【全人類に】チョコが欲しいと聞きました【プレゼントする方法】
白い空間に赤い大きなリボンを頭の後ろに下げた少女がひとり。
「こんにちは、人類。彩羽根トーカです」
コメント:こんにちは!
コメント:こんにちは
コメント:待ってました!
コメント:かわいい
「さあ今年もまたやってきましたよ! バレンタインが! いやー去年はね、たくさんのVtuberさんのバレンタイン動画があって人生最高のバレンタインでしたね!」
嬉しそうに話すトーカの背後を、数々の動画サムネイルがすっ飛んでいく。
コメント:速い速いwwww
コメント:あったなあ
コメント:豊作でしたね
コメント:確かに
「今年はね、他のVtuberさんの話になりますが、そちらの世界にチョコを贈る企画もあるそうで! いやー、幸せものですね、人類?」
コメント:まじそれ
コメント:いろんな企画出るようになったよね
コメント:ちゃいむちゃんのバレンタイン申し込んだわ
コメント:出費がやばい嬉しい悲鳴
「で」
トーカは、ずいっとカメラに顔を近づける。
「もちろん分かってるんですよ、人類。私からもチョコが欲しいんでしょう?」
コメント:おっ
コメント:ウッッッ
コメント:はい
コメント:はい!!!!
コメント:くれるのか?
コメント:販売告知来た!?!?!?
「その気持ち受け取った! そうなればもれなく応えたい! ――というわけでアナリティクス機能を使ってね、去年の動画の再生数とか、欲しいってコメントしてくれた数とか、そして人類のお住いの地域を調べてみんなに贈るための予算を試算したところですね!」
トーカの背後に様々なグラフが浮かび、世界地図のヒートマップが作られていく。世界中が真っ赤になり、予算ゲージが――天元突破した。
コメント:草
コメント:すげえwwwww
コメント:いろんな国から来てる
コメント:コメントも多言語いるしそらそうよ
コメント:予算ゲージ君!?
コメント:予算おまえ……死ぬのか?
「……いやー、そもそも送料だけでもね、一大事業の予算が必要ということがわかりましてね……残念ながら……」
トーカはうなだれる。
コメント:仕方ないね……
コメント:金なら払うから!!!!
コメント:なんで金出して送ろうとしてるのw
コメント:金を払わせてくれ
コメント:買わせて
コメント:残念
「……でもですね、人類?」
囁くように言って、トーカは顔を上げた。
「忘れていませんか? そう――バーチャルなら可能性は無限大だって!」
コメント:ん?
コメント:おっ
コメント:あっ
「というわけで、今年もバーチャルから! 全人類にチョコをプレゼントしたいと思います!」
コメント:キター!
コメント:はい
コメント:いつものの予感
コメント:プレゼントうれしい!
コメント:やったーーー!
「まずは地球に降り立ちます」
トーカの姿が一瞬消えて、次の瞬間、3Dモデルで作られた街に立つ。
コメント:え?
コメント:あっはい
コメント:い つ も の
コメント:Google Earthかな?
「次にゴム手袋をして、取り出したるはスフィア――丸めたチョコ!」
道路の真ん中で手袋をしたトーカは、ソフトボール大の茶色い球体を手にして――
「そして巨大化します」
神妙な顔で言った次の瞬間、ぐぐぐっ、とトーカのスケールが拡大していく。どんどん大きくなったトーカがカメラにおさまらなくなり、街の上空から映すカメラに切り替わる。
コメント:スフィアwwww
コメント:でっけえチョコボール
コメント:巨大化?
コメント:巨大化します????
コメント:え?
コメント:でっかwwwwwwwww
コメント:いや草
コメント:どうして
「手始めに1000倍! 身長約1.6キロメートルになってみました。おー、見てください、東京スカイツリーがまたげちゃいますよ?」
巨大トーカは足元の尖塔に向かって手を振る。
コメント:でけぇwwww
コメント:ありがとうございます
コメント:すごいな
「というわけで、よいしょ」
巨大トーカは街に正座する。
コメント:あっ
コメント:オイオイ俺の家潰れたわ
コメント:大怪獣トーカ
コメント:3Dモデルやし透過してるやろトーカだけに
「それじゃあこれから全人類にね……チョコをあまねくプレゼントしたいと思います。こうやってチョコを手で包んで、加熱して……」
目を閉じ、祈るようにチョコを持つトーカ。
すると、これまで流れていた軽快なBGMが消え、一瞬の静寂のあと――静かで厳かで壮大なBGMが流れはじめる。チョコレートの玉から、ゆっくりとチョコが溶けて、街へと滴り落ちていく。
コメント:!?
コメント:え?
コメント:何が始まった
コメント:やったーチョコだあああああああ
コメント:ダイナミックプレゼント
コメント:東京が
コメント:これがメガテン新作か
ドロドロのチョコにコーティングされていくビル街。ドロドロとしたチョコの大河と化す道路。荘厳なBGMの中、街がチョコレートに沈んでいく。
次のカットでは、巨大トーカが様々な世界の都市でチョコを溶かしていく。飲み込まれていく各地のシンボル。
そして次のカットでは、さらに巨大になったトーカが――日本列島の上で跪いてチョコを溶かす。ヨーロッパで、オーストラリア大陸で、アフリカ大陸で――
そして――地球を抱えるサイズにまでなったトーカが、地球全土をチョコに包み込んで――宇宙空間で目を開く。
「ハッピーバレンタイン、人類」
ニコリ、と笑い――
コメント:怖い怖い
コメント:えっ
コメント:ちょっと怖い
コメント:人類補完計画かな?
コメント:チョコの海が世界を包んだ
コメント:これは全人類にあまねくプレゼントしましたなあ……
コメント:チョコの惑星
コメント:俺たちは何を見ているんだ
コメント:トーカちゃんの愛が巨大すぎる
「あ、そういうわけで各アプリストアにね、バレンタイン専用ARアプリを配布してます! スマホのカメラを外に向けると、私がこうやってチョコレートをプレゼントしてあげるので! ぜひ受け取ってくださいね! 無料です!」
トーカは、チョコレートでベトベトの手でVサインをとる。
コメント:おいwwwwww
コメント:切り替え早い
コメント:草
コメント:落としてくるか
コメント:かわいい
コメント:ありがとう!!!
「それでは人類、また次の動画で!」
コメント:お疲れ様でした!
コメント:また~
コメント:アート回だったな
コメント:映像のレベル普通に高くて草だった
コメント:これがトーカなんだよなあ……
コメント:トーカちゃん好き
コメント:ARアプリすごいな、ビルの間からトーカちゃんが見える
コメント:ちゃんと物体にチョコがかかってすごい
コメント:トーカちゃんの手汗チョコうめえ
コメント:ちょっとトーカちゃんにチョココーティングしてもらってくる
コメント:変態は帰って
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