【生放送ちゃいむ!】ゲストを呼んであの企画をやります!【告知もあるかも?】

上位チャット:待機

上位チャット:コラボ楽しみ

上位チャット:初コラボ配信と聞いて

上位チャット:自分のチャンネルでは初か

上位チャット:ゲスト誰かな

上位チャット:待機

上位チャット:ちゃいむちゃん頑張って……!

上位チャット:キター!


「雨粒のみんな、お待たせ~」


 白い空間に、黒髪ロングに制服の女子高生が、雨粒をモチーフにしたヘアピンを光らせ、小さく手を振って呼びかける。


「ぴーす! 雨天乃ちゃいむです」


上位チャット:ぴーす!

上位チャット:今北

上位チャット:かわいい


「今日は、ゲストをお呼びしてます。はい拍手、ぱちぱちぱち。ねえ、でも、ほんとすごいの、誰だと思う?」


上位チャット:誰だろ

上位チャット:88888888

上位チャット:帝都組?

上位チャット:ありそう

上位チャット:たぬ姫ちゃんとか?

上位チャット:トーカ

上位チャット:ミサギちゃん

上位チャット:ぽちゃおじ


「うん、うん……あっ、正解いたかも? それじゃあ待ってもらっちゃってるし、呼ぼうね」


 ちゃいむはぴょん、と脇に跳んでスペースを作る。


「まずは一人目、北方少女モチちゃんでーす」

「ズドラーストヴィチェ」


 もこもこのダッフルコートを着た銀髪の小さな少女が手をあげる。


「北方少女モチです」


上位チャット:マジ!?

上位チャット:うおおおおおお!

上位チャット:モチ!?

上位チャット:大物じゃん

上位チャット:すげえ


「わーい、かわいい~!」

「ありがとう。ちゃいむも、かわいい」

「へへー」


上位チャット:おまかわ

上位チャット:えーすごい

上位チャット:この間のカラオケのおかげか


「はい、そしてもう一人、彩羽根トーカちゃんです!」

「こんにちは、人類」


 大きな赤いリボンを頭の後ろに下げた少女。


「彩羽根トーカです」


上位チャット:!?!?!?

上位チャット:うおおおお

上位チャット:こんにちは!

上位チャット:えええええええ

上位チャット:魔王と四天王だ

上位チャット:まさか来てくれるとはwwww

上位チャット:はえー


「ちゃいむちゃん、今日は呼んでくれてありがとう!」

「いえいえ、こちらこそ。この間遊ぼうって言ったら、いいよって言ってくれたから」


上位チャット:社交辞令かと思ってたw

上位チャット:トーカだぞ本気に決まってるだろ

上位チャット:バーチャルカラオケよかったよな

上位チャット:余所行きちゃいむだったやつなw

上位チャット:初めてのコラボのホストでこの二人は熱い……!

上位チャット:あのテンションのちゃいむも好き


「どう、どうかな雨粒のみんな? 喜んでもらえた? よかった~」

「はい、はい! 私も喜んでます!」

「ほんと? やったぜー」


上位チャット:うれしい

上位チャット:おめでとう!

上位チャット:ちゃいむも大きくなったな……

上位チャット:トーカwwww

上位チャット:雨粒です! って挨拶してたなそういやw


「あ、はい。えっと、今日はこの三人で、バーチャルラウンジを使って遊びたいと思います」

「バーチャルラウンジは無料!」

「無料だー」


上位チャット:バーチャルラウンジは無料!

上位チャット:こんなことができて無料でいいんですか!

上位チャット:露骨な宣伝乙

上位チャット:いいなあ


「そッ、それでちゃいむちゃん。今日はどんな遊びですか?」

「はい。今日は、この間やって楽しかった企画をみんなでやりたいなって思います」


 若干声が上ずっているトーカが問うと、ちゃいむは両手をグーにして答える。


「その名も~、箱の中身で即興プレゼン選手権~」


 ちゃいむの声に合わせてロゴが表示され、トーカとモチが拍手をした。


上位チャット:出た

上位チャット:あったあった

上位チャット:あれかwwww

上位チャット:スタッフが本気を出したやつ

上位チャット:中身がことごとくおかしかったアレか……


「はい。これからひとりずつ、ある『新商品』についてプレゼンしてもらいます。その商品はこの箱の中に入ってます。ですが、箱の中身は、新商品のジャンルを発表するまでは見ることができません」

