無題・陽

@Nick-s

第1話.物語の始まり

 

「お前らは何もわかっていない…平和な国?人々の自由?そんなものすべて幻想だ!規律がなければ何の意味もない…それこそが真の平和に近づく道だとなぜ気づかない!」

「お前こそ何も分かっていない…規律?お前達の考える規律とはなんだ?では、なぜ飢えに苦しむ人々がいなく無くならない?お前の言う規律こそ、幻想だ!」

「すべての事をいきなり変える事はできない。私達だってこの国をよくしようといろいろやっている。ただ…」

「もういい、お前と話すことは何もない。この勝負の勝者こそ真の正義。力なき正義など何の意味もない!」

「ならば!」

騎士団長の豪剣が空を切る。革命軍リーダーの体格から見て、騎士団長の攻撃が当たりさえすれば勝利が決まることは確実であろうが、革命軍リーダーのトリッキーで素早い動きに翻弄され、騎士団長の剣は空を切るばかり

対して革命軍リーダーはトリッキーで素早い動きを武器に両手の甲から出ている剣で攻撃してくるのだが、こちらは逆に騎士団長の重厚な装備を破ることができず、決定打を与えることができない。

革命軍リーダーは相性の悪さで力を発揮することができず。騎士団長の方は相性こそは良いものの革命軍リーダーのあまりに素早い動きに対応ができない状況が続く。

騎士団長が剣は革命軍リーダーの両手の甲の剣でいなされ、かわされ

革命軍リーダーの攻撃は騎士団長の重厚な装備の前に決定打が与えられない。そんな状態が長く続いたその一瞬、ほんの一瞬に神が微笑んだ。

革命軍リーダーの肘からのえぐりこむような剣が騎士団長の兜を捉え、兜を弾く。

「今だ!!」

仰け反る騎士団長に向け、革命軍リーダーの渾身の一撃が振り下ろされようとしたその一瞬。騎士団長の顔を見た革命軍リーダーが動きを止めた…

その一瞬を騎士団長は見逃さなかった。

「そこだ!!」

騎士団長が腰に収めている短剣を抜き、革命軍リーダーの胸に向かい一直線に伸びたその瞬間、どこからか女性の声が

「やめて!!」

……

 

「はい、続きはまた今度ね」

そう言って老婆は紙芝居を閉じ終了した。

「ええ、マジかよ。ばぁちゃんこれからいいとこじゃんか!もうちょっとやってくれよ」

目を輝かせ1人の少年が悲願する。その声に続くように、おどおどとした声でもう1人の少年も呟く

「うん。おばちゃん、僕も続きを聞きたいな?…」

「はいはい、また明日ね。わがままばっかり言ってないで、あなた達も早く仕事手伝ってきなさい。じゃないと明日のお話はなしだよ。」

老婆に言われ、渋々その場を離れる少年2人。

 

