【コラボでドッキリ大成功?】新人Vtuberを生み出した結果【大惨事?】(後)
『イヌビス、イヌビス? できましたわよ?』
リリアが虚空に向かって呼びかける。
「おっと、向こうは完成したようだな。それでは、少し行ってくる」
「はい……」
「……まあ、こちらも予定通り全力でサポートする。そう心配するな」
上位チャット:男前
上位チャット:さすが社……イヌ!
カメラが切り替わり、トーカとリリアの方が大写しになる。そこへ入っていくイヌビス。
「できたようだな」
「自信ありですよ。ね、リリアちゃん」
「ええ。こんなVtuberがいたら驚きですわね」
「フン、そんなことを言っていられるのも今のうちだ。スタッフたちのリサーチ能力を舐めないでもらおう。それでは、二人はこのままこのスタジオで、次の企画に移ってくれ」
「次は何でしたっけ?」
「映画同時視聴ですわね。わたくし、トーカさんにオススメの映画を選んできたんですよ」
「リリアちゃんの解説付きで観れるとか楽しみですね!」
上位チャット:おお!
上位チャット:あーこの間のコラボ動画のやつ!
上位チャット:そうか、アレの裏で収録してたのか
カメラが切り替わり、デッサン人形とイヌビスが大写しになる。
「さて、同時視聴の収録をやっている間に──」
「え、めっちゃ見たいんですが……」
上位チャット:草
上位チャット:わかるwwww
上位チャット:アーカイブで我慢しろよw
「キサマの仕事は別にあるだろうが。さあ始めるぞ――仕込みの時間だ」
イヌビスはパチンと指を鳴らす。
上位チャット:はいキザ
上位チャット:これだからイヌは
「キサマの器、3Dアバターはすでに大方完成している。スタッフたちが二人の会話を聞きながら同時進行で作っていたからな」
「おお、なるほど。手際がいい」
「二人が作っていたものをそのまま使ってもいいのだが、それは流石にバレるからな。似たような感じのものを作らせた」
上位チャット:なるほどね
上位チャット:この短時間でアバターも作れるバーチャルラウンジ!(ダイマ)
上位チャット:なんと無料! プロ(ガブガブスタッフ)も使用!
「ここからのスケジュールだが、10分でキャラの肉付けの打ち合わせを行い、10分でアバターの手直し。10分で自己紹介動画の撮影をする。1時間で動画の編集、カモフラージュ用の他の動画のサムネイルを作成などの工作をしていくぞ。残り30分はバッファだな」
「編集の時間長いですね」
「そういうものだ、覚えておくといい。無論、スタッフは一人ではないからな、並行作業だ。二人をあざむくクオリティを目指すぞ」
「はい……が、頑張ります」
リリアとトーカが映画を見ている場面が少し映り、テロップが時間経過を告げる。
(テロップ:そして2時間後……!)
上位チャット:かわいい
上位チャット:さあどうなる
上位チャット:酒クズのお披露目だ!
リリアとトーカが白い空間に立つ。
「はい、映画もエンドロールまで観終わりましてちょうど2時間。イヌビスたちスタッフの調査時間終了ですわ」
「いやー、あっという間でしたね!」
「それではイヌビスを呼びましょう。ふふふ、きっと焦っているでしょうね」
「いやー、あれだけ強力なキャラ、さすがにそっくりさんもいないですよ」
上位チャット:いるんだなぁ(不正行為)
上位チャット:ドキドキ
少し場面が飛び、イヌビスがカメラに収まる。
「さあ調査が終わったと思いますが、いかがですか、イヌビス。自信のほどは?」
「フッ」
イヌビスはリーゼントを包帯でかきあげる。
「悪いがオレたちの勝ちだな」
「またまたぁ」
トーカは笑いながら手を振る。
上位チャット:余裕の笑み
上位チャット:トーカちゃん……
上位チャット:Vオタクの余裕
「1要素だけマッチしていた、なんてぐらいじゃ私たちの負けなんて認めませんからね? 勝敗判定は私たちの多数決なんでしょ?」
「笑っていられるのも今のうちだ。トーカ、キサマのオタク知識もまだまだだったようだな。負けを認めざるを得ないことを教えてやろう」
「はいはい、それではさっそくプレゼンしていただきましょうか?」
「フッ、いいだろう」
余裕をみせる二人を前にして、イヌビスはプレゼン用のウィンドウを呼び出す。位置を調整して立つ二人。
上位チャット:さあどうなる
上位チャット:貧乏ちゃん……!