「なるほど! ジャンルに合わせてアイテムについての説明をでっちあげる感じですね!」

「そうそう。さすがトーカちゃん」

「もちろん見てますからね、動画!」

「えっ、えー、うれしい、ありがとう……!」


上位チャット:さすがトーカ

上位チャット:でしょうね

上位チャット:これは雨粒だわ


「じゃあ、見てくれてるってことで、説明は大丈夫ですね。くじ引きで順番を決めましょー」


 少女くじ引き中、という字幕と共にくじ引きの様子がほのぼのと流れる。


「それじゃあ最初の人はー」

「はい、私です!」

「トーカちゃんでーす」

「モチは、二番手」

「そしてわたしが最後です。3人のプレゼンが終わった後、誰が一番よかったか雨粒のみんなにコメントで投票してもらいます。目指せ、優勝ー!」

「トーカには負けない」

「お、おおっ、モチちゃん、私も負けませんよ!」


 モチがふんっと気合いを入れる様子に、トーカが挙動不審になりながら合いの手を入れる。


上位チャット:かわいい

上位チャット:これがかわいいムーブか……

上位チャット:トーカの動き草

上位チャット:尊い……


「気合いが入りますね! ちなみにちゃいむちゃん、優勝すると? なんと!?」

「はい、告知タイムがもらえるそうでーす」

「なるほど! 生放送のオチはいただいちゃいますよ、雨粒の皆さん!」

「負けない」

「それじゃ一旦お待ちくださーい」


 準備中の画面に切り替わる。


上位チャット:はーい

上位チャット:いってら

上位チャット:セットの準備か

上位チャット:いやー楽しみだわ

上位チャット:ちゃいむちゃんなんか告知することあったっけ?

上位チャット:きた


 準備中の画面が切り替わると、机に置かれた大きな黒い箱を前にしてトーカが立っていた。


「それでは、さっそくはじめましょう。トーカちゃんからプレゼン開始でーす」

「はい」


上位チャット:でたブラックボックス

上位チャット:スタッフが何を入れたのか……

上位チャット:ジャンル決めがすべて


「こんにちは、人類。彩羽根トーカです。今日、私が人類に紹介する新商品は『最新のPC周辺機器』になります」


 トーカはにこやかにセールストークを始める。


上位チャット:ほう

上位チャット:PCパーツか

上位チャット:いけそう


「PC周辺機器はね、日々新しいものが出ています。いいパーツをつけてPCの性能アップ! したいですよね。さあ、そんな人類の欲望を満たしてくれる新商品がこの──」


 トーカが黒い箱に手を突っ込み、引き抜くと──


「……この」


 その手に持っていたのは。


「……イソ……ギンチャク……?」

「んっ」


 脇で聞いていたちゃいむが、腹を押さえて笑いをこらえる。


上位チャット:これはwwwwww

上位チャット:草

上位チャット:うそやろ

上位チャット:何を考えて商品縛りでイソギンチャクなんだよwwwww

上位チャット:どうすんだよこれ


 しばし触手をピロピロさせるイソギンチャクを見て、トーカは──にこりと笑顔を画面に向けた。


「そう、イソギンチャク型生体水冷CPUクーラーです」


上位チャット:!?

上位チャット:???

上位チャット:ん?


「最近のPCでは、CPUを冷やすクーラーは空冷だけじゃなく簡易水冷、本格水冷なんかもありますが、これからは生体水冷の時代です! このイソギンチャクをCPUに直接貼り付け、触手から排熱するという、生物由来の熱交換システムでCPUをガンガン冷やします!」


 イソギンチャクを振り回して熱弁するうちに、なぜかそれが黄色く発光し始める。


「そう! しかも見てください、光るんです! ゲーミングPCといえば光って目立ってよその子と差をつけてナンボ! エントリーモデルでは一色、ハイエンドモデルでは七色に光りますよ!」


上位チャット:ゲーミングイソギンチャクwwww

上位チャット:生体水冷……?

上位チャット:いやだよこんなのPCの中にいたらwwwww

上位チャット:イソギンチャク生える

上位チャット:海没PCの研究の記事思い出したわ


「この新商品、きっと人類のPCを強化してくれますよ! ぜひ投票を! ……以上です!」


 トーカがプレゼンを終えると、拍手をしながらちゃいむが近づいていく。


「ありがとうございました! すごかった、ねえ、みんな。みんな、クーラーがパソコンについてるなんて知らなかったでしょ」

「え? あ、うん……」


上位チャット:うん……うん?

