【Vtuber実験バラエティショウ】寿司屋で勝負してみようの回!【Vバラ#14】

 白い空間に建つ、一軒の寿司屋。その暖簾を、白Tシャツと藍色ジャージの男性がくぐり、店内に入る。


「よっ、大将、やってる?」

「やってる」


 中性的な声が応える。カウンターの中で背を向けていた銀髪の少女が、振り向き――


 バン! ――銃声。男が倒れる。


 拳銃を持つ少女の顔がアップになり、そしてつぶやいた。


「――あなたで4人目」


 画面がブラックアウトし――




「Vtuber実験バラエティショウ! 略して、Vバラー!」


 白Tシャツと藍色のジャージを着た男性アバターがタイトルコールし、一列に並んで座る4人の出演者が拍手と歓声をあげる。


コメント:はじまた

コメント:冒頭のは何だったのwwww

コメント:今日のゲストモチちゃん!?


「さー今週も始まりました、Vtuberを起用した実験的番組、Vバラ! 司会を務めさせていただくのは、九から飛んで六と書いて九六はなぬき曜星ヨウセイ、好きな寿司ネタはマグロです! よろしくお願いします!」


コメント:ヨウセイ君好き

コメント:声がでかいんだよw

コメント:マグロいいね

コメント:イカ!


「それではレギュラーメンバーの紹介です。自分から向かって左から、今日は『好きな寿司ネタ』を添えてお願いします!」

「オッス! オラ、にわとりのトッポリ!」


 巨大なニワトリの姿がアップになる。


「寿司ネタは赤貝が好きだ! よろしくな!」

「そこはタマゴじゃないんだ?」

「オラ、子供のころめちゃくちゃマズいタマゴの寿司食ってからでえきれぇだ! トラウマだな!」

「それでいいのかニワトリ!?」


コメント:トッポリwwwww

コメント:産卵しろ

コメント:あー匂いが移って駄目とか聞いたことある

コメント:トッポリすし


「はい次!」

「Hi everyone!」


 緑色の肌に乱杭歯。毛糸のベストを着たオーク族がにこやかに片手をあげる。


「オークのルグロズ、デス! 好きな寿司ネタは、ウニデス!」

「おっ、渋い」

「知ってマスか? あれはウニの生殖巣なんデス。精巣と卵巣が一緒になったものデスね! 精巣と卵巣の生殖巣デスよ!」

「そうなんだ為になるな! でも二回も言わなくてもいいよな!?」


コメント:へーへーへー

コメント:卵だけじゃないんだあれ……

コメント:インテリオーク

コメント:BANされちゃう?


「はい次!」

「チーッス。内弁慶系Vtuberの、武蔵野むさしのケイでーす」


 デニムジャケットにジーパンで、ショートボブの髪の毛をあえてプリン配色にした糸目の男子大学生が指を立てて振る。


「好きな寿司ネタは中トロッスね」

「お、定番じゃん」

「むしろパイセンはなんで赤身なんスか? 貧乏だから他の食べたことないんスか?」

「うるさいよ値段じゃないんだよ!」


コメント:ケイくんはわざわざ突っかかってさあ

コメント:いいぞ

コメント:わざわざ赤身の方が好きっていうのは確かに分からないなあ

コメント:普通のトロは肉って感じで好きだよ


「はい、次!」

大調和弊国だいちょうわへいこくより来ました。弊国の兵、アサカラ兵士長です」


 軍服を着た赤毛の男が頭を下げる。


コメント:きゃー兵士長ー

コメント:今回はいるんだ


「好きな寿司ネタは特にはないんですが……あえて挙げるならエンガワですね」

「ああ。あれってエンガワって名前の魚ではないんですよね?」

「ヒラメの一部ですね」

「へー」


コメント:そうなんだ

コメント:カレイじゃないの?

コメント:脂っこくない?

コメント:安い店のはカラスガレイなんだよなあ……

コメント:にじみ出るエリート感よ


「はい、以上のいつものメンバーで進めてまいります!」

「代わり映えのない絵面ッスよねパイセン」

「うるさいよ、そのためのゲストだよ!」


コメント:草

コメント:いつもどおりぶっちゃけていくぅ

コメント:このメンバーでわちゃわちゃしてるのも好き

コメント:わかる


「はい、というわけで今日もゲストをお呼びしたいと思います! 小さいけれどビッグなゲスト! 北方少女モチさんです!」

「ズトラーストヴィチェ」


 もこもこのダッフルコートを着た銀髪の少女が、片手を上げる。


「北方少女モチです」


コメント:モチちゃん!!!

