第24話 備えあれば憂いなし(前編)
---三人称視点---
連合軍並びに傘下のアスカンテレス王国、エストラーダ王国、パルナ公国、
ニャルザ王国、ジェルミア共和国から派兵された騎士団や冒険者、
傭兵を合わせた総兵48552人がエストラーダ王国のレミオン要塞に集結して、
帝国同盟軍との次なる戦いに向けて作戦会議を行った。
会議の参加者はラミネス王太子、シャーバット公子、
エルフ族の騎士団長エルネス、ニャールマン司令官、ジュリアス将軍と
いったそうそうたる顔ぶれであったが、
彼女等は貴重な戦力だが、あくまで一兵士に過ぎなかった。
また一部の者は彼女等が現場での発言権を増すことを危惧しており、
この会議に参加させなかったという一面もあった。
そして各国の首脳部による作戦会議が行われて、
ラミネス王太子、騎士団長エルネスを中心とした
ヒューマンとエルフ族の混成部隊25550人は、
エストラーダ王国のレミオン要塞から帝国領に進行する事が決まった。
またシャーバット公子を総指揮官として、
ニャールマン司令官、ジュリアス将軍の両名、
更にはリーファとその盟友も加わった総兵力23500人の大軍を持って、
パルナ公国の古都パールハイムから迂回しつつ東進して、
かつてはジェルミア共和国の港町であったジェルバを奪還する事が決定。
これによって連合軍は部隊を二部隊に分けて、
正面、また迂回して帝国領へ攻め込む事となった。
そしてこの機に乗じて、
帝国の東部にある神聖サーラ帝国にも参戦するようにラミネス王太子が書状を送ったが、神聖サーラ帝国の皇帝オスカー二世は、
それに対して何もリアクションを起こさず、中立の立場を保った。
逆にガースノイド帝国は、
皇帝ナバール一世の皇后マリベルの母国・ペリゾンテ王国に援軍を要請。
すると皇后マリベルの実父でもある国王ミューラー三世は、
帝国軍に対して約一万に及ぶ援軍部隊を派遣した。
これによって連合軍と帝国同盟軍の戦力はほぼ同数になった。
だがリーファ達からすれば、
与えられた任務を忠実にこなす事が第一目標であり、
とりあえずレミオン要塞から要塞都市レミオンへ移動。
ここで色々と準備を整えて、
街の
軍資金はそれなりにあったので、
リーファ達は要塞都市レミオンを適当に歩き回った。
要塞都市レミオンは、
堅牢な城壁に護られたエストラーダ王国で最も大きな規模を誇る街の一つだ。
街の区画は冒険者区、商業区、居住区、娯楽区の四つに分けられていた。
エルフ族の街にしては、石造りの建物が目立つが、
程よく魔力の高いマナの木を使用した木造建築も取り入れており、
建物全体が高い耐久性に加えて、高い耐魔性も備わっていた。
リーファ達はとりあえず商業区で買い物を済ませた。
武具に関しては、既存の装備のまま、
それ以外には
「とりあえず買い物はこんなところね」
リーファはそう云って、周囲の仲間に視線を向ける。
「ウン、オイラも準備万端だよ」
「ボクもこれ以上欲しいものはないです」
「同じく」
ジェイン、エイシル、アストロスがそう返事する。
「お嬢様、他にまだ何か用事があるのですか?」
「ええ、少し冒険者ギルドに寄りたいわ」
「冒険者ギルド? 何か用があるの?」
と、ジェイン。
「ええ、
スキルポイントをどう割り振るか、悩んでいるのよ。
だからギルドの受付嬢の助言が欲しいのよ」
「成る程、ではこのまま冒険者ギルドへ行きましょう」
と、エイシル。
「了解です」「了解だワン」
そしてリーファ達は商業区から冒険者区へ向かった。
---主人公視点---
十五分ほど歩いて冒険者ギルドに到着。
この街の冒険者ギルドのギルドハウスは、
街の大きさに相応しく立派な木造二階建ての館だった。
各地から冒険者達が集まるこのギルドハウスで、
依頼の管理や斡旋、報酬の支払いなどが行なわれている。
「とりあえず中に入るわよ」
「「はい」」「ウン」
私達は入り口の黒い大きなスイングドアをゆっくりと開き中に入った。
「いらっしゃいませ! お仕事の案内なら奥のカウンターへ、
お食事なら空いてるお席にご自由にお座りください」
やや耳の尖った女性エルフのウェイトレスのお姉さんが、愛想よく出迎えてくれたわ。どうやらこの冒険者ギルドは、酒場が併設されているようね。
そこらじゅうに鎧を着た剣士、戦士、ローブを着た魔導師の姿があり、
値踏みするように私達に視線を浴びせている。
でも私は表情を崩さず、仲間を引き連れて受付のカウンターに向う。
受付は三人。 全員女性ね。
更に加えるならば全員美人でグラマー。
ここに限らず冒険者ギルド全体で受付の女性率は非常に高いのよね。
「はい、今日はどのようなご用件でしょうか?」
受付の女性エルフは清潔感のある凜とした美人だ。
ギルドの制服である黒のスーツとパンツを綺麗に着こなしていた。
「……私の
ちなみにこれが私の冒険者の証よ」
私はそう云って、受付口に自分の冒険者の証を置いた。」
「わかりました。 ……えっ!?」
「驚くのは無理もないわ。
でもこの規模の冒険者ギルドなら、
過去の数百年のデータや書類がある筈よね?
少々手間を取らせると思うけど、お願いするわ」
「……少々お待ちください」
そう云って受付嬢は奥へ引っ込んだわ。
恐らく今頃、上司と話し合っているのでしょうね。
これは結構待たされそうだわ。
「……すみません、お待たせしました」
あら? 意外に早く帰って来たわね。
「お待たせしました。 上司に確認しましたが、
お客様の
但し非常に珍しい貴重品扱いですので、
閲覧のみなら無料ですが、スキル一覧表の
一枚五万ローム(約五万円)となりますが……」
「その条件で構わないわ。
それで全部で何枚になるかしら?」
「確認した所、レベル50までのスキル一覧表が確認出来ました。
全部で……五枚、二十五万ローム(約二十五万円)となります」
「それでいいわ。 これで足りるわよね?」
私は腰帯の革袋から、
ローム金貨を三枚取り出して、受付口に置いた。
「はい、では少々お待ちください」
「ええ」
そして五分後。
ギルド職員が五枚の羊皮紙を持ってきて、私に手渡した。
「ありがとう、助かったわ」
「いえいえ、宜しければ奥の談話室をお使いください」
「ええ、そうさせて貰うわ」
そして私達は奥の談話室へ移動。
談話室には二つの黒革のソファが部屋の手前と奥に置かれており、
私とアストロスは奥のソファに座り、
ジェインとエイシルは対面の席に腰掛けた。
「それじゃ今からスキル表を確認するから、
皆の意見も聞かせて頂戴」
「「はい」」「ウン」
さあて、どうスキルを割り振るか。
私はそう思いながら、スキル表に目を通した。
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