バスレギフト『食育』から始める英雄譚〜誰も知らないユニークギフトが実は有能で!?〜
ふぃるめる
第一話 捨てられた少年
「さっさと飯の支度しろよな〜っ。お前の取り柄はそれだけなんだからよ!!」
勇者パーティの一人、レオンは料理番と荷物持ちだった。
唯一使える武器は剣、近接戦闘が出来ないわけではなかったがそれも剣の勇者には及ばない。
ゆえに巷で勇者パーティはこう呼ばれていた。
『奇跡の三人組と一人の荷物持ち』と。
同じ村で生まれた三人の少年少女。
剣の勇者アレク、聖女フィリア、大魔術師エルメス。
それぞれの授かったギフトは伝説級の持て囃される勇者のそれだった。
比べて彼らと幼馴染だった俺は―――――
「次は、レオンだな。手をこの水晶球に翳してみよ」
村の教会で自身の授かったギフトを知る日のことだった。
(ギフトは誕生とともに授かるのだが、十歳の誕生日までは顕現させられないため知ることは出来ないのだった)
年に一度、中央からやってくる聖職者が持ってきた顕現水晶、それに俺は手を翳した。
幼馴染の三人は既に『剣の勇者』、『聖女』、『大魔術師』という唯一無二のユニークギフトを持っているという判定を顕現水晶が下した。
居合わせた人達の視線が、幼馴染たちの視線が俺に集まる。
「わかりました……」
緊張しながら手を翳した顕現水晶は、三人と同様の光を放った。
「おぉッ!?」
「これは……ユニークギフトか!?」
世界に保持者が同時に一人しか存在しないギフト、それがユニークギフト。
そして俺のギフトもそれだった。
だが肝心の内容は―――――
浮かび上がった文字は、『食育』だった。
「えっ!?」
「は?」
「期待しただけ損だったか……」
食育とは食に関する知識と食を選択する力を習得し健全な食生活を実践することができる人間を育てることであり、居合わせた人達は、口々にそう言うと小馬鹿にしたような視線を向けてきたのだった。
それから五年―――――ギフトにより三人とは大きく開いてしまった差を埋めるため、俺は死ぬ気で剣術の練習を続けた。
三人が遊んでいる間も寝ている間さえも。
だがギフトの差は努力で埋まることがなかった。
剣の師となってくれた男もまた、
「お前はよく頑張った……だがそれは埋まる差じゃない。もう諦めろ……これ以上、自分をすり減らしていくレオンを見てられない」
そう言って剣を振る俺を幾度となく止めた。
だが俺はそれでも剣術の稽古を遮二無二続けた。
そして十五歳の春――――勇者パーティとして災厄と戦うべく旅立つ三人の前衛役として俺も勇者パーティの一員となった。
選ばれた理由は、剣の勇者であるアレクたっての強い希望だった。
もちろん感謝した。
でもそれはアレクの自己満のためでしかなかった。
「おいレオン、剣の相手をしろよ」
ギフトゆえの実力差があることを知りながら人前で対戦相手として俺を指名し、尊厳を踏みにじるほどに俺を痛めつけた。
それでも俺が勇者パーティに居続けたのは、国から支給される給与で少しでも病気の母にいい暮らしをさせるためだった。
だが勇者パーティの一員としての生活の終わりは唐突にやってきた。
◆❖◇◇❖◆
それは難攻不落のダンジョン『奈落』を攻略中のことだった。
「クッソ……モンスターハウスかよっ!?」
中層まで攻略して来たところで罠にハマったアレクが開けてしまったのはモンスターハウスだった。
中層に相応のモンスターが嫌というほど湧いてでる冒険者殺しの部屋、それがモンスターハウス。
「レオン、お前が足止めしろよッ!!」
「無茶だろ!?」
背には大量の荷物があるし状況は多勢に無勢、一人で捌き切れる自信はなかった。
「今まで俺たちの稼いだ金で無能のお前を養って来たんだ!!こういう時くらい役に立って貰わないとのまるんだよっ!!」
アレクがエルメスに目配せするとエルメスは詠唱を口にした。
「【
それは対象の生命を対価に発動させられる鉄壁の防御魔法だった。
もちろん対象は俺、アレク達と俺とを隔てる壁の向こう側で三人は
まるでそれは想定されていたような鮮やかさであり、見事に俺は三人に嵌められたのだった―――――。
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