コメント:うおおおおおおおおお

コメント:かわいい

コメント:四天王キターー!


「好きな寿司ネタは、ハンバーグ」

「はいかわいい!」


コメント:解釈一致

コメント:今日からハンバーグの寿司許すわ……

コメント:マヨ載ってるのが許せない

コメント:マヨおいしいだろ!

コメント:肉と米でうまくないわけがないんだよなあ


「いやー、出演ありがとうございます!」

「出たかった」

「めちゃくちゃ嬉しいお言葉です!」


 ヨウセイはペコペコと頭を下げる。


「この番組は、ゲストの願いを叶えると聞いた」

「『ゲストのお願い叶えよう』のコーナーですね!」

「叶えてもらいに来た」

「なるほどねハッキリだな!? いや、いいんです! この番組はおもてなしの心なんで! さっそく伺いましょう、北方少女モチさんのお願いとは!?」

「戦いにきた」


 モチは、じっとカメラを見つめる。


「――トーカと」

「えっ?」


コメント:!?

コメント:えっ

コメント:まさか?

コメント:来るの!?!!??

コメント:兵士長?


「なるほどね! ではそのお願い、叶えましょう!」

「えっ、えええ!? は!?」

「本日のゲスト、二人目! 二回目のご登場です、彩羽根トーカさん!」

「こんにちは、人類」


 頭の後ろに赤い大きなリボンを下げた少女が、ひょいっと入ってくる。


「彩羽根トーカです」


コメント:こんにちは!

コメント:こんにちは!!!

コメント:ありがとうございます!

コメント:マジかよwwwww


「好きな寿司ネタは、モデリングが簡単なタマゴです!」

「あああああ!? あ、ああ……!」

「トーカさん!」

「my goddess!」


コメント:草

コメント:騒がしいwwww

コメント:兵士長……?


「トーカさん、ありがとうございます!」

「いえいえ! 前回も言いましたけど、私、Vバラ毎週見てますから! それにモチちゃんのご指名とあればね、来ないわけには行きませんよ!」

「モチのおかげ」

「いやマジで感謝です!」


コメント:ありがてぇ……

コメント:ありがてぇてぇ

コメント:マジで見てるんだな

コメント:モチトカ好き


「さあどうよ、今日のゲストは!」

「素晴らしい、そして美しいデスね。この二人を知らないVtuberなぞいないでショウ」

「オラたちからしたら、きっかけをあてぇてくれた人でもあるしな! モチさんも、こうして会えるとは思わなかったぞ!」

「そうでしょうそうでしょう!」

「パイセンがドヤることじゃないんじゃないスか?」

「うるさいよドヤっていいだろこれは! ところでトッポリさん、トーカさんはタマゴが好きらしいけど?」

「オラと一緒だな! オラもタマゴの寿司でえ好きだ!」

「トラウマ克服早いな!?」


コメント:みんなテンション高くて草

コメント:いつも以上の盛り上がりwww

コメント:トッポリwwwwwwww

コメント:高速手の平返しを見た

コメント:こいつらホント

コメント:モデリングが楽だから好きは草


「さあどうですか、アサカラ兵士長。前回は惜しくもスケジュールが合わずに共演叶わなかったわけですが、あまりにもね、兵士長が不憫だというコメントが多かったので! なんとか機会を用意できないかなーとは考えていたんですけどね、モチさんのおかげで! こうして実現したわけですが!」

「エッ、ア、ハイ」


 アサカラは棒立ちになる。


「あ、イヤ、光栄です……」

「どうした兵士長!?」

「え、いや、光栄なので……」


コメント:兵士長?

コメント:推しに会ったオタク

コメント:わかるわ……何も言えなくなる

コメント:この間あれほど会いたいってわめいてたのにwwwww


 ボソボソと喋るアサカラに、トーカは少し近づいて声をかける。


「今回が初めてのコラボですね! アサカラ兵士長、よろしくお願いします! 動画見てます! いちへーこくみんとしてこう栄です!」

「エッ! あ、あ、ハイ……恐縮です……」

「アサカラ兵士長は、ヨルニナルト・ヘガデル陛下の徴兵ちょうへいに応募されてデビューしたんですよね。あの面接動画、面白かったです!」

「ア……ア……」

「大丈夫か兵士長! いや大丈夫じゃないな!? すいません、トーカさん、後々で!」


コメント:兵士長?

コメント:動けwwwwwwww

コメント:草

コメント:トーカちゃんへーこく好きだなwwwww

コメント:あの面接動画からって古参じゃん

コメント:推しが自分の古参だった

コメント:こんなの混乱するわwwww


「はい、というわけでね! 今日のメインゲストはモチさんなので! さっそく企画に入っていきたいと思います! 『ゲストのお願い叶えよう』のコーナー!」


 ヨウセイがコールし、出演者が拍手をする。


「改めまして、モチさんのお願いとは!?」

「トーカと勝負して、勝つ」

「なるほど! 先日のゲーム3本勝負では惜しくも負けてしまいましたから、そのリベンジということですね!」


コメント:あったな

コメント:あれは惜しかった

コメント:神コラボだったな……


「あと少しだった。今日は、勝つ」

「負けませんよ、今日も!」

「はい、というわけで勝負の機会を用意させていただきました! さっそく移動しましょう!」


 画面が切り替わり、白い空間に一軒の寿司屋が建っている。その前に出演者が勢揃いしていた。


コメント:お、冒頭の場所?

コメント:なんで寿司屋なんだ


「はい、というわけでやってまいりました! 今日の舞台、『モチ寿司』です!」


コメント:モチ寿司

コメント:モチ寿司とは


「勝負していただく内容は、こちら! 『頑固職人vs通ぶる客! NGワードゲーム!』」


 拍手が鳴る中、ヨウセイは説明を続ける。


「えーゲーム内容の説明をします! これからモチさんには寿司屋の頑固職人になっていただきます。そしてチャレンジャーは通ぶった客になりきって、寿司屋で3つのミッションをこなしていただきます」


コメント:モチちゃんが頑固職人とな

コメント:似合う


「なおこの寿司屋には厳しいルールがありまして、NGワードが3つ設定されています。客はNGワードを避けてミッションを完遂すれば勝ち、職人はNGワードを客に言わせれば勝ちです」


コメント:なるほど

コメント:あーNGワードゲームか


「なおゲームの進行はケイにやってもらいます。ケイが『この客、通っぽくないな』と判断しても客は負けです!」

「うーい、判定しまーす。NGワードの指定も俺でーす。どっちも条件達成できなかったら引き分けってことで」

「あれ? ケイさんが進行ということは?」

「やっぱりですね、トーカさんにノーヒントで挑ませるわけにはいかないので! ここは自分が先鋒を努めて情報収集を!」


 ヨウセイがドンと胸を叩くと――


「えっ、ずるいぞ! それならオラが行く! オラの屍を越えてってけれ!」

「ヨウセイさんにいい恰好はさせられまセン。ここは私ガ!」

「え、いやいや!」


 トッポリ、ルグロズが割って入ってもめ始める。それを見て、ハッと気づいたアサカラが手を上げた。


「それなら俺がやりますよ!」


 その言葉を聞いて、三人は──


「………」


 誰一人として譲らなかった。


コメント:お前らwwwwwwww

コメント:どうぞどうぞ……じゃないだと?

コメント:ガチじゃんwwww

コメント:ガチで草

コメント:様式美こ わ れ る


「んじゃ、四人順番でやればいいんじゃないッスか?」

「モチは、構わない」


 呆れた感じでケイが提案し、モチが頷く。


「四人でヒントを集めて来てもらう感じッスかね」

「よーし、それで行きましょう! トーカさんの露払いは自分たちに任せてくださいよ!」

「期待してまーす」


 気合いを入れる四人に、トーカは小さく手を振る。


コメント:大丈夫か?

コメント:モチちゃん器がでかいな

コメント:バラエティに理解を示すモチちゃん


 場面が切り替わり、寿司屋セットの定点カメラになる。ワイプ画面にはケイの顔。


『というわけで、トーカちゃん大好きバカの四人が先にやるそーです。客側が達成するミッションはこちら』


[寿司を頼む] [寿司に関するウンチクを披露する] [会計を頼む]


『これは職人と客両方に伝えてありまーす。これをこなさないとアウトってことで』


コメント:大好きバカwwwwwwww

コメント:正しい

コメント:なるほど


『んで、NGワードは職人側にだけ伝えてて、オレが決めたのね。コレでーす』


[大将、やってる?] [ツーン(ツン)] [スタバ]


『若干の口調の違いは含める感じで。んで、先にやる四人は情報共有なし。NGワードをそのままトーカちゃんに伝えるのはアウトで、それとなくヒントを出してもらうってことで』


コメント:スタバ

コメント:なんだよコレw

コメント:ケイくんの謎チョイス

コメント:どうやったらスタバなんて言うんだよwwww


『ということで、無駄に盛り上がってたくじ引きで決まった結果、最初はオークッスね』

「HAHAHA! すべてのNGワードを探り出してみせマスよ!」


 オークが寿司屋の前に立つ。テロップで、ケイの言葉がゲーム参加者には聞こえていないことが補足された。


「ワタシ、寿司は結構通ってマスからね。作法は完璧デスよ」

『さっそく通ぶってるわけね』

「イザ!」


 オークは動かないのれんをかき分ける仕草をして店内に入る。


「大将、やってマスか?」

「やってる」


 カウンターの中にいたモチが振り返り──


 バン! ――銃声。ルグロズが倒れる。


「それは、言ってはいけない言葉」

『はい終了ー。NGワード踏むと撃たれまーす』


コメント:オークwwwwwwww

コメント:即死で草

コメント:ヒェ

コメント:モチちゃんに撃たれたい


『つか、「大将」と「やってる」を連続で含まないとダメってことにしてるんスけどね、まさか一発とは』


コメント:まあありがちなセリフだし

コメント:まさか初手からとはねぇ


 場面が切り替わり、トッポリが寿司屋の前に立つ。


「ルグロズがすぐにけえってきてびっくりしたぞ! オラ緊張してきた!」

『まあさすがにオークよりは行くでしょ』


 トッポリは窮屈そうにかがんで──それでもなお暖簾どころか扉周辺の壁を貫通して店内に入る。


「オッス! 大将、やってっか!」

「やってる」


 バン!


コメント:草

コメント:どうして

コメント:トッポリ?


 場面が切り替わり、アサカラが寿司屋の前に立つ。


「え、出番が回ってくるの早すぎじゃないですか?」

『そッスねー』

「ええ、なんだ……? そんなに序盤にNGワードが……?」

『お、考えてる』

「……トーカさんのためにも、なるべく有益な情報を、と、トーカさんのためにも」

『うん?』


 アサカラは──胸に手を当てて呟く。


「……やばいすごい緊張する……話せるのか、俺……?」

『ソルジャー、早く行ってくれないッスかね?』

「あ、や、待たせたらいけない!」


 アサカラは慌てて寿司屋の中に扉を貫通して入る。


「あ、えっと」


 モチはカウンターの向こうで背を向けたまま動かない。


「あれ? あのー……」

「………」

「……あの、大将、やってます?」

「やってる」


 バン!


コメント:兵士長……

コメント:警戒してたのに

コメント:トーカのこと考えて全部飛んだなw


 場面が切り替わり、ヨウセイが寿司屋の前に立つ。


「意外と順番回るの早かったな!?」

『ッスねー……』

「ま、ここは自分がね、有益な情報を引き出してトーカさんのアシストをね!」

『早く行ってくださいよパイセーン』

「よし、行きます!」


 ヨウセイが寿司屋の中に入っていくところが外から映され──その画面のまま──


 バン!


コメント:はい

コメント:見えてる地雷すぎる

コメント:的確に足元に置かれた地雷

コメント:バラエティ的にはあかんやろwwwwwww


 場面が切り替わり、落ち込む四人とケイ、トーカが並ぶ。


「つーことで、前座がNGワード踏んで帰ってきました」

「お疲れ様です! なんか、早かった……ですね?」

「ええ……はい……」


 力なくヨウセイが応える。


「いやでも、あれは想像つかないって!」

「そうデスよ! ケイサンは情緒というモノをわかっていマセン!」

「オレに責任転嫁しないでもらえますパイセン?」

「オラ……オラは役立たず……食肉にすらならねぇ……」

「あぁ……」

「こっちはこっちで湿っぽすぎない!? いいからヒント出して先に進めてくれる?」

「そ、そうだな!」


 ヨウセイはなんとか顔を上げる。


「えっとですね、トーカさん」

「これ、みなさんすぐにNGワードを踏んだ感じですか?」

「アッハイ、そうです」

「なるほど……」


 トーカは腕を組んで頷く。


「なんとなく、最初のNGワードはわかりましたよ!」

「エッ」

「みなさんのおかげです! それじゃあ、チャレンジしてきますね!」

「アッ、ハイ」


コメント:はい……

コメント:ヨウセイ……

コメント:兵士長頭抱えてて草

コメント:トーカちゃん優しい

コメント:がんばれー!


 場面が切り替わり、トーカだけが寿司屋の前に立つ。残りのメンバーは全てワイプ出演になった。


「はい、というわけで人類! やってきましたよ、モチ寿司に!」

『はー、かわいい』

『パイセン、気持ち悪いんスけど』

『かわいいものはかわいいだろ!?』

『わかっぞ!』


コメント:草

コメント:かっぞ!

コメント:トーカちゃんはかわいいんだ


「みなさん脱落が早かったので、たぶん序盤の定番のセリフにNGワードがあると思うんですよね。『やってる?』とか『握って』とか、その辺かな……と」

『お、鋭いッスね。誰かと違って』

『うるさいよ!』

『HAHAHA!』

「ということで、そこらへんは避けて行ってみようと思います!」


 トーカはカメラに向かってこぶしを握ると、勢いよく扉を貫通して中に入っていく。


コメント:いや草

コメント:開けろよwwwwwwww

コメント:このアセットちゃんとドア開くぞ


「こんにちは!」

「………」

「ここ座っていいですか? よいしょ」


 モチはカウンターの中で背を向けている。トーカは返事を待たずに椅子に座った。


「何頼もうかな~。私、そもそもちゃんとしたお寿司屋さんって今日が初めてなんですよね。回転寿司とかも行ってみたいんですけど」


『パイセンより貧乏なんスかね?』

『そういうことじゃないでしょうが!』

『HAHAHA! バーチャルに寿司屋ができたのは初めてということデスね』


コメント:はい回避

コメント:そうなるよなあ……

コメント:このアセット最近のだもんな

コメント:トーカちゃんを寿司屋に連れていきたい


「まあね、知ってますよ人類。通ってのは、まずお店を見極めるんですよね。すいませーん、オススメのコースでお願いします!」


『いやコースて、フレンチじゃないんスから』

『かわいいだろ!?』

『えぇ……』

『どうデス、兵士長?』

『え、かわいい……んんッ。そうですね、「お好み」もNGワードじゃないかと思って避けたんじゃないですか』

『通じゃねえけど、通ぶってる感じはすっぞ!』


コメント:なるほどね

コメント:うまい

コメント:たしかにぶってる感じだわ


「わかった」


 モチは小さく頷くと、カウンターの中でちょこまかと動く。


コメント:かわいい

コメント:なにこのかわいい生き物

コメント:銃なんかもったこともないんやろなあ(棒)


『さて、この寿司屋アセットの中には寿司ネタも用意してありますが、何を出してくるのか』


「ヘイ。お待ち」


 モチは板に白、赤、黄色のネタの寿司を載せてトーカの前に置く。


『あの板ってなんなんスか、ソルジャー?』

『ああ、あれはゲタですね』

『あー、確かに下駄に見えますね』


「わー、来た来た。職人さん、これは何のお寿司ですか?」

「これは」


 モチは指で示しながら言う。


「はんぺん、かまぼこ、だてまき」


『全部すり身!』


コメント:草

コメント:えぇ

コメント:寿司……?

コメント:伊達巻すき


『え、すり身? 伊達巻って卵ッスよね?』

『あれ、かまぼこの一種じゃないっけ?』

『どうなんデス、兵士長?』

『魚とか海老のすり身と卵を使った料理ですよ。って、なんで俺に聞くの?』


「へー、おいしそう!」

「ステイ」


 ビッ、とモチは手を突き出してトーカの動きを止める。


「ウチの店では、食べ方に決まりがある」


 そう言ってモチはカウンターの中から──


「これをつけて食べる」


 桶に山盛りになったワサビを出す。


コメント:でけえwwwwwwww

コメント:桶ごと!?

コメント:見るだけで目が痛い


「これを。たくさん塗って食べる」


『あー、仕掛けに行ったスね』

『NGワードなんだっけ? あー、ツーンって言わせたいのか』

『ツーンとしてるトーカさん、ポイント高いデスよ!』


コメント:わかる

コメント:ワサビで悶えるトーカちゃん……いいね!


「なるほど! じゃあいただきます!」


 トーカは寿司を持つと、ズボッとワサビの山に突っ込んでから口元に持っていく。


コメント:!?

コメント:ひえ

コメント:勢いよwwww


「うん、うん! おいしい! 抹茶の風味がいいですね!」


コメント:抹茶?

コメント:あー

コメント:なるほど

コメント:ナイス回避


「……そう」


『あーっと! しかしトーカさん華麗に回避!』

『ワサビって言わなかったもんな! さすがトーカさんだ!』

『あんな抹茶の山もどうかと思うんスけど』


「いやー、寿司と言えばやっぱり抹茶ですよね。これをつけると渋さのあまり顔をギュッとしちゃうので、寿司で『ウメボシ』と言ったら抹茶ですからね!」


『おっと、ウンチクのお題を消化しに行った!』

『Chaosデスね。HAHAHA!』


コメント:カオスwwwwww

コメント:いいのかよ

コメント:ぶってる人のウンチクだからいいんじゃね?


「いやー、三つも食べたらお腹いっぱいになっちゃいました。職人さん、ウメボシ湯お願いします!」


『ウメボシ湯……?』

『アガリ、お茶、この辺をNGワードとみている?』


「……わかった」


 モチはカウンターの中でゴソゴソと動き──


「お待ち」


 スッ、とトーカの目の前に置いたのは──コーヒー店で出てくるようなカップ。


「ソイ抹茶クリームフラペチーノ、ライトアイスエクストラホイップチョコレートソース」

「ス──」


 トーカは──


「──……ッばらしい! お会計の前と言えばコレですよね!」


コメント:スタバじゃねーか!

コメント:スタバの呪文で草

コメント:寿司屋で出すもんじゃないwwwwwwwww

コメント:そして回避

コメント:ツッコミの途中で気づいたか

コメント:さすがトーカ


「うん、おいしい!」


 勢いよくカップを傾けて飲み干す仕草をし、にこりと笑う。


「それじゃ、お会計はカードで!」


 カンカンカン! とゴングが鳴り、『終了』というテロップと共に画面が切り替わる。


コメント:888888888

コメント:乙

コメント:いい試合だった

コメント:モチちゃん惜しかったな


「はい、というわけで結果は!」


 全員が横並びになった画面で、ヨウセイが声を張る。


「3種類すべてのミッションをこなし、見事NGワードを回避した、彩羽根トーカさんの勝利です!」

「やりましたー!」

「惜しかった」


 拍手の中、トーカがバンザイをし、モチは胸の前で手を握って呟く。


「いやー、神回避でしたね。モチさんの仕掛けもよかったんですが、トーカさん、NGワードには見当がつきましたか?」

「たぶん一つは『スタバ』ですよね」


コメント:正解

コメント:まあわかりやすかったかも

コメント:無理矢理言わせに行くしかないでしょあんなのw


「あとは……なんだろう? ワサビ推しだったので『ワサビ』とか『ナミダ』かなって思いましたけど」

「いいところ行ってます! 『ツーン』がNGワードでした」

「ああ~、なるほど。それであんなに大量だったんだ」


コメント:あれは笑った

コメント:マウント・ワサビ

コメント:あー、ナミダも想定できるな


「えーと、それじゃ残り一つのNGワードはなんだったんですか?」

「『大将、やってる?』でしたね」

「え……全員、それでアウトに?」


 トーカが問うと四人は顔を見合わせ──各々崩れ落ちた。


「……あ、なんかその、すいません……」


コメント:草

コメント:ええんやで

コメント:トーカちゃんは悪くない

コメント:ポンコツトーカファンが悪い


「えー、はい、というわけで」


 エンディングテーマが流れる中、ヨロヨロ、とヨウセイは立ち上がる。


「今週のVバラは以上です! ゲストに来ていただいた北方少女モチさん、彩羽根トーカさん、ありがとうございます!」

「あっ、ありがとうございました!」

「いい企画だった」

「ありがとうございます!」


 モチが親指を立て、ヨウセイは深々と礼をする。


「それでは、また来週お会いしましょう! さよーならー!」


コメント:ED曲好き

コメント:おつおつ

コメント:面白かった!

コメント:兵士長ドンマイ……

コメント:神コラボ

コメント:モチトカてぇてぇなあ!

コメント:Vバラ大きくなってきて嬉しい

コメント:トーカちゃんと寿司デートさせろおおお!

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