用語集

空中大陸(空中大地とも)

 はるか昔に地球上で繁栄した旧文明の末期、爛熟し退廃をその後に控えた技術の粋を集めて建造されたとされる惑星地表を模した殻のような構造体。確認されている限りでは十一層存在している。底部には星光体と疑似太陽型発行体があり、空を見ているのと変わらない景色を直下の大地に住むものに提供する。第一層が低層にあるものから第一層、第二層と数え、元々の地上は基底層と呼称される。第一層から第十層までの居住可能殻型空中大陸はそれぞれに開けられたいくつかの孔によって連絡されており、飛行船によってのみ往来が可能。天蓋層とよばれる第十一層より外側の空間は何があるか一切不明であり、考古学者を中心とした宇宙説の支持者は第十一層の外には旧文明が残したデータにある「宇宙」が広がっていると考えているが大半の市民は第十一層の外側など考えたことすらない。ムガロ王国のヒンドゥー教新興派生教義信者グループを中心としたいくつかの主要な宗教団体は外に天国が広がると信じており、空中大陸の外側に人間が関わることをタブーとしている。


燕雲ラーストク

 明らかに人工物とわかる形状をしていて、旧時代のロストテクノロジーによって浮遊している小さな空中大陸の総称。第二層空中大陸を囲むように第二層空中大陸のはるか上空に浮かんでいる。燕雲には星光体や疑似太陽光発生装置がなく、建造は他の空中大陸と大きく異なると推察されている。伝説によるとムガロ王国の全盛期に建造されたとされるが、実際はもっと古いはずである。


飛行船

 この世界における飛行船とは浮遊機関を搭載した乗り物の総称である。小さなものでは質量100トン程度で全長30メートルの小型飛行船舶から、大きなものでは質量200万トンで全長300メートルの重空中戦艦まで大小様々な飛行船がこの世界の空を埋め尽くす航路網に従い飛び回っている。浮遊機関による空気抵抗低減効果の恩恵によってほぼ空力特性を考えない形状でも飛行は可能。また浮遊機関の効率は力場展開面積と速度に依存するため、一部の軍艦においては展張式主翼等の可変機構を備え、浮遊機関効率を最適化する工夫がなされている。


飛行船航路

 飛行船の事故を防ぐために設けられたルート。都市周辺では厳密に、辺境域では大まかに定められている。標準的な航路はムガロ王国が制定したものだが、そこから外れた空域を反ムガロ連合の船が飛んでいることもままある。そのため、航路の外側は哨戒艇が常時巡回して警備している。ムガロ王国の船でも緊急時は航路外を飛ぶことがあるが、その場合は規定の周波数帯で無線通信を行う必要がある。


要塞都市

 ムガロ王国の主要都市形態のうちの一つ。反ムガロ連合との戦争が始まってから急増し、作中時点では最も一般的な行政区分となっている。首都ムガロポリスや副首都ムラッタルスカもこの都市形態を取る。防衛拠点と都市中枢を兼ねた要塞を中央に持ち、その外側で農場が営まれるという構造が主流。


農業都市

 ムガロ王国の都市形態の一つ。農業生産拠点となっている第六層より上の空中大陸と主要都市近郊の農業地域に多い。要塞都市とはその構造が根本から異なり、広大な農業区画を中央と外郭に置き、加工工場とそれを守る駐屯地が中央の農業区画をリング状に囲む構造を持つ。


製造都市

 工業生産にその都市の能力を大きく振り向けた要塞都市の派生形態。基底層に近い第三層以下の空中大陸と基底層の工業生産拠点に多く立地する。基本的には周辺に外郭港湾とそれに隣接する工場を備えた小要塞を多数持ち、それらと地下トンネルで連絡している。また、中央の要塞は地下深く掘り下げられたすり鉢状の工場区画とその上を覆うように被せられたビルが絡み合う天井都市区画、軍民共用の直通港湾区画によって構成され、地上に露出している部分はその巨大な都市空間のほんの一部である。天井都市区画の絡まりあったビル群の中央には換気施設や排気処理施設が林立する区画、通称「煙突街」がある。