上位チャット:落選男の器は……!
「それでは発表させていただこう。キサマらの作り上げた架空Vtuberをもとにスタッフがリサーチをした結果、完璧にそれっぽいVtuberを発見した。それが――これだ!」
パッ、とウィンドウに画像が表示される。ある少女のバストアップ画像。
「えっ」
「あら?」
ボリュームのある髪は金と黒の二色のメッシュ。透けるような白い肌。吊り目というよりは見開いて血走った瞳。よく見れば瞳孔は細長い猫型。左目はドクロマークのアイパッチで隠されている。頭にはなんだかカクカクした茶色いティアラ風の飾り。服は赤と黒を基調としたゴシック風の着物。
上位チャット:おお?
上位チャット:いいじゃん!
上位チャット:目が怖い
上位チャット:眼帯どっからきたwwww
上位チャット:金と黒?
「あらあら、さっき作ったアバターとなかなか要素が似ていますわね。いかがですか、トーカさん?」
「え……いや、見たことな……ううん? あれ……?」
「え?」
「え、いや、うん……? いたかな……?」
(テロップ:自分の記憶を疑い始めるターゲット)
上位チャット:トーカちゃん?
上位チャット:目を覚ましてトーカ!
上位チャット:オタク、自分の知識に疑いを持つ
「このVtuberの名前だが」
バン、と字幕が表示される。
「
「は!?」
「ええ!?」
声を上げて驚く二人。
上位チャット:辺獄wwwwww
上位チャット:貧乏、りんぼう、リンボ、Limbo、辺獄ね。なるほど
上位チャット:シビアwww
上位チャット:草
「りんぼ……りんぼーしびあ……?」
「な、なんともわたくしと語感の似た方ですが……トーカさん、本当にご存知ない?」
「いやその……あ、もしかして準備中の子かな? 動画がまだならチェックから漏れても」
「活動開始は3ヶ月前」
「ハァ!?」
上位チャット:トーカwwww
上位チャット:挙動不審すぎるwwwwwww
上位チャット:3か月前とか盛りすぎだろwww
上位チャット:トーカなら動画投稿から1日やぞ
ウィンドウに辺獄シビアのTwitterが表示される。
『動画投稿完了。[動画リンク]#Byinrtはじめあむsた』
(テロップ:3ヶ月前に取得したアカウントで適当なURLで呟いておきました。今日アイコンとヘッダーを変更してご覧の通り)
上位チャット:これはwwwww
上位チャット:ヘッダーまで作ってあるwwww
上位チャット:手が込んでて草
上位チャット:これ本当にあるぞアカウントwwwww
「ええ、知らない! なんですか『ばいんると』って……あっ、キーボード一列ずれてる! タイポだよシビアちゃん!? Vtuberって直してよ!? 後半も誤字がひどい! 大事だよそこ、投稿しなおして!?」
「まさか、このせいでトーカさんのチェックをすり抜けて……?」
「うっ……まあ、動画一本だけとかだと、もしかしたら……」
「3ヶ月前から週1程度で動画を投稿している動画勢だな」
「嘘ォ!?」
上位チャット:トーカwwwwwwww
上位チャット:悲鳴wwwww
上位チャット:平常心を失うターゲット……!
YouTubeの辺獄シビアのチャンネルが映される。15本程度の動画のサムネイルが映っていた。
(テロップ:YouTubeアカウントも3ヶ月前に取得済み! その他諸々は画像の捏造です)
上位チャット:すげえwwww
上位チャット:ねつ造できるもんなの?
上位チャット:これはフォトショップしてるけどChromeならデベロッパーツールでいじれるし
上位チャット:このYouTubeアカウントもあるwwww
上位チャット:登録した
上位チャット:やべえ、けっこう見たいサムネ多いぞ
上位チャット:なんだよ高飛車の構えってwwwww
上位チャット:酒飲み雑談回多すぎない?wwwwww
「は!? 登録者数600人!?」
「新人としてはありそうな数字ですが……」
「いやいやいや、えぇ!? さすがにそれだけいたら気づいてるって! えぇ……どうして……?」
上位チャット:トーカがショック死しそう
上位チャット:2桁取れないとか憤死ものでしょうし
上位チャット:トーカちゃん震えてる
「動画のサムネイルを見ればある程度活動内容が察せるものだが、百聞は一見にしかずだ。さっそく自己紹介動画を再生させてもらおう」
混乱するトーカをよそに、イヌビスは手を動かして動画を再生する。
上位チャット:来たぞ
上位チャット:どうなった?
