第16話 お友達の様子が…!?
「比奈……」
「もう、本当に貴方って人は……サイテー」
い、いや! 何で体を隠す様にする!?
俺が比奈の反応に困っていると、メマは比奈を見て不思議そうに首を傾げた。
「比奈おねーちゃん?」
この前は少し化粧もしていたからな。そこまで変わってはいないがちょっと疑問に感じたって事だろう。
「あ、メマちゃん、よね? 私は西園寺 比奈。改めてよろしくね」
「メマはメマだよ!!」
「ふふっ! 知ってるよ~」
比奈は笑顔であやす様にメマの頭をくしゃくしゃにする。その後、比奈は此方に視線を向けた。
「取り合えずリビングに行きましょう。話はそれから」
「お、おう」
そう言われた俺達は、比奈の後を追ってリビングへと向かうのだった。
『ちょっと母さん! あの話嘘だったじゃない!!』
『え、嘘……本当に!?』
『本当だよ!! 母さんって哲平さんの口からちゃんと聞いたの?』
『あ。聞いてないかも』
『`@p+:@oji&'!!!?』
リビングに着くと比奈は俺達を座らせてすぐにキッチンの方へと向かった。そしてその瞬間からこの調子である。
比奈母と結構な大声で言い争っているのだ。
後半は怒り過ぎて何言ってるか分からないし、何より比奈がこんなに怒ったとこ見た事ないぞ……。
「ふぅ。お待たせ」
それから直ぐに、比奈が扉を開けて出て来る。
「何で逃げようとしてるの?」
「え、い、いや? 別に逃げようなんてしてないぞ?」
ちょっとドアのガタつきが気になっただけだし。決して、怖いからもう帰ろうとか思ってない。
俺達はもう一度椅子に座ると、比奈と向かい合う。
「それで? 私に聞きたい事があるんですよね?」
「お、おう。アレ? てか俺話したっけか?」
「話してないけど、もう全部大体話は見えたから。哲平さんがウチに来たのって、メマちゃんの身内が居るのかどうか聞きに来たんでしょう?」
おー……当たってる。流石比奈だな。
俺が感心していると、それを見た比奈は肩をすくめた。
「でも、残念だけど知らないわ。この辺りに外人と関係のある人なんて居ないし、ここ10日間ぐらいは外に出てないから分からないけどね」
まぁ、そうだよな……
「じゃあ、また後で聞きに来てもいいか?」
「うん。でも期待はしないで。こんな狭い田舎で外人が居たら直ぐに噂になるけど、噂になってないって事は……」
「まぁ、そうだよな……」
俺はまた同じ言葉を繰り返し、肩を落とす。
そんな俺を見てか、比奈は大きく溜息を吐いた後に立ち上がった。
「まぁ、取り敢えずそんな気にしなくても良いんじゃない? 問題がある訳でもないでしょ?」
「まぁ……そうなんだがな?」
普通に考えれば警察案件ではあるんだけど、今のところ特段問題はない。メマが親の元へ行きたがってる訳じゃないし、親がメマを探してる訳でもない。
「それよりもさー……カフェ! カフェ見せてよ」
俺が眉間に皺を寄せていると、比奈はテーブルに乗り上げ話す。
気を遣っているのか、いつもの比奈らしくはないが、その心遣いが心地よい。
「お、見に来るか? 良いぞ、中々の出来だからな。驚くんじゃないぞ!!」
「へぇ〜? 中々言うじゃない? 厳しく見させて貰うわよ?」
昔にやった様なやり取りに、俺は自然と口角が上がっていた。
俺達はメマが元気に水やりをする姿を見ながら、土地の入り口辺りで話をしていた。
「……もっとどうにかならなかったの?」
KIROの粗方の説明を終えると比奈が唸りながら問い掛けて来る。
「本当に辛口だな」
「それもそうでしょ? まさかこんなに立地が悪い、日当たりも悪い、幽霊が出そうな風貌なカフェだとは思っていなかったもの」
「んー、そんなに悪いか?」
「えぇ。カフェは本来若い人向けの物だからまずこんな限界集落の奥地に作る物じゃないし……此処まで来るのにアレじゃあ中々来ようとも思えないんじゃない?」
比奈は店までのゴツゴツとした道のりを指差しながら言った。
「それなんだよなぁ」
それがこの店の唯一、そう唯一の欠点であると俺は思っている。アレでは周りの人……老人からの支持が得られない。アソコで転んだら老人なら大怪我になりかねないし、何より何度も来ようと思えない。
いやー、これが解決すればあとは完璧なんだけどどうしても金を考えれば厳しい所なんだよなぁ。
「……私がどうにかしようか?」
ボーッと考えていると比奈は腰を折り、上目遣いで俺を見て来る。
「は? 出来るのか?」
「ちょっと土木関係の人で知り合いが居るから。多分だけどお願いすれば格安でやってくれると思う」
ちょっと土木関係の知り合いが居てお願いすれば格安でやってくれるだろうか。俺なら無理です。はい。
「お願いしても良いですか?」
「何で敬語……良いよ、別に」
「あざーっす」
「哲平さんだけじゃ何かと心配だし……私で良ければ色々手伝おうか?」
はぁ……まさか8歳も年下の成人したばかりの奴にこんな事を言われるとは。情け無い大人も居たもんだ。
「頼んでも良いっすか。休日だけでも良いんで」
だが、情け無いなら情け無いなりに生きて行かなければならない。大人というのはそういうものだ。
俺が比奈への感謝に膝を着くと、衝撃な言葉が俺の耳へ届く。
「あー、仕事は辞めるから平日も大丈夫」
「……は? 辞める?? 比奈が今の仕事を???」
俺は数秒思考が停止した後、脳をフル回転させる。
待て待て待て待て待て。今比奈の居る所って大企業だろ? 月収も新入社員にして50万とかそこらだった気が。そんな良い所を辞めるって……いやいや、流石に空耳か。
「明日の内に退職願を出しに行くつもり。で、3日で引き継ぎとか終わらせて出て来るから」
Oh No……
「ひ、比奈? それは本当に言ってるのか? そんな事したら比奈母は兎も角、比奈父が何て言うか
「後悔しない選択をすれば良いんでしょ?」
比奈は俺の言葉を遮り、得意げに、イタズラが成功した子供の様な笑顔で俺を見た。
………比奈父、ごめん。後で枝豆あげるから許して。
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