悪の頂点の筈なのに何故かうちの喫茶店で魔法少女達が居座っている件
鉄血
第1話
「ありがとうございました〜」
店から出ていくお客様を笑顔で見送りながら、店主───宮崎慎一郎はお辞儀する。
そして誰もいなくなった喫茶店で慎一郎は、はあとため息をついた。
「やーれやれ。営業も楽じゃなくなってきたねぇ」
肩を回し、体をほぐしながら皿を片付け、厨房へと運んでいく。
カチャカチャと皿や箸を洗っていると、厨房の近くに置いてあった電話がかかってきた。
「ったく・・・誰だよ」
水で濡れた手をタオルで拭きながら電話を取る。
「はいこちら喫茶イオニアンの慎一郎です」
気怠げに言う慎一郎に、電話先の人物はボソボソと言った。
『ボス』
「・・・どうした?」
どうやら電話の相手は組織の部下からの電話だったらしい。携帯電話の方にかけろと言っているのに、相変わらず此方の方で電話をかけてくるのはどうにかならないだろうか?
『───ボス。キマイラがやられた』
「・・・また彼女達かい?」
そう言って目を細める慎一郎に、電話先の部下は答える。
『ああ。確認したが今回は三人だ』
「まったく・・・やってくれるねぇ」
三人とは言ったが、俺達の敵は複数人いる。
魔法少女・・・だなんて可愛らしい名前をしているくせに、実力面だけでみればとんでもない化物である。
「・・・まあいいや。しばらくはこっちも大きな動きは出来ないから今日の所は帰っていいよ。これから先どうするかまた考えておかないとなぁ」
慎一郎はもう一度ため息をついて、電話の受話器をガチャと置く。
。
「・・・アイツらには本当に邪魔をされてばかりだな。魔法少女ねぇ・・・いっそのこと此方に引き込むでも考えるか?」
そんな事を一瞬考えるが、すぐに慎一郎はため息をつく。
「まあ、そんなこと出来たら苦労しない訳なんだが」
どうせ出来やしないとボヤく慎一郎は厨房から見えるテレビを見ようと、歩き始めたその時───。
“カランカラン“と店の扉が開く音が店の中に響き渡った。
「・・・っと、いらっしゃいませー」
客が来たら完全にお出迎えモード。裏では悪のボスをやっていても表は喫茶店のマスターである。
悪役らしくない?言うなよ・・・悲しくなる。
「こんにちは!お兄さん!」
「こんにちは」
「お兄さん。久しぶり」
三人の美少女が、喫茶店に入ってきた。
「おー、久しぶり。三人とも」
慎一郎は顔で笑顔を作りながらも、裏では顔を引き攣らせていた。
そう。この恐ろしいくらいに顔が整っている彼女達こそが件の魔法少女達である。
表は超有名アイドル〈シリウス〉のメンバーであるが、裏では俺達の邪魔をするトンデモナイ強さを誇る魔法少女だ。
「お兄さん!コーラある?」
「あるぞ?」
「じゃあボクはコーヒーで」
「私はカフェラテをお願いします」
それぞれ口を開きながら注文をしてくる彼女達に、慎一郎はメモに書きながら注文品を言い返す。
「コーラにコーヒー・・・・それにカフェラテだな。他の注文はいいかい?」
「うん!」
「はい」
「大丈夫です」
そう言う彼女達に慎一郎は頷いて厨房へと足を運んだ。
そして───
「なんで敵のアイツらが俺の店に入り浸ってんだよ」
慎一郎は厨房から見える宿敵である魔法少女の彼女達を見てそう呟いた。
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