【Vtuber実験バラエティショウ】Wゲスト登場!今回はお悩み相談回!【Vバラ#10】

彩羽根トーカさんがリツイート

九六曜星@Vバラ放送中! @hananuki-yousei - 10秒

 なんと! 今週のVバラは豪華ゲストをなんと2名も! お呼びしての放送となります! 欠席したアサカラ兵士長がめちゃくちゃ悔しがるあの人! そしてこのケモミミのシルエットは? 乞うご期待!



 ◇ ◇ ◇



「Vtuber実験バラエティショウ! 略して、Vバラー!」


 白Tシャツと藍色のジャージを着た男性アバターがタイトルコールし、一列に並んで座る三人の出演者が拍手と歓声をあげる。


コメント:888888

コメント:トーカから

コメント:トーカちゃんから

コメント:初見です

コメント:視聴者増えててビビる


「さー今週も始まりました、Vtuberを起用した実験的番組、Vバラ! 司会を務めさせていただくのは、九から飛んで六と書いて九六はなぬき曜星ヨウセイです、よろしくお願いします!」


 ぺこりと頭を下げるヨウセイの服には、よく見ると金曜日と書かれていた。


コメント:Tシャツカレンダーマン

コメント:ヨウセイくんがんばれー!

コメント:声うるさいな


「それではいつもの出演者の紹介です。自分から向かって左から、今日は『最近の悩み』を添えてお願いします!」

「オッス!」


 巨大なニワトリの姿がアップになる。


コメント:出たwww

コメント:でかっ


「オラ、にわとりのトッポリ! よろしくな! 最近の悩みは、いもち病だ! つれえ!」

「農家らしい悩みが出ましたねー……」


コメント:トッポリ……

コメント:ガチ農家の悩み

コメント:農家なんだ


「さあ続いて!」

「Hi everyone!」


コメント:!?

コメント:英語?


 緑色の肌、唇からはみ出た乱杭歯。しかし知的さを感じさせる眼鏡とその奥の瞳、パリッとしたワイシャツに毛糸のベストは教師のような佇まい。


「オークのルグロズ、デス!」


コメント:オークだと……

コメント:草

コメント:Vtuberいろいろだな

コメント:英語教師系オークとは


「最近の悩みは、親が日本、ワタシの家に来たいと言ってる事デスね!」

「別にいいんじゃないですか? アメリカからわざわざ来るんでしょ?」

「Mai waifuを隠すのが面倒なんデスよ」

「そこは頑張って隠そうよオタク!?」


コメント:草

コメント:二次嫁にはまるオークとは

コメント:妻帯者?

コメント:オレの嫁のスラングだよ>マイワイフ


「はい、次!」

「チーッス。内弁慶系Vtuberの、武蔵野むさしのケイでーす」


 デニムジャケットにジーパン姿、ショートボブの髪の毛をあえてプリン色にした糸目の男子大学生が指を立てて振る。


コメント:ケイくん!

コメント:チャラい

コメント:いるわこれ大学に

コメント:ちゃんと髪手入れしろ


「最近の悩みは親がオレの部屋に入りたいって言ってくることッスねー」

「いや君は入れてあげなさいよ!?」


コメント:草

コメント:引きこもりかな?

コメント:これは内弁慶だわ


「いやーパイセンと違ってパーソナルスペースが広い方なんで」

「広すぎでしょ! もう知らんわ! はい、次!」


 カメラが誰も座っていない椅子を映す。


「あれ?」

「オヤ?」


コメント:あれ?

コメント:あれれー? おかしいぞー?

コメント:茶番始まった


「あれ、パイセーン、そこに座ってるはずのソルジャーは?」

「えー、大調和弊国だいちょうわへいこくのアサカラ兵士長はですね……仕事の都合でお休みです!」


(テロップ:スケジュール調整できず。兵士長、出張頑張って!)


コメント:残念

コメント:兵士長、エリートっぽいしな

コメント:大腸……?