上位チャット:ドキドキ
はじめに映ったのは暗闇。でぇーんでぇーんという低い鐘のような音。奥から、一本のロウソクの明かりがゆらゆらと近づいてくる。
「えっ、ちょっ、ちょっと、ホラーですか!?」
上位チャット:リリアちゃんwwwww
上位チャット:ありがとうございます!
上位チャット:なにこの音wwwwww
ロウソクが近づくのをやめ、傾く……と、地面に青い炎が走った。ぐるぐると炎は地面に紋章を描くように巡り、やがて天井に吊るされた大きな青い提灯に明かりが灯される。
パッと全体が明るくなり現れるのは、奇妙なヘッドドレスをつけ金と黒の髪を背中で巨大なドリル巻きにした、ゴスロリ風着物の少女。
上位チャット:気合入りすぎwwwwww
上位チャット:背中にチョコクロワッサン背負ってんのかな?
上位チャット:怖い怖い
『辺獄からごきげんよう』
それは男の声で、目を見開いて血走らせながら言う。
『はじめまして。辺獄シビアわよ』
「「わよ!?」」
上位チャット:草
上位チャット:wwwwwwwwwwww
上位チャット:シビアわよ(男声)
上位チャット:バ美肉ありがてぇ!
上位チャット:そろって驚くのかわいい
『今日からYouTubeデビューしたわよ。よろしくわよ』
「声が男性ってことより言葉遣いが気になる……!」
「なんですかこの適当な口調は……」
上位チャット:そうかしら?
上位チャット:お嬢様らしくないわよ?
上位チャット:失礼しちゃうわよ
『ワテクシが住んでいる辺獄からお送りしているわよ』
上位チャット:ワテクシwwww
上位チャット:わてぇくしぇ
上位チャット:草
『ようやくこの辺獄にも回線が工事できたから、死者たちから聞いていたインターネットとかいうものにつないだわよ』
そう言ってシビアが手に取って見せるのは、固定電話の受話器が二つ向かい合うように固定されたもの。
上位チャット:???
上位チャット:こwwwwwれwwwはwwwwww
上位チャット:受話器?
上位チャット:何これ
上位チャット:音響カプラじゃねーか!
「……? なんです、あれ?」
「い、いにしえのインターネット接続方式、音響カプラ……実物は見たことありませんが……」
『速度は1ギガ出るそうわよ』
「出るかー!」
上位チャット:出ねえよ!
上位チャット:なんでや最終的には28.8Kbps出たんやで!
上位チャット:それ動画見れるの?
上位チャット:無理に決まってるだろ
上位チャット:トーカちゃん……?
上位チャット:はいはいインターネット老人と昭和おばさんは帰って
『おかげでネットショッピングもはかどって』
シビアは後ろから段ボール箱を持ち上げて前に置き、中から4リットルサイズのペットボトルを取り出す。
『水も安く手に入るわよ。これがないと生きていけないわよ』
「酒ぇ! そのフォルムどう見てもアレぇ!」
上位チャット:wwwwwwwwww
上位チャット:腹痛い
上位チャット:草
上位チャット:俺とお前と草
上位チャット:でも中の人下戸だし実際水なんだろうなw
『趣味は紐なしバンジーわよ』
カメラが切り替わり、切り立った崖を遠くから映す。シビアがスッと足を踏み外して『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!』と汚い悲鳴を上げながら落ちていく。
上位チャット:な に こ れ
上位チャット:悲鳴が汚いwwww
上位チャット:趣味……趣味?
上位チャット:定期的に身投げをする辺獄の住民とは
カメラが戻り、シビアは真顔で頷く。
『一緒にやろうと誘うと、大抵の相手は逃げるのわよ。ちなみにワテクシは無傷わよ。辺獄生まれだから』
上位チャット:そうでしょうね
上位チャット:俺なら一緒に落ちてもいい!