上位チャット:お、おう

上位チャット:ぶっちゃけ何の話かはわからなかった笑

上位チャット:トーカwwww


「それじゃあ、次はモチちゃんでーす」

「やる」


 呼ばれ、モチは机の裏に回り──全身が見えなくなる。


上位チャット:あっ

上位チャット:モチちゃんちっちゃい


「モチちゃん、踏み台踏み台」

「ありがと」


 トーカが横から入っていき、ゴソゴソとやると、モチの上半身がひょこっと机の上に出てきた。


上位チャット:かわいい

上位チャット:はー尊い

上位チャット:何今のやり取り

上位チャット:いい……


「モチが、今日プレゼンする新商品は」


 モチはふわふわと手を動かしながら──


「最新の、暗殺道具」


 物騒なことを言った。


上位チャット:えぇ

上位チャット:!?

上位チャット:モチちゃん!?

上位チャット:かわいいムーブで言うことじゃないwwwww

上位チャット:さすがFPS猛者

上位チャット:アサシンは草


「暗殺は、イタチごっこ。常に新しい手法と対策が求められる。モチがおすすめする最新の暗殺道具は──」


 モチは黒い箱に手を突っ込む。


「ア゛ーーーー」

「!?」


 手を引っ込める。


上位チャット:!?

上位チャット:なんだ?

上位チャット:草

上位チャット:鳴き声?

上位チャット:かわいい


「………」


 手を突っ込む。


「ア゛ーーーー」

「!?」


 手を引っ込める。しばらく悩みながら、再び箱に手を突っ込み、間の抜けた騒音と共に引っ張り出したのは──


「これが……最新の暗殺道具」


 細長い黄色い、大口を開けたポリ塩化ビニル製のニワトリだった。


上位チャット:びっくりチキンwwww

上位チャット:ニワトリのオモチャじゃんwwww

上位チャット:シャウティングチキンじゃん

上位チャット:ラバーチキンだ

上位チャット:これが最新の暗殺道具……


 モチは、静かに前を見つめる。


「これは……こうして」

「ア゛ーーーー」

「首を絞めるのに、使う」

「ア゛ーーーー」

「見た目で油断させて、一気に行く」


 キュッ、と。


 モチは、ニワトリを首に当ててグリグリとする。


上位チャット:草

上位チャット:曲がんないぞこれwwwww

上位チャット:締まらないwww

上位チャット:音の鳴るギミックしか入ってねえ!


「……断末魔も、ごまかすことができる」

「ア゛ーーーー」

「これからの暗殺のトレンドは、あえて音を出してごまかす。最先端を分かっている人は、投票して」


上位チャット:なるほど?

上位チャット:苦しいwwwww

上位チャット:でもかわいいし

上位チャット:モチちゃんようがんばった


「はい、ありがとうございましたー。ね、すごい、つよい! 最強のアイテムかもしれないです? これならボスも一撃?」

「確実」


 モチはグッ、と親指を立てる。


上位チャット:かわいい

上位チャット:モチちゃんに締められたい

上位チャット:ボス……?


「さて、モチちゃんもすごいプレゼンでしたけど、ね。わたし、コレね、必勝法を考えてきたんです!」

「おおー!」

「前の動画では、スタッフさんに散々やられたので。これなら絶対いけるって、自信あります!」

「いいですね! それでは、最後! 雨天乃ちゃいむちゃんお願いします!」

「はい!」


 ちゃいむは机の裏に立ち、黒い箱を前にしてコホンと咳払いする。


「わたしがみんなにプレゼンする新商品。そのジャンルは――最新の文房具!」


上位チャット:がんばれ!

上位チャット:おっ

上位チャット:いいね

上位チャット:よさそう


「ねー、何がきたって文房具なら大丈夫って寸法ですよ。なんだってあるもんねー、文房具屋さん」


上位チャット:確かに

上位チャット:幅広いよね

上位チャット:いいと思う

上位チャット:これは勝ったな!


「それじゃあ新商品を発表しましょう。よいしょ」


 ちゃいむが黒い箱から取り出したのは――


「え?」


 巨大な灰色の立方体。黒い箱から、その箱の体積以上のものがずるずると引き出される。


「え? え? 何これ、大きい! これ何!?」

「これは――」


 ついに、ちゃいむが掲げた手の上に、巨大な立方体が全容を現した。

 影の差す中、トーカは首を反らして見上げる。


「――ビル、ですね」


上位チャット:ビルじゃんwwwwwwwwww

上位チャット:でっかwwwww

上位チャット:でかくて草

上位チャット:どうやって入ってたんだよwwwww

上位チャット:これはバーチャルですわぁ……

上位チャット:これが文房具かあ


「ビル……!?」

「10階建てのオフィスビルっぽいですね」

「………」


 ちゃいむは、片手でビルを持ち上げながら、どこかそっぽを見つめた。そして、病んだ目をして、つぶやく。


「……ム」

「ん?」

「これは……最新の消しゴムなんです」


 ちゃいむは――ビルを振りかぶった。


「こうして振り下ろせば、何もかもなかったことにできる、すごい消しゴムなんだよ? ね、みんな?」


上位チャット:ヒッ

上位チャット:アッハイ

上位チャット:ヒェ

上位チャット:はい

上位チャット:消しゴムすごい!!!


