第8話 妖精との勝負⑤
ロクラスト爺やとシニアは魔物を殺しに殺した。
迫っていく魔物は狩ったと思っただろう。その鋭い歯が人間の胸元に届きそのまま致命傷を与えたのだと。
だが、その直前にロクラスト達の持つ武器が魔物の身体を貫いている。
そんな現象が何十何百と起こり、魔物の総数はだいぶ減っていた。
「これだけ殺したら親玉も出てくると思ってましたけど、出てきませんね、師匠」
「慌てることはありませんよ。妖精は必ず確保しますから」
そんな会話を挟みながらも、お互いに背後から迫って来る魔物を武器を用いて退治している。
『全ての魔物に次ぐ!森に人間が侵入したわ、総動員で対処しなさい!』
私(妖精)はロクラスト達によって魔物の殺戮が行われている馬車付近にまでたどり着いた。
着いた直後に、劣勢な状況を見て慌てて全ての魔物に伝達をしたのだ。これでA班、B班はもちろん、C班やそれらに属していない魔物も参戦する。これで十分武があるはずだ。
私は高さ15m地点で停滞し、場合に応じて指示を出すことにしよう。
「おやおやシニアさん。今何か聞こえませんでしたか?」
「いえ、何も聞こえませんでしたが……」
「ほっほっほぉ。シニアさんには聞こえなかったのですね。つまり、この声は魔物にしか聞こえないという事ですか」
(ば、バレてるゥゥゥ……)
私は内心焦った。妖精は人間に比べ五感が鋭いので、人間二人の会話がうっすら聞こえてきたのだが、あの執事の男には
だが、一体どうやって………
「……まさかあの執事、魔物!?」
「はっはっはぁ。その通りですよ」
「!?」
私が一人高さ15m地点で呟いていた言葉を聞き取った!?それに、返事まで。こっちを見ているし、あの執事は一体何者なの!?
そんな私の内心を見透かすように執事は話を進めた。
「私は絶滅を確認されている
「な、赤龍!?竜種で最も凶悪かつ強い魔物じゃないの……、なんでそんなのがここにいるわけ!」
「はっはっは、それは身体に刻み込まれた傷が教えてくれますよ」
ロクラストはそう言うと、さらに魔物を殺すスピードを上げて、徐々に前進して距離を詰めていく。
「ま、マズイ!逃げないと」
妖精は戦闘向きの種族ではない。各々特殊な能力を持ってはいるが、それは戦闘で役立つ訳ではない。そんな私が、全種族の中でもトップクラスに戦闘向きな黒龍種に勝てるわけがない。
私は慌てて反対方向に引き返した。これまでの人生で最も早いスピードが出ただろう。疲れているわけでもないのに、全身からは汗が湯水のごとく湧き出している。
しばらくは木がなく草も生えていない砂漠みたいな場所が続くが、そこを越えれば木々が広がっている。龍種は空を飛べるので、木々の下を通り居場所を特定されないようにする。ナナクレナの策を使わせてもらうわ。
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