上位チャット:落ちたな(俺が)
『特技……これから動画投稿するならゲーム実況とかするのわよ。ワテクシの得意な闇のゲームは』
シビアは頭の上に手をやる。カクカクした茶色いティアラに指を触れ──
『ドロー!』
バッ、と腕を振り切り、手に持ったものを見せつける。
『将棋わよ!』
「えぇぇ!?」
「嘘でしょう……?」
シビアの手にあったのは将棋の駒であった。
上位チャット:闇のwwwwwwゲームwwwww
上位チャット:駒ってドローするもんなんですか?????
上位チャット:草しか生えない
『視聴者からの挑戦も受け付けているわよ。今後を楽しみにしていることわよ』
「フッ。どうだ? 認めざるを得ないだろう?」
「ど、どうしましょうトーカさん。ここまで一致していると……い、嫌ですよわたくし、ホラーなんて!?」
「うッ! うううッ……」
上位チャット:トーカちゃん……
上位チャット:めっちゃ震えていて草
上位チャット:トーカのプライド、折れる!
『最後に、ワテクシの目標についてお話しするわよ。それは、あるVtuberにワテクシこそ本物のお嬢様と認めさせることわよ』
「は!?」
「えっ、そこまで!? ヒィィ!」
上位チャット:悲鳴wwww
上位チャット:Vのオタクが負けるときはこんな声を出すのかwwww
『その相手は』
ぐりっ、とカメラがシビアを中心に横回転し──「まじっくみらー」と書かれた枠の後ろで、並んで座って映画を鑑賞している二人。
「ええええええ!?」
「はい!?」
リリアとトーカの姿を映す。
『神望リリア! 首を洗って待ってるわよ!』
動画終了。
上位チャット:wwwwwwwww
上位チャット:はい
上位チャット:草
上位チャット:いやそっちが待ってるのかよwwww
上位チャット:うまいネタバラシだなwwwwwww
「は、えぇ!? こ、これって、え?」
「イヌビス!?」
「フッ。ハッハッハッハ!」
イヌビスは高笑いをし──宣言する。
「まんまと騙されたな。日本のバラエティだとこんな時こう言うのだろう。ドッキリ大成功! とな!」
ハッハッハ、とイヌビスは笑い続ける。笑い続け……笑い続けて。
「……な、なんだ?」
無言で詰め寄るリリアとトーカに、動揺する。
上位チャット:あっ
上位チャット:敬礼
上位チャット:イヌ……骨は拾ってやるぞ
「ふぅん……ドッキリ? へぇ?」
「そ……そうだが?」
「いろいろ言いたいことはありますが、まず──」
リリアは笑顔を張り付けて言う。
「仕掛け人のシビアさんを呼んできなさい」
「……わ、わかった」
上位チャット:怖い
上位チャット:ヒェ
(テロップ:ネタバラシタイム。説明中……)
テロップが消えると、リリア、イヌビス、トーカ、そして辺獄シビアがそろった場面になる。
「はいっ! というわけで今回の企画は!」
「わたくし、神望リリアと」
「彩羽根トーカ! そして謎の新人バーチャルYouTuber!」
「辺獄からごきげんよう」
金髪ドリルを振り、眼帯に手を当てて名乗る。
「辺獄シビアわよ」
上位チャット:やったっっっ!
上位チャット:やりきったのすごいwwww
上位チャット:本人の前でwwww
上位チャット:推しとコラボとか夢のようだな(なお状況)
「いやー! いいですね、シビアちゃん! これね、すっごいですよ皆さん」
トーカはニコニコしながらシビアの周りをチェックする。
「この和ゴスはマーケットで売ってるんですけど、テクスチャは新しく描いてますし。何よりこの将棋の駒ティアラですよ! この短時間によくギミックまで仕込んだなって! スタッフさん、すごい!」
「ええ、自慢のスタッフたちですわ」
上位チャット:確かにすごい
上位チャット:あ、有料アイテムのやつか
上位チャット:ティアラほしい
「シビアちゃんはVtuberになりたい人なんですよね?」
「そうわよ」
「ふふっ、生そうわよだ! いいなあ、面白い! これはね、これからの活動が楽しみですよね、リリアちゃん!」
「ええ、そうですわね」
「えっ」
ニコニコするリリアとトーカを前に、シビアはうろたえる。
上位チャット:おっ
上位チャット:ん?