 トーカとモチは必死に拍手を繰り返した。しばらくして、スタッフの操作によってか、ビルが虚空に消されていく。


「えー、はいっ! 以上、ちゃいむちゃんのプレゼンでした! いやー、すごい機転でしたね!」

「えー、それほどでもないですー」

「さっそくね、集計に移っていきましょう! あくまでプレゼン内容で勝負ですよ? 人類!」


上位チャット:そういえば投票するんだった

上位チャット:どうしようこれ

上位チャット:了解

上位チャット:これは決まりかなあ……


「はい、それじゃあ投票の画面になりまーす」


 投票を促す内容の書かれた準備中の画面になる。


上位チャット:1

上位チャット:これは3

上位チャット:3

上位チャット:笑ったので2

上位チャット:3かなぁ

上位チャット:1


 制限時間がきて『集計中』と書かれた画面になり、しばらく視聴者をやきもきさせた後──


「ぴーす! みんな、お待たせしましたー。結果発表でーす」


 画面が戻ると、ちゃいむ、トーカ、モチが横並びになっていた。


「なんとですね、すごく僅差だったそうです。みんなすごいねー」

「いやー、みんな良いプレゼンでしたからね!」

「でも、勝負は勝負」

「その通り! ちゃいむちゃん、発表お願いします!」

「はーい。それじゃ、パネルを出してくださーい。えいっ」


 結果の書かれたパネルが表示される。


「箱の中身で即興プレゼン選手権。優勝は、わたし! 雨天乃ちゃいむです。わー、ぱちぱちぱち」


 三人はにこやかに拍手をする。


上位チャット:888888888

上位チャット:よし!

上位チャット:惜しい

上位チャット:消しゴムは強かった

上位チャット:みんなよかった


「やっぱりみんな、消しゴム使われたいんですね」

「違うと思う」

「いやでも、ちゃいむちゃんに使ってもらえるなら……?」


上位チャット:トーカwwwww

上位チャット:煩悩を消してもらえw

上位チャット:魔王はさあ


「トーカ。それより、優勝賞品」

「そうでした! ちゃいむちゃん、告知をどうぞ!」

「あ、そうでした。勝ったもんねー。ねー。えっとー」


 ちゃいむは、カメラに向き直って笑顔になる。


「来月にライブをやります! やっと! ね、雨粒のみんなに会えるんだよ~」


上位チャット:!!!

上位チャット:マジで!?

上位チャット:うおおおおおおおおお!

上位チャット:ついにか!

上位チャット:トーカ叫んでてうるせえwwww


「詳細はスタッフさんが出してくれてるはずでー、ここ? ここかな? ね、よろしくねー」

「こっちにも! こっちにも映してください! スタッフさん!?」


上位チャット:トーカwwww

上位チャット:見えてないのかwwwww

上位チャット:今のうちにチケット申し込みに行こうぜ!

上位チャット:完売が早いかトーカが買えるのが早いか


「あっ、そろそろ時間? もう? 早いねー。えっと、トーカちゃん、モチちゃん、今日は来てくれてありがとう」

「いかないで!」


上位チャット:草

上位チャット:いかないで

上位チャット:お前が言うんかい!

上位チャット:トーカwwww

上位チャット:続けたいのかチケット買いたいのかどっちだよwwww


「えー、わたしもいきたくないー。また遊んでくれます?」

「アッ、オッ、も、もちろん!」

「勝ち逃げは許さない」

「やったー、やりましたよ、みんな。言質とーった」


上位チャット:はーかわいい

上位チャット:トーカwwwwwwwww

上位チャット:限界魔王

上位チャット:オタクさあ……

上位チャット:またコラボしてほしい

上位チャット:次あるんですか! やったー!

上位チャット:ちゃいむちゃん頑張ったな……

上位チャット:ちゃんと進行できてえらい


「それじゃ、次の生放送で待ち合わせしようねー。ゲストは北方少女モチちゃんと、彩羽根トーカちゃんでした。ばいばーい」

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