 

ムガロ王国

 空中大陸の大半を支配し、かつては血統による王家を抱えた巨大な王政国家。現在のところ王の血筋は途絶えており、王は大統領と同義になっている。貴族はかつて政治を担っていたが、かなり前から衰退していて現在は有力な市民と変わらない程度の権限しか持たなくなっている。議会は立法二院、政務一院である。また、議会の型式は各都市から議員を各院三名ずつ選出する都市群議会が議員を二人ずつ代表として選出する都市代表制である。また、人口は三百五十億人でほぼ一定しており千年に及ぶ戦争状態の中でもその人口は保たれている。基本的に各都市群間の連絡が希薄であるため都市群ごとに固有の政治風土が存在し、中には腐敗の激しい都市群も存在している。しかし政治腐敗は存続機構と名付けられた腐敗の基準超過を指摘しあくまで提案ベースではあるもののリークなどの介入を促す人工知能により実務になるべく影響を及ぼさないよう調整されている。中央における腐敗はマスコミが監視し、マスコミの腐敗は国家機関が監視することで腐敗→糾弾→修正→腐敗のループを繰り返しながら安定の中に自由を担保している。


反ムガロ連合

 ムガロ王国に反対する勢力が集団となって結成された緩やかなつながりのもとにある連合国家。戦時体制を長きにわたって続けており、その国力に見合わないほどの戦力を有している。ムガロ王国側には殆ど情報が入ってこないため、「よくわからない敵」という認識がなされている。

 

ムガロ王立海軍空中艦隊

 ムガロ王国の空中艦隊。海軍とは呼称されるものの海上戦力はオマケ扱いであり、空中戦艦などの戦闘用飛行船で構成される空中艦隊がその主力。


浮遊機関

 ムガロ王国、反ムガロ連合双方が使用する空中戦艦をはじめとした飛行船の基幹技術。かつて繁栄していた文明が「大異変」によってそのレベルを大きく後退させる前に作り上げた「第一世代浮遊機関」と、それを生体部品で構成し培養できるようにした「第二世代浮遊機関」があり、現存するのは第二世代浮遊機関のみ。「カミエル液」または「透明な血液」と呼ばれる生理活性安定液を循環させることで船の範囲を認識し、ほぼ無尽蔵のエネルギーを発する動力炉からもたらされる電力をエネルギーに変換してカミエル液から力場を発し空中に浮かぶシステムである。


電力発生装置

 空中戦艦をはじめとした主要な飛行船の動力中枢であり、海水や水を電気分解して生成した燃料によって稼働する。その内部にはパイプ型の核融合セルが束ねられている。その圧倒的な熱量を熱電変換素子によって莫大な電力に変換し、浮遊機関や艦内の諸設備の動力に充てている。


シールド

 戦闘用飛行船の装備する防御装備。船体を浮かべる浮遊機関が発する力場の一部をカミエル液配管で構成されるコイルによって誘導して艦の非対称防御にあてたものであり、船体側から攻撃を発しながらも物理的な衝撃に対する耐久力を大きく向上させることができる。特定の場所に分厚く形成することも可能であるが、輻射される熱やレーザー光線、電磁パルスなどには無力である。


パルスカノン

 シールドを展開した敵艦に対して効果を持つ武装の一つ。特殊ポリマーの砲弾を極めて高速で敵艦に連続衝突させ、高エネルギープラズマを断続的に発生させてシールドを無効化したり、敵艦の船体に深刻な熱変形作用を加え融解させたりすることができる。


空間歪曲

 空間拡張が行われた際に生じる拡張空間への出入り口。拡張空間と同一視しても問題ない。クラスⅠ~Ⅴで分類され、クラスⅠとクラスⅡは再現に成功している。

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