「えっ、いや、今日の企画だけって」
「それで満足できるんですか?」
トーカはずいとシビアに詰め寄り、指を突きつける。
「なったんですよ、Vtuberに。私とリリアちゃん、そしてスタッフのみなさんの力をもって。いわば私たちは産みの親です! 親の私たちが認めましょう。シビアちゃんはVtuberを続けてよろしい!」
「で、でも、これはドッキリ企画で」
「ここで消えたら泣くファンがいるぞ!」
「えっ、誰」
「私だ!」
トーカは、ドンと胸を叩く。
上位チャット:トーカだ!
上位チャット:Vのオタク!
上位チャット:そうだぞ!
上位チャット:俺もいるぞ!
「辺獄シビアちゃんのファン第一号は私だッ! チャンネル登録Twitterフォローします! 推しです! いかないで!」
「えっえっ」
上位チャット:いかないで
上位チャット:続けて
上位チャット:いかないでシビアちゃん
上位チャット:わよおじ推します
「もちろん、問題ありませんわよね、イヌビス?」
リリアは笑顔で問いかける。
「作った3Dモデルの権利は一切、シビアさんに譲渡するということで?」
「う……ム。まあ、いいだろう。ほとんどはバーチャルラウンジの機能で作れるものだ」
「もちろん投げっぱなしにすることなく、シビアさんが自分で活動できるようにサポートもしますわよね?」
「い、いいだろう」
「ですって、シビアちゃん!」
トーカはシビアのバーチャルな手を取る。
上位チャット:アッアッ
上位チャット:てぇてぇ
上位チャット:これがオタクなんだよな……
「どうです!? もちろん、私たちが無茶苦茶言ったキャラ付けがイヤだとか、こんなの自分の器じゃない、っていうなら、それは仕方ありません。でも……」
「えっ、あっ、その……いや、じゃない、わよ。……やる、やらせていただくわよ」
「本当ですか! よかった!」
トーカは満面の笑みを浮かべる。
「これからの活動、応援してます!」
「あ、う……あ、ありがとう……わよ」
上位チャット:おめでとう!
上位チャット:Vtuberデビューおめでとうシビアちゃん!
上位チャット:チャンネル登録しました
「偽サムネイルにあった、『【将棋】これがワテクシの実力わよ! 高飛車の構えで連戦連勝!』ってやつ、本当に投稿するの期待してます!」
「えっ」
上位チャット:草
上位チャット:あっ
上位チャット:はい
シビアは固まり──手をうろうろと動かし──眼帯に手を当てるポーズをした。
「キッ、期待して待ってるのわよ」
「やった!」
「ふふふ。わたくしも期待していますね」
上位チャット:逃げられません
上位チャット:あのサムネ全部やってほしいなwwwww
上位チャット:当然だよなあ?
「さ、それではそろそろ結果発表といきましょう」
「結果発表?」
イヌビスが首をひねる。トーカは頷き、宣言した。
「さあというわけで! 『こんなVtuberがいてたまるか大作戦!』、勝者は!? リリア&トーカチーム! イエーイ!」
「なッ」
パチパチパチ、とリリアが拍手する中、イヌビスが慌てる。
上位チャット:イエーイ!
上位チャット:当然の結果
上位チャット:覚悟を決めろイヌ
「まッ、待て! これはドッキリ企画で──」
「えー、でもシビアちゃんは私たちが考えてた時にはまだ生まれてなかったわけで、私たちの勝ちですよね?」
「ええ、もちろんですわ、トーカさん。さあ──スタッフたち。お持ちなさい」
パン、パンとリリアが手を叩く。
(テロップ:スタッフにより運ばれてくる激辛カップ焼きそば)
「なッ、き、キサマら……」
「それではみなさま」
リリアはカメラに向かってほほ笑む。
「終了画面はイヌビスが激辛カップ焼きそばを食べている模様をお楽しみください。ごきげんよう」
上位チャット:ごきげんよう!
上位チャット:楽しかった
上位チャット:推しが増えたわ
上位チャット:いやー有意義な企画でしたね!
上位チャット:トーカちゃんもありがとう
上位チャット:シビアちゃん推します
終了画面に切り替わる。
(テロップ:音声のみでお楽しみください)
「なんだ色は普通ではないか」
「うむ……ウッ!?」
「いやいけるゥウッ、ガッ……ハッ、痛ッ……!?」
「アッッ……カッ……アァァァ……」
「……スンッ……クッ……ウォア……喉がッ……アァァ!」
「日本人はなんなんだ!!!!! ァッ! おのれぇぇぇ!」
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