「残念だ!」

「日本人働きすぎデスよ。ハッハッハ」

「えーマジッスかー。オレも帰っていい?」

「やめろ! 心細くなるから!」

「いやパイセン、心細いてw」

「だってお前いなくなったら、ニワトリでしょ、オークでしょ、で人間自分ひとり。厳しくない?」

「オラは怖くねぇぞ!」

「三等分でちょうどいいのデハ?」

「うるさいよ! 絵面の問題だよ!」


 ヨウセイはツッコミを入れて息切れする。


コメント:自由だなw

コメント:ツッコミがんばれ


「いやーパイセン、気にしすぎですわ」

「ヨウセイさんは器が小さいデスねー」

「君ら、君らねー、いいのか!? そんなこと言って! 自分をバカにして! 今日のゲストすっごいからな!?」

「パイセンハードルあげすぎッスよw」

「いやお前今回はホントマジだから。すごいもん。自分今でも信じられないもん」

「へぇし長の代わりに来てくれる人がか?」

「そう! そうなの! ヤバイからね!? 君ら絶対自分に感謝するから! 拝んでくるから!」

「情報量がなさすぎてなんも分かんないんスけど」


コメント:へぇしちょうw

コメント:トッポリの発音がハズれてるようで的を得てる

コメント:ヨウセイくんの人望……


「前口上はこれぐらいにして、ハードルが上がりきらないうちに呼んではどうデスか?」

「待たせるのもまずいべな」

「待って、君たち。心の準備させて」

「そんなにw」


 ヨウセイは大げさに深呼吸をする。


コメント:草

コメント:大丈夫か?


「……それでは、アサカラ兵士長の代わりに出演していただくスペシャルゲストをお呼びしましょう! どうぞ、お入りください!」

「はっ、はーい!」


 女性の声がし、ルグロズとケイが「女?」等と囁いて顔を見合わせる。

 そして、大きなリボンを頭の後ろに下げた少女が、スタスタとスタジオに入ってきた。


「What the hell!?」

「ああああああああああ!?」

「えっ」


 オークのルグロズが叫んで立ち上がり、ニワトリのトッポリが雄叫びを上げて硬直する。ウェイな感じのケイも動揺して動きを止めた。


コメント:あああああ!?

コメント:来た!

コメント:マジで!?

コメント:やっぱりね

コメント:うおおおおおお!

コメント:は?


 少女は、カメラに向かって挨拶する。


「こんにちは、人類! 彩羽根トーカです!」


 その途端、ヨウセイが崩れ落ちる。


「うっ、うわっ、まっ、待って待って待って、本物っ、本物だああ!?」

「いやパイセンが呼んだんでしょ!?」

「あああああああ! トッ、うあっ、あああああああ!」

「トッポリもうるさッ、てか産卵しすぎ!」


 叫び続けるトッポリの尻からはひと抱えもあるサイズの卵がポロポロと産まれていた。


コメント:カオス

コメント:ひどいwww

コメント:卵ぽろぽろで草

コメント:草


「My goddess……! Oh……ウッ……ズッ」

「オークのオッサンは何!? 泣いてんの!? つかオレがツッコミに回るのヤなんだけど!? パイセン!?」

「アッアッ、アノ、アノ……!」

「アッソッ、ソノ、ドモ……!」

「いやどっちも限界かい!」


 ヨウセイとトーカがペコペコと頭を下げあう。その動きが、だんだん固くガクガクとしてくる。


コメント:いつもの

コメント:限界バトル!

コメント:トーカちゃんはさあ

コメント:叩きつけていけ

コメント:なんか重くね?


「えっ、何!? 重っ! ああ! トッポリオマエ、卵産むのとめろ! 重い! 重いから!」

「あああああああああ、と、トーカさんぁああああああ!」


 ポコポコとトッポリから産まれ続け、画面を埋め尽くしていく卵――


(テロップ:仕切り直しました)


コメント:草

コメント:wwww

コメント:そらインスタンスも重くなるわ

コメント:産卵テロ


「はい。えー、ね。皆落ち着いたところで、改めて自己紹介をお願いします!」

「はい!」


 最後の椅子に座るトーカが笑顔をみせる。


「こんにちは、人類! 彩羽根トーカです!」


コメント:こんにちは!

コメント:ゲスト出演おめでとう!

コメント:むしろ出演ありがとう!


