第4話
「・・・もうそろそろか?」
午後五時四十五分。
もうそろそろ店をたたまなければならない時間だが、今日はアイツが仕事を早く切り上げて来ると言っていたので、まだ閉める訳にはいかなかった。
「まあ、今日は柊が来てくれて助かったが・・・」
明日はラインハルトが直々に戦闘に参加するらしい。
「そう言えば・・・ラインハルトが戦う所は見たことないな」
モノが魔法少女と戦う所は何度か見たことはあるが、ラインハルトが戦う姿は一度も見たことはない。
「まあモノが本気を出したって言っているし、それだけの実力があるのは分かっているんだが・・・」
どうもトップとしてのアイツのイメージが強すぎて、戦闘力があるとは思えなかった。
そこまで考えていると、カランカランと店の扉が開く音が部屋の中に響き渡る。
「いらっしゃ───」
そこまで言った所で、慎一郎は口を噤む。
なぜなら扉を開けたのは、先ほど話題として考えていたラインハルトその人だった。
『待たせたか?』
「いや、全然」
機械的なくぐもった声で、ラインハルトは待ったかと慎一郎に言う。
だがそんなラインハルトに対し、慎一郎は椅子から立ち上がった。
「ついさっきまで客がいたんだ。逆に早く来なくて助かったくらいだよ」
『そうか』
ラインハルトも短くそう答え、近くの椅子へ腰をかける。
そして慎一郎に言った。
『先ほど彼女達の姿を見た』
「魔法少女にかい?」
『ああ。相変わらず自分の事も世界のことも分かっていないゴミクズ共だ』
「・・・おい」
彼女達をいきなり罵倒するラインハルトに、慎一郎は声を低くする。
「流石にゴミクズは言い過ぎだろ」
一度も会話をしていないにも関わらず、そう判断するラインハルトに慎一郎は言う。
だが、ラインハルトはそんな慎一郎に言った。
『ほう?では彼女達は最終的に自分達が使い潰されるのを知っているのか?自分達の家族に政府から渡された大金で売られたことも知らずにのうのうと生き、現実から目を逸し続けて何になる?この世界の強者が腐りきり、我々のような能力者の他、貧困者が差別され、食い潰されている。私達がこうやって当たり前の生活が出来ているのはそれだけ私達が力をつけ、競争相手を蹴り落としたからだろう?そんな現実を知らない彼女達をゴミクズ以外示す言葉が何処にある?』
「・・・・・」
確かにラインハルトの言ったことは間違っていない。
いずれは彼女達は使い潰される。なぜならこの七年間で魔法少女の末路を何度も見てきたからだ。
貧困層は食い潰され、上級、中級国民を守るために、魔法少女達は使い潰される。
俺やモノ、ラインハルトはそんな食い潰される人や魔法少女を救う為・・・いや、この偽善に塗られた世界を壊すために、この組織を作ったのだ。
能力者だからという理由で差別された俺───自由を求め、悪徳に手を染めたモノ───そして最下層で産まれ、この国を世界を変えると決意したラインハルト───三者様々な理由で俺達は集まり、仲間を作り、ここまで大きくなった。
『この世界は腐りきっている。なら、俺達が変える以外に他ないだろう。罰を求めるなら世界を変えた後でも遅くはないだろうさ。だがまずは───』
「───相手の戦力を削らないといけない。だが、相手は魔法少女なんだぞ?化物みたいに強い彼女達なんだぞ?一体どうやって削るつもりなんだ?」
そう言う慎一郎にラインハルトは以外そうな声を出す。
『なんだ?モノから聞いていないのか?下準備は出来たとモノが言っていたが?』
「は?下準備?俺は何も───」
そう言う慎一郎にラインハルトは言った。
『魔法少女の一人がお前に“恋心”と言うものを抱いているのだろう?なら、お前がそこにつけ込めばいい。私やモノがソイツに現実を突きつけてやるから、お前やモノの得意分野である人心掌握でそいつを此方へ引き込め。そうすれば必要最低限の被害を抑え込めるだろう』
そう言うラインハルトに慎一郎は絶句するしかない。
『───決行は明日だ。うまく堕せ』
ラインハルトはそう言って、店から出ていった。
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