第6話.後悔
ハァハァ…
「どうしようか、俺どうしたらいいんだろう?」
肩で息をしながら、ハヤトがそう呟く、パニックからまだ完全には解放されていない。ハヤトは何をしたらいいのかわからず、辺りをキョロキョロし始める。そんな中、今までに起きたことが走馬灯のようにハヤトに襲いかかる。再度パニックにかかりそうになった瞬間にトーマの声が響く、その瞬間、夢から覚めるように何をすべきかを思い出す。
「そうだ。この筒を天に向かって打たなきゃいけないんだ」
ヒュ~~…パァ~~ン
赤い閃光と共に火花が散る。火花はとても小さいが、とても力強く大きな輝きとともに散る。あまりの事に呆気にとられるハヤト。それと同時に恐怖が襲ってくる。確かに小さい割にとても力強い輝きを放ってはいたが、城までの距離はかなり遠い。あんな小さい光で城の騎士達は気づいてくれるのだろうか?あの光が城に届くということは、自分のいる場所を海賊たちに教えたのも同然ではないか?様々な考えがハヤトの頭の中を渦巻く。いてもたってもいられずハヤトは城に向かい走り出した。
「夜分遅くすいません。ストーン様大変です。」
そう言いながらストーンの部屋に大慌てで騎士が入ってきた。
「どうした?」
騎士の顔を見て尋常でないことに気づき、ストーンは慌てて起きる。
「空に救難信号が打ち上がっていました。」
「なんだと?見間違いではないのか?」
「はい、微かに光が放たれてました。」
「そうか、どちらの方角だ?」
「あれは数週間前に行った。ハトム村の方です」
「ハトム村か…少し距離があるな…よし、皆のものを起こしハトム村に行こう。」
そう言い出発の準備をするストーン一行
「皆の者こんな夜更けの嵐の中申し訳ない。しかし、数週間前に行ったハトム村から救難信号が飛んだらしい。なので、今からみんなでハトム村に向おうと思う。」
「サー」
以前の騎士団であれば、こんな状況で村に助けに行くことなどまずありえない。しかし、今の生まれた変わった騎士団にそんな腐った根性を持つ騎士は1人もいなかった。むしろストーンのその言葉に歓喜さえ覚えている騎士もいたほどだ。そうしてストーン一向はハトム村に向かい出発する。
ハヤトは山の中を城に向かいがむしゃらに走り続けていた。
「どんだけ走れば城に着くんだよ。全然距離が縮まらねぇ…」
肩で息をしながらそうボヤくハヤト、どれだけ走り続けても、城は遥か遠く一向に近づく気配がない。しかし立ち止まると絶望の二文字が襲ってくる。その二文字を振り払うかのように、また走り出すハヤト。走り続けることで挫けそうなこの状況を忘れようとしていた。
もう何時間走ったであろう限界なんかもうとうに超えている。もう自分が何をしているかもわからない。うっすらと目を開けながら歩き続けるハヤト。そんな中、はるか前方に松明の明かりが見えた。それに気づいたハヤトは松明の見える方向に無我夢中で走りだす。
タカタッタカタッタカタッ
馬の蹄の音と共に何名かの人影が見えてきた。
「こっちだぁ~助けてくれぇ~!」
思わずそう叫ぶハヤト。そして、叫んでから我に返る。前にいる人が騎士団じゃないかもしれない、もしかしたら海賊かも…そう思った瞬間、ハヤトはまた、負の感情に襲われる。今回は助けてくれるトーマもいない。ハヤトが負の感情に押し潰されそうになった瞬間
「おお…こないだの少年ではないか?」
ストーンの声が聞こえた。
「あんたはこないだの…」
ハヤトはほっとしたかのようにそう呟く。それと同時に
「大変なんだ。村が…村が!」
村のピンチ早く伝えたいのだが、気持ちばかり流行ってしまって上手く言葉が出ない。そんな感情に気づき、ストーンは優しく問いかける。
「落ち着きなさい。君が何かを伝えようとしているのは分かっているが、そんなに気持ちばかり焦っていては伝えたいことが伝わらないもんだよ。とりあえず深呼吸でもして気分を落ち着けてみなさい。」
ストーンに言われるように、ハヤトは深呼吸を繰り返すそしてハヤトはゆっくりと、そしてはっきりと聞こえる声で
「助けてください。村が、村が海賊に襲われて!」
「なに?海賊!」
ストーンは驚きの声を上げる。どうやら、予想を遥かにしのぐ不運に見舞われているようだ。それと同時に現状の戦力を予測する。城を出てきた時には、万全の装備で出て来てはいるが、今は年貢を納めた馬車は城に返していて、当初の半分以下の戦力しかない。まだ盗賊であればある程度の戦力予測ができるのだが、海賊であれば話は別だ。未知の海賊がどれぐらいの戦力を持っているか、想像もできない。
「ケビンはいるか?」
ストーンはそう言いながらケビンを探し始めた。
「はい、こちらに」
明らかに新人らしい出で立ちをした若い騎士が顔を出す。その腰には双剣が飾られていた。
「海賊の襲撃ということなので、これだけの兵隊では正直忍びない。なのでケビン、キミには悪いが、城に帰って援軍を頼んでもらいたい。」
「はい、分かりました。」
「それと同時に彼を城まで連れて行って休ませてもらいたいのだが構わないかな?」
ハヤトの方を指すストーン。正直城に行き休みたい。だがそれよりも、みんながどうなってるかの心配が勝った。このままでは一生後悔する。そう思ったハヤトはこう返した。
「嫌だ。俺だけ逃げるなんてそんなことできない。」
「しかし、少年はもうボロボロじゃないか?ハトム村からここまでの距離を考えれば、少年は十分頑張った。これ以上危険な目に合う必要はない?」
「危険な目に会うことなんかないさ、だってあんた達はこの国最強の騎士団なんだろ?」
ストーン達に合流できた安心さが出たのか、ハヤトが本調を戻し始める。
「うむ、わかった。だが一つだけ約束しろ、私の近くから離れるな」
「うん。」
そして、ハトム村に向かう一行。走りでは何時間もかかった山道も馬であれば数十分で着きそうだ。このままいけば、村のみんなが助かるかもしれない。そう思った瞬間とてつもない地震が襲った。
グラグラグラ…
「みんな馬を止めろ。一時避難するんだ。」
皆に声をかけるストーン。周りの者も馬から降りパニックになりかけている馬をあやし始める。ものすごく大きな地響きだったが故、長く続くかと思いきや地震は一瞬で収まり辺りは雨風の音だけになる。ストーンは念のため慎重に辺りを見渡しながら、周囲の確認をする。
「ものすごくでかい揺れだったか、みんな大丈夫だったか?」
「はい、問題ありません。皆無事のようです。」
団員達からの返答がある
「そうか、では進むとしよう。」
そう言いながら、また進み始める一行。ハトム村も徐々に近づき、あとはあの崖を越えれば、ハトム村ももう目の前というところまで来てた時…
「なんだこれは…」
思わずストーンがそうこぼす。その声を聞き、何があったのかと思いストーンの背中越しから崖をみるハヤト。
「ああ~…もうダメだ…」
その一言を最後に気を失うハヤト。
目の前の崖は土砂が崩れて通れなくなっていた…
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