辺境の地ハトム村に住む幼い少年2人は先程、老婆から聞いた物語を興奮冷目やらぬ感じで話している。

少年達の名前はハヤトとトーマ。

元気がよく明るく子供達のリーダー的存在のハヤトと運動神経は良いが気弱でいじめられっ子のトーマの凸凹コンビである。

一見すると典型的ないじめっ子といじめられっ子のように見えるが、この2人はなぜかウマが合いいつも一緒に過ごしている。

「いやー、しかし剣士の戦い熱かったなぁ!」

興奮してはしゃぎながら喋るハヤト。

「うん。」

ハヤトにつられるように、トーマも頷き返す。

「よし、決めた。俺も剣士になる。」

「うん。ハヤト君ならなれるよ。」

「なに言ってんだよ。トーマも一緒になるんだよ。それでこの国を変える剣士になろう。」

「いや、でも僕は体も弱いし、何より血が怖いよぉ…」

「はいはい、また始まったよ~なになに弱虫が…」

「だって…」

「こら、ハヤト、トーマを虐めんじゃないわよ。」

威勢のいい声を上げながら、少女がハヤト達に近づくこの少女はサーヤ、オテンバで男勝りな少女である。

「うわぁ~…仕切り屋サーヤが来たよ…」

近づいてくるサーヤ見て、ハヤトが小さな声で呟く

「ダメだよ。ハヤトくんそんなこと言ったらサーヤちゃんに聞こえるよ。」

「なに?聞こたわよ?誰が仕切り屋なの言ってみなさいよハヤト?」

「うっせぇ、ブス!バァ~カ!!」

そう言いハヤトが走って逃げる。

「逃げるなんて卑怯よ。こら、待ちなさい!!」

「サーヤちゃん、僕そもそもいじめられてないよ…」

そう言いながら弱々しくトーマが声をかける。

「あら、そうなの?トーマはいつもおどおどしてるから遠くから見てるといじめられてるようにしか見えないわ」

「ちがうよ。ハヤトくんは他の子と違って僕の友達だよ。」

「それなら友達らしくおどおどしないで喋りなさいよ。」

「だって…」

「ほら、あんたがそうやっておどおどしてるとまるで私がいじめてるように見えるじゃない?シャキンとしなさいよ!!」

そう言いながらサーヤはトーマの背中を叩く

「痛いよ。サーヤちゃん…」

「ああ~サーヤがトーマいじめてる!」

逃げていたはずのハヤトがここぞとばかりにサーヤを責める

「あんた、そんな所に隠れてたの?待ちなさい!!」

「へっへ~ん。お前なんかが俺に追いつけるわけねーだろ?トーマ例の場所で待ってるからなぁ!!」

そう言いながらお尻を叩いて挑発し、そそくさと逃げるハヤト

「ムッキィ~…待ちなさいハヤト!!」

追いかけようとしたサーヤだが本気で逃げるハヤトに追いつくはずもなく、すぐに諦めトーマのもとへ戻る。

「ハヤトのやつ覚えときなさい。まあいいわところでトーマ、ハヤトとの待ち合わせ場所はどこなの?」

そう言いながらトーマの方振り向くサーヤだが、トーマはもうその場所にはいなかった

「あいつ、本当にすばしっこいんだから…」

呆れながらため息をつくサーヤ

「サーヤあんたもサボってないで、早く畑仕事しなさい。」

「はぁ~い、お母さん」

こうしていつも通りの何気ない1日が始まる


「トーマおっそいなぁ~」

丘の上で待つハヤト。この丘は村が一望できる絶景のスポットで、ハヤトとトーマの秘密の場所でもある

「ハヤトくんごめん、待った」

肩で息をしながら駆け寄ってくるトーマ

「おっせえよトーマ。それよりサーヤはちゃんとまけたのか?」

「うん。ハヤトくんの方を見ている間に急いで逃げてきてから大丈夫だよ」

ハヤトを見ながら微笑むトーマ

「ほんとあの仕切り屋は何かにつけてグチグチグチグチうるせえんだよなぁ」

他愛もない話を丘の上でするのがいつもの2人の習慣だ。小高い丘の上から見える綺麗な海、どこまでも続く大地、遥か彼方に見える城。何気ない景色だが2人にとってはかけがえのない宝だ。

そんな中、いつもと違う景色が見える。谷の辺りから鎧を着た騎士たちが荷台を引いた馬を連れハトム村に向かってくる。

それに気づいたトーマが

「ねえ、ハヤトくんあれ見て」

そう言ってトーマの指を指す方を見ると大勢の騎馬隊が村に向かってきているのが見える。

「あいつらまた来たのか?年貢年貢ってどれだけ食べ物持っていけば気が済むんだ」

怒りをあらわにするハヤト

「うん。でも彼らのおかげで平和なのは確かだし…」

「何言ってんだよ、盗賊盗賊って1回もこの村を襲ってきたことないじゃないか?あいつらはいるかいないかわからない、盗賊の名を使って食べ物を盗む泥棒と一緒じゃないか」

そう言いながら、いきり立つハヤト

「よし、今日こそあいつらに文句を言ってこの村にこさせないようにしてやる」

そういい騎士団の方にかけていくハヤト

「ハヤトくん待ってよ」

そう言いながらトーマも後を追う

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