異世界召喚され英雄となった私は、元の世界に戻った後異世界を滅ぼすことを決意した
白い彗星
英雄はもういない
第1話 『英雄』になった少女、絶望した少女
そんなの無理だと言い退けても、世界を滅ぼそうっていう魔王を倒さないと帰れないと言われてしまって……道は、一つしかない。だから私は、魔王を倒すために仲間を連れて、旅に出た。
魔法とか、ファンタジーの中でしか見たことがないものばかりで、初めて見るものすべてに目を奪われた。けれど、私は元の世界に帰るために、その世界へはなるべく干渉しないようにした。
だって元の世界には、家族も恋人も、友達もいる。ここから、さっさと帰る必要がある。
召喚主だっていう王子様は確かにイケメンだし、旅をする仲間も気のいい人たちばかりで、多少の情は湧く。それでも、私には帰るべき場所があるんだ。割り切らないと。
仲間に助けられ、私自身も魔物を倒し、数々の場所を救って……みんなから感謝される存在となっていった私は、長い月日をかけて、魔王の城へとたどり着いた。
この世界を平和にするため、失った仲間のため、なにより私が元の世界に戻るため。私は仲間たちと共に戦い、四天王を倒してついに魔王との直接対決へ。
私は、私たちは戦い……ついに、魔王を倒した。
晴れて勇者から『英雄』となった私は、元の世界に戻ることを許され……ざっと一年の時を経て、帰ってきた。
一年も向こうにいれば、それなりに仲良くなった子もいるし、別れは寂しかったけど……ようやく帰れるという事実、その嬉しさの方が、大きかった。
約束通り戻ってきた私に待っていたのは、家族たちとの感動の再会……などではなく、
----------突き付けられる絶望だった。
「……え?」
一年前、いきなり消えた私を、家族は総出となって探した。その結果、妹と父が交通事故にあい死亡。母は、三人もの身内を失ったことで精神を病んでしまっていた。
結果、
恋人とは、実は召喚される直前に喧嘩別れをしてしまっていた。そのせいで、私がいなくなったのは自分のせいだと思い込み、さらに母の様子を知った彼は、自ら命を絶ったそうだ。
私のいない一年間で、私はなにもかもを失ってしまっていた。向こうの都合で勝手に召喚され、世界を救えと勝手を言われ、それを成し遂げなければ帰れなくて……
いざ元の世界に戻ってきたら、すべてを失っていた。こんな残酷な話があるか?
だから私は、決めた。
「復讐、してやる……!」
私はすべてを失ったのに、あいつらは平和になった世界でのうのうと暮らしている。そんなこと、許せるはずもない。
私には失うものはもう、なにもない。だからあいつらに、失うことの悲しみと怒りを教えてやる。
幸いと言っていいのか、『英雄』となった私は、異世界へ繋がるための召喚の儀式をする方法も、なにが必要かも、すべて知ることができた。そして手段も、あった。
この方法を使い、再びあの世界に舞い戻る。そして、あの世界に復讐する。私を召喚した召喚主も、その儀式に協力した奴らも……その家族も、邪魔する奴らも、全部全部!!
……私は、召喚された異世界から戻ってきた。そしてこの日、再び異世界に舞い戻り、復讐することを決意した。
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