魅了魔法を暴発させたら破邪グッズをジャラジャラさせた王太子に救われました

三崎ちさ/ビーズログ文庫

プロローグ


 クラウディアは街でも評判の美しいむすめだった。

 父はいち平民の商人だったが、娘クラウディアが生まれてからたんに商売がうまくいくようになりおおもうけ。きょがくの富を得た彼は港町にごうていを建て、そこをきょてんとして国内でも有

数の商会の長となった。

 父からクラウディアは『がみの子』と呼ばれた。

 難しい商談でも、クラウディアをともなっていればうそのようにうまくまとまってしまうのだ。

 クラウディアは特段めずらしいことができるわけでもなく、すぐれた知識を持ち合わせ話術に秀でているわけでもない。なにしろクラウディアが父の商談に同席するようになったのは、物心ついたばかりのときからだ。

 しかし、クラウディアはただちょこんとそこにおぎょうよく座って、「こんにちは」とあいさつするだけでよかったのだ。

 クラウディアはただそこにいるだけで人々をりょうした。クラウディアはニコリと微笑ほほえむだけでいい。挨拶の一言でも言うだけでいい。

 本当にただそこにいる。それだけでいいのだ。

 やがて成長したクラウディアはじゅつ学園に通うこととなった。クラウディアには平民の生まれには珍しく、りょくがあった。常人が持たぬ特異な力を正しくあつかうことができるようになるために、魔力を持つものは魔術学園に通うことが義務付けられる。

 この国で魔力を持つ人間は貴族に多く、『魔術学園』とめいっているものの、実態としては『貴族学園』と呼んでもさわりはないほどであった。

 平民生まれの娘が学園内でしゅくしすぎることのないようにと心配した父は、そのためにだんしゃくしゃくを金で買った。『女神の子』たる実娘を父はそれは大層かわいがっていた。

 しかし、クラウディアの学園生活はけして楽しいものではなかったのだった。


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