第25話 see the hippocamp White Rider
「なに・・・あれ・・・・」
都の、声にならない声を聞きつけたかのように。
ヒッポカムポスの不吉なほど鮮やかな赤い目が船の甲板にいる彼女達を捉えた。
『ヒヒヒィィィッッッッン!!』
この大部屋全体を震わせる咆哮が迸り、彼女達は大なり小なり怯んだ。
そして三人にまるでデバフがかかったような光が彼女達を包み込む。
「・・・・ッ」
その不愉快な感覚と共に一気に身体が重くなる。
「ぅぁ・・・な、なに・・・この、感じ・・・」
その倦怠感に都は膝をつく。
だが、そんな中でモノは眉を顰ませながら言った。
「あのボスモンスターのデバフだよ。ホントムカつく」
「アレを知っているの?」
舌打ちをするモノに対し、白音はモノにヒッポカムポスに乗った騎士について質問する。
そんな白音に、モノは言った。
「知ってるも何も───アレは“ボクが倒せなかったボスモンスター”だ。シー・ザ・ヒッポキャンプ・ホワイトライダー・・・シンが作ったボスモンスターの一体だよ」
忌々しげにモノはホワイトライダーを睨みつけると、ホワイトライダーはヒッポカムポスと共に、海水を纏わせながら突撃してくる。
「───旋回しろ」
モノのその言葉と同時に、船が旋回し突撃を回避しようとする。だが、旋回速度よりもホワイトライダーの突撃スピードの方が遥かに早い。
「手伝えよ。このままだとボクらもこの船ごと海の藻屑になるよ」
「・・・仕方ないですねッ!!」
白音はそう言って馬上槍を構えながら叫んだ。
「みゃーこ!!サポートお願い!!」
「うん!fons Neptunus!【序曲】!」
その言葉と同時に、モノと白音の身体の内から魔力が一気に高まるのを感じた。
「・・・へえ。こんな事も出来るんだ」
感心するように呟くモノに、白音は高速接近してくるホワイトライダーの足元を一瞬で凍らせてその機動力を奪おうとする。だが、ホワイトライダーはそんな白音の思惑を凌駕するように更に“加速”した。
「なっ!?そんな無茶苦茶な・・・!?」
床が凍って滑りやすくなっている状態で更に加速。そんな事をすれば身体の踏ん張りや足元のブレーキによる摩擦が効かずにスリップして滑ってしまう筈なのに。
そんな常識を覆すような軌道を描きながらホワイトライダーはモノが操る船に衝突する。
「・・・きゃっ!?」
「・・・くっ!!」
「クソッ、やられた」
振動で足を取られながらも彼女達は、身を投げ出されないように姿勢を低くして衝撃を抑える。
「ホント嫌になるよ。後でシンに文句言ってやる」
苛立ちを隠さずにモノは舌打ちをした後、カットラスを剣帯から引き抜くと同時に叫ぶ。
「主砲用意!とにかくぶっ放せ!!」
モノのその声と同時に、船横から覗くいくつもの大砲が一斉に火を吹いた。
凄まじい弾幕と同時に、ホワイトライダーが作り出した大量の海水が渦を巻き始める。
「今のボクを舐めるなよ。騎士モドキが。昔のボクや他の魔法少女とは違うんだよ」
そう言ってモノが腕を振り上げると、槍状になった海水がホワイトライダーに襲いかかった。
『───!』
ホワイトライダーは襲いかかる海水の槍を振り切ろうと、ヒッポカムポスを疾走らせる。だが、そんなホワイトライダーの軌道上に巨大な分厚い氷の壁が現れ、その疾走を遮る。
足が止まったホワイトライダーに海水の槍が直撃し、追撃の砲撃と氷の弾丸が襲かかり、水蒸気爆発が起こった。
「やった!!」
都は喜ぶが、モノと白音は険しい顔のままだ。
なぜなら魔法少女の中でも瞬間火力と拘束力では上位にいる筈の二人でもホワイトライダーのHPバーはまだ半分しか削れていないからだ。
巻き起こった水煙が晴れる。
慎一郎が能力で作った世界であるからか、無傷のホワイトライダーが姿を現す。
だが、ホワイトライダーの手に剣は無く、その代わりに巨大な三叉の槍を握っていた。
「・・・・あれは?」
「第二形態ってところだよ。ここから一気に強くなる」
そう言ってモノと白音はカットラスと馬上槍を構える。
「・・・くるよ!」
『──────!!』
都の叫びと同時にホワイトライダーが咆哮を上げた。
そして───
「・・・!さっさと逃げろ!“ホワイトライダーの狙いはお前”だ!」
「・・・え?」
「みゃーこ!!逃げて!!」
ホワイトライダーのターゲットは“一度も攻撃していない”雨宮都へと向けた。
都の視界いっぱいにホワイトライダーの姿が写り、そして────ドッと、都の身体に衝撃が走る。
「───ぁ・・・ぇ?」
「みゃーこ!!」
熱い。
都が最初に感じたのはソレだった。身体の中心が燃えるように熱い。そしてその後に───
───激、痛───。
「・・・コフッ」
都の口から赤い粘ついた液体が吐き出る。
苦しい 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い・・・!
今までに感じたことのない強烈な痛苦に視界が霞む。
そんな都にホワイトライダーは槍をグルリと捻ると、そのまま一気に振り抜いた。
「あああああああああああ!!?」
大量の血を撒き散らしながら固い石畳の床へと倒れ伏す都に白音は絶叫の声を上げた。
(はく・・・ね、ちゃん)
最後に都が見たのはそんな絶叫を上げる白音と、顔を歪ませるモノの姿だった。
───一緒に謝るって約束守れなくてゴメンね
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