「最近の悩みは、友達付き合いって難しいなって思ってます!」

「あああああ、友達! アッ、アッ!」

「何!? なんスかパイセンはまた!?」


コメント:ウッ!!!!

コメント:アアアアア


「いやだって、おま、友達ってさぁ……サキさんのことでしょ……めっちゃ尊いじゃん、あの、あのサキライブの後のサプライズさあ……ねえ、トッポリさん!」

「あれ、オラめっちゃ感動したぞ。サキさんトーカさん、てぇてぇな! って思った!」


コメント:草

コメント:尊い……尊いよな……

コメント:サキライブよかった

コメント:てぇてぇは草

コメント:なんだよてぇてぇってwwww

コメント:てぇてぇ


「てぇてぇって……尊いってこと? え、そんなに?」

「武蔵野市民に人の心はないのか!?」

「うるせえな三鷹市民!?」


コメント:微妙な場所で争ってて草

コメント:武蔵野市ってどこ?

コメント:隣同士仲良くしろ


「あ、あはは……その節はお見苦しいところを……」

「ジッ、実際どうなんですか、トーカさん、サキさんと何か悩みが!?」

「えっアッ、いやーその、違いますよ、その、普通に、そう普通に友達やってます。ちょっと、そのー、友達……っていうのがよくつかめなくて、距離を探っているというか……」

「てぇてぇ!」


 ヨウセイは目頭を抑えて叫んだ。


(テロップ:もう一回仕切り直しました)


コメント:こいつらwww

コメント:草

コメント:てぇてぇ!(絶叫)


「はい、というわけで! アサカラ兵士長の代わりにゲストにトーカさんを迎えて番組を進めていこうと思います!」

「イヤー、兵士長は残念デスね。あの方、トーカさんの大ファンでしょう?」

「あー、Twitterにめっちゃグッズの写真載せてるねあのソルジャー」

「お、オラもファンだ!」

「うん知ってる」

「まあね、確実にこのことを知ったら憤死しますね。怖いから動画公開日まで黙っておこうと思います」


(テロップ:アサカラ兵士長、見てるー?^^)


コメント:煽ってて草

コメント:兵士長かわいそう

コメント:あああああああああああああああ!!!!!!

コメント:あの人マジでファンだもんね

コメント:いるわ

コメント:コメントしてて草

コメント:発狂してるwww


「てか、まーオレでも知ってるけど、トーカちゃんってVtuberの始祖的なヤツでしょ。有象無象のパイセンと違って」

「誰が有象無象だよ!?」

「それがどうしてこんなマイナー企画に来てくれたのかって、気になるわー」

「ワタシも知りたいデスね」

「あー、アサカラ兵士長が今日の収録無理ってなったあと、代役を探してたんだよね」


コメント:探すな!!!! 待ってたらいいのに!!!!!

コメント:草

コメント:兵士長……


「で、大調和弊国にお願いしてたんだけど都合がつかなくて。そしたらヨルニナルト陛下が、どうせなら大物を探そうって伝手をあたってくれて」

「ホウホウ」

「それでなんでかトーカさんまで話が回って」

「回って来ちゃいました!」


 トーカは手を上げて言う。


コメント:かわいい

コメント:ワイ思わずにっこり


「いやー、Vバラには前々から注目してたんですよ! この、そうここ、バーチャルラウンジなんですけど、この収録用のスペースって自作ですよね? 個人でこのクオリティに企画力! もうすごいなって! だからゲストを探してるって噂を聞いて、ついつい手を上げちゃいました!」


コメント:なるほどね

コメント:トーカちゃん好きそうだもんねこういうの

コメント:これ個人でやってるんだすげーな

コメント:バーチャルラウンジがすごい


「パイセン? パイセーン? 崩れ落ちないで司会してよ?」

「いや、ごめ、ほんと、ほんとに」


 ヨウセイはフラフラと立ち上がる。


「あの、実はトーカさんとはこれが初めてじゃなくて」

「えっ?」

「あの、この間のニコ超のバーチャルトークタイムで話させてもらったことがあるんですよ」


コメント:まじか

コメント:あの時のwww

コメント:あそこにヨウセイくんが!?

コメント:