【今日は何の日?リレー】2月14日

「こんにちは! バーチャル帝都所属、穂之木ほののぎクヌギです!」

七見屋なのみやアキラです」

七見屋なのみやミサギでーす」

「そしてこのオレ様が、枉王院おうおういん煌真オウマだ! ハーハッハッハァ!」


 左から大正時代の学生風の少女、青い書生風の少年、ピンクの書生風の眼鏡の少女、そして短いコート付きの大正風詰襟学生服を着て髪に赤いメッシュを入れた少年が挨拶する。


上位チャット:うおおおおおおお

上位チャット:帝都組だー!

上位チャット:好き

上位チャット:アキラきゅん!

上位チャット:局長ー!

上位チャット:光明院ー!


「えー、私たちバーチャル帝都は、四人の共同チャンネルでの、私たちの日常を切り取った動画投稿と」

「個人のチャンネルでは、歌、雑談、ゲームなど、それぞれの得意分野で活動してます!」

「昨日、歌ってみた投稿したから見てよね~!」

「フッ。TPSの華麗なるキル動画が見たければ来るがいい」


上位チャット:歌みた見た。よかった

上位チャット:ミサギちゃんのソロよかったよね

上位チャット:オウマのTPSはガチ

上位チャット:メインチャンネルの謎動画も好きだよ……


「さて! 今日は彩羽根トーカさんの企画で『今日は何の日?』動画なんだけど。アキラくん、オウマくん。今日が何の日か分かる?」

「えっ……え、えっと~……ど、どう?」

「んっ? あっ、いや……そうだな、記念日はいろいろ、あるからな、うん」


 クヌギに振られて、アキラとオウマはわざとらしく目をそらした。


上位チャット:何の日だっけ

上位チャット:あっ

上位チャット:今日は2/14……

上位チャット:あー


「え~、何アレ、あからさまだよクヌギちゃん。あさましくない?」

「あはは、うんうん、みんな緊張しちゃうよね。そう、今日は2月14日、バレンタインデー!」


上位チャット:うおおおおおおお!

上位チャット:バレンタイン!

上位チャット:ありがとうございます ありがとうございます

上位チャット:帝都組でバレンタイン……!


「というわけで、みんなにはこの後、私の手作りチョコレートを用意してま~す!」

「え、やったあ!」

「いいの? ありがと~!」

「局長、ありがとうございます」


上位チャット:おお~

上位チャット:クヌギちゃんの手作り!?

上位チャット:てえてえ


「うん、うん。と・こ・ろ・で?」


 クヌギはニコニコとしながら、ススッ、と顔を見まわす。


「私以外に、チョコレートを準備してる人はいるのかな~?」

「えッ」

「ちょっ」


上位チャット:!?

上位チャット:!

上位チャット:ミサギちゃん!?

上位チャット:アキラきゅん!?


「フッ、局長。それはないでしょう」

「そうなの、オウマくん?」


 動揺するアキラとミサギをよそに、オウマは痛々しいポーズで否定する。


「ええ。ダークマターなら生成できるかもしれませんが、チョコレートなんて名乗れる代物はとても」

「は? 誰見て言ってんの?」

「ちょ、ミサギ」

「うんうん、なるほどね~」


 ムッとなって噛みつきに行くミサギをアキラが抑え……その様子を見たクヌギは、ニコニコと頷いた。


「オウマくんは、手作りがもらえるって期待してるってことだね?」

「なッ!?」


上位チャット:おっ

上位チャット:なるほどねえ

上位チャット:へえ(ニヤニヤ)

上位チャット:ほ~ん


「はぁ~ん?」


 言葉に詰まるオウマを見て、ミサギがニヤニヤとする。


「なによ、アンタ、手作りチョコとか期待してたワケ~?」

「いやちがッ、流れ、そういう流れだったろうが!? な!?」

「えー、ボク知らな~い」


 オウマに話を振られたアキラは、ぷいっとそっぽを向いた。


上位チャット:(死)

上位チャット:ッスゥ~……

上位チャット:てぇてぇんだワ……

上位チャット:この感情は何……?

上位チャット:なんだこれ なんだこれ

上位チャット:あああああああああああ

上位チャット:帝都オタクが語彙を失ってる


「それでは!」


 くるっ、とクヌギがカメラの方を向き、大写しになる。その後ろで、ドタバタとやり合う三人。


「次の日の動画もお楽しみに! バーチャル帝都からお送りしました!」


上位チャット:ありがとうございました

上位チャット:ありがとう……ありがとう

上位チャット:生きていく希望

上位チャット:新式放送局の壁になりたい

上位チャット:死屍累々

上位チャット:みんな息してる~?

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