始まりの裏側
[???]
そこは薄暗い大きな一室。
その部屋には闇を纏っているかのように見える漆黒のローブを着たものが10名。
床に描かれた大魔法陣の上に怯え、目から涙を流している平民31名。
そしてその魔法陣のそばに薄暗い部屋の中でも輝いているように見える金髪のロングヘアーの女性。
一人の平民が「嫌だ...嫌だー!!!!」と立ち上がり一室の扉に向かって走り出そうとした瞬間、かわいらしい声が部屋に響いた。
「【バインド】♪」
その言葉が発せられた瞬間に魔法陣の中にいたものは身体の自由を奪われたかのような感覚に陥り動けなくなっていた。
「では、みなさんが動けなくなったということで始めましょうか♪」
彼女が軽く拍手をパンっと鳴らすとローブを着た者たちが一斉にブツブツと詠唱を始める。
魔法陣が光始め魔法陣の中にいる平民たちが苦しみ始め彼女が一言。
「【召喚魔法 派生勇者召喚】」
次の瞬間光が爆ぜた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
[田中 健斗]
めんどくさい授業を終え昼休みに入る。同じクラスの天音優探すためクラスを見渡す。
「あれ....あいつどこ行った?」
いつものように一緒に昼飯を食べるつもりだったが何度見ても天音は居なかった。
....
初めて天音に昼飯を誘った時のことを思い出す。
「え、えーと....田中君だよね。や、やめといた方がいいよ。僕の現状はほら...わかってるでしょ、?」
田中は周りを見る。クラスメイト達の目の中映る感情は様々だ。小声でぼそぼそとクラスメイト達から聞こえてくる言葉はこうだ。
「田中君って天音と仲良かったの?」
「今まで話してるところ見たことなかったんだけどw」
嘲笑する者もいれば驚きの表情を浮かべる者もいる。その中には面白くないと睨めつけてくる視線がちらほら。
今思えばあの時天音に話しかけてよかったと思っている。
確かに天音がいじめられている現状で話しかければ自分もいじめの標的になるんじゃないかと思っている時期もあった。天音の前ではかっこつけて怖くないといったもののやっぱり少しは怖いものだ。
天音は優しく巻き込むまいと俺のことを初めは避けていた。だからこそ俺は話しかけ続けやっと振り向いてくれた。諦めと言わんばかりの表情をした天音とお互いの話をして今の関係を築けている。
(俺のこと避けた時点で優しい奴確定だったからなぁ)
トイレに行っていると思い10分程天音の席で待つが帰っては来なかった。
(ぼっち飯は久しぶりだなぁ)
天音に話しかけてからというもの元々一緒に昼めしを食べていたやつらからは避けられいつしか天音と以外話せなくなっていた。
(まぁ元々一緒だった奴らは友達と呼べるかも分からないほど浅い関係だったからな。俺としては天音と仲良くできてラッキーだわ)
自分で作った弁当を食べながら天音を待つこと10分後...
2-3クラスの床から光が爆ぜ...
その教室には人っ子一人いなくなる事件が起こった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
[紫宮 茜]
私はずっと傍観者でしかいられなかった。田中君とは違った。天音君を助けたいと話しかけたいと心の中では思うのに周りの空気がそれを邪魔していた。一度だけ話したことならある。とある日の放課後。私と天音君が日直になった日。
(日直の仕事忘れてたっ!確かもう一人は天音、君だったよね。もう一人で職員室に教室の鍵返しに行ってるかな)
早歩きで教室に向かうと丁度彼は教室の鍵を閉めている時だった。
「あ、天音君!」
「...紫宮さん。」
彼は少し申し訳そうな顔をしていた。
「ごめんねっ。日直の仕事忘れちゃってて、一緒に鍵返しに行こっか!」
「う、うんっ」
彼は少し驚いていた。私が思うにこうして彼はいつも一人で日直の仕事をしていたのだろうと。誰かと一緒に鍵を返しに行くことがなかったから驚いている。会話という会話はしなかったがなぜかその時は嬉しくてしょうがなかった。
私はあの時のことを今でも考える。もっと話しておけば、友達になっていればと。今周りにいるみんな、クラスメイト達からは陽キャグループと呼ばれているグループに属している人は昨日のお笑い番組の話にゲラゲラと笑っていた。私は属そうと思って属しているわけではない。友達の石津 美緒ちゃんが属していなかったら属していなかっただろう。
ふと天音君の席に目を向ける。
(あれ?今日は天音君来てなかったっけ。...田中君はいいな。あんなに堂々と天音君の席に座って待ってあげることができて...私も、本当は。)
そう思いながら周りの人の話に相槌を返して今日もいつも通りの日々が続くんだろうなと考えていたその5分後。
2-3クラスの床から光が爆ぜ...
その教室には人っ子一人いなくなる事件が起こった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
[須藤 悠真]
...気に入らなかった。だからいじめていた。校内二大美女と言われている内の一人。紫宮 茜を初めて目にしたとき俺は心を奪われた。モデル顔負けのスラっとしていて出るとこは出ており引っ込むべきところはしっかり引っ込んでいるスタイル。顔面偏差値が存在するなら上位に位置する。勿論、心を奪われていたのは俺だけじゃなかっただろう。だが、天音 優だけは許すことができなかった。自分が彼女に恋してるからこそ、いつも見ているからこそわかる。彼女が目で追っているのは俺ではなく天音だった。だからいじめていた。こんなやつに彼女は相応しくない。相応しくない。
ただ、それだけで殺そうなんて思っちゃいなかった。そうあの日あの時。天音の隣を歩きながら天音に話しかける彼女の笑顔を見るまでは...
...気が付くと俺の手は血濡れていた。
脇腹と背中を刺したからだ。冷静になると手が震えて手に持っていたナイフを落とす。
(こ...これで、これでこれでこれで! 彼女は、俺のものだ。 俺のものだ。)
「へ...ははは。ははははは!」
冷静に戻ったと自分では思っていたが傍から見た須藤の顔はぐちゃぐちゃだった。泣いているのかそれとも笑っているのか。人を刺したときの感触に人を殺した余韻に吐き気を覚えながらも想い人を自分のものにできたと思い込んで笑いが止まらなくなっている須藤は死体の前に腰を降ろした瞬間。
須藤と天音の下に現れた魔法陣は二人を見つけたといわんばかりに二人の行動力を奪い須藤が動けないと思った瞬間光が爆ぜて光に飲み込まれた...
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
[???]
爆ぜた光が収まり魔法陣の上を見る。
魔法陣の上には先ほどいた平民とは違い若々しい少年少女達合計31名が平民達が着ていた服の上で眠っていた。
「成功ですね♪」
もうすでに漆黒のローブを着ていたもの達は消え彼女の発した言葉を聞いた者は居なかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます