めると言う話があった。
私は早速その事務所を訪ねた。雑居ビルの二階に事務所がある。中に入って行くと三フロアに別れて居て、総勢十三人ほどのスタッフが働いている。
「あのー私、矢崎美咲と申しますが社長さんはいらっしゃいますか」
「ああ聞いているわよ。大先生の所でレッスンを受けて居る方ですよね」
「そうです宜しくお願い致します」
すると受付の人に案内されて奥の部屋を開けると応接室になっていて、そこに社長が居た」
「社長、大先生の所でレッスンを受けている方です」
「君が矢羽美咲くんだね」
「はいそれは芸名ですが」
「芸名を使わず本名で応募して来るとは謙虚で宜しい。そうか父から話は聞いているよ。ところでパソコンは出来るのかね」
「はい高校時代にならっていました。ただ事務職は経験がありません」
「だろうな、高校卒業と同時にスカウトされ芸能界に入ったのだから、それは仕方がない」
「申し訳ございません。一生懸命働きますから宜しくお願い致します」
「分かった。父の頼みだし、まぁ頑張りなさい」
初対面だったが先生に良く似て居てすぐ分かった。まだ四十才前後と思われるが優しそうな感じの人だった。翌日から始めての事務仕事、最初の仕事はパソコンのデターの打ち込みから始まった。この事務所は主にイベントの仕事が多いようだ。芸能人のコンサートの手配が主な仕事のようだ。最初は戸惑ったが少しずつ慣れて来た。その他の仕事はお茶汲みや先輩の手伝い。時にはコンサート会場に出向き裏方の仕事など。芸能化関係の仕事などで、時おり顔見知りの人も居た。美咲としては余り顔を合わせたくない人ばかり。
佐原事務所の人達も分かってくれていて、出来るだけ接触させないような配慮してくれる。勿論同僚たちも美咲が元アイドル歌手だったことも知っている。これは社長から言い渡れたのか誰も、その事には触れなかった。有難いことだ。そんな仕事が続き一年が過ぎた。
つづく
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