人生に疲れた最強魔術師は諦めて眠ることにした
白崎まこと/ビーズログ文庫
プロローグ
眼前に広がる
氷の矢が降り注げば
後ろで
ガルジュード
息をするように自然にいくつもの魔術を放ち、どんな
ここは
非道な行いだという自覚はもちろんあるが、彼女は心を押し殺して、
そしてこの場を制圧できるまで、あと少しというところまできた。
目の前の深緑色のローブを身に着けた十数人、エルシダ王国の魔術師たちを退ければ任務
――――
フィオナはとにかく眠くてたまらない。
昨夜、さあ
本来なら数人の魔術師と
討伐を終えて帰ってきたのは朝方で、シャワーを浴びてようやく寝られるとベッドに向かった直後、また皇子に呼び出されてしまい任務を言い渡された。
つまり、
昨夜だけでなく、彼女はここ最近まともに寝ていない。
いくら最強だ無敵だと言われても寝不足に勝てるはずはなく、ろくな休息を与えてくれず、次から次へと任務を言い渡してくる皇子への
自分はこんなに
(……もうやだ。エロ皇子のばか。
「ぐっっ……」
全身を襲う強い痛みに顔を
何もかもが
向かいくる魔術師たちは実力者ばかりで、薙ぎ払おうと疾風を何度か放っても、彼らを
かなりの魔術
できればあまり傷付けたくない。だけど手加減をしていたら
(やだなぁ……)
気が乗らないけれど、さっさと
彼女の右手首で、
神器と呼ばれる特別なこの道具のおかげで、彼女の魔力は
完成した魔法陣は、魔術師たちの頭上で腕輪と同じ金色に
これで終われる。やっと寝られる。
こちらはもう限界が近いのだ。胸を痛めながらも、早く終わってと切実に願い、魔法陣を起動させた。
そんな彼女の願いもむなしく、攻撃が魔術師たちに届くことはなかった。
閃光を放ったのは、魔術師たちの後方から歩いてくる黒い騎士服の一人の人物。
さらりとした金色の髪に
男は後方に白いローブを身に着けた赤髪の男を従え、ゆっくりと歩いて向かってくる。
足を止めようと彼女がどれだけ魔術を放っても、いくつ魔法陣を描いても、全て
「……もうやだ」
眠さでまともに攻撃ができなくなり、男が持つ蒼い光を放つ剣をぼんやり見つめた。
あの
この男を退けて帝国に帰ったところで、終わりの見えない辛い人生が続くだけ。
いいことなんて一つもない。心の
そこから解き放ってもらえるなら、一瞬で楽になれるなら、全て終わらせることができるなら。
それはすごく
「……それ良いな」
フィオナは生きることを
胸の苦しさがなくなって、すーっと楽になった。張り
重い
蒼い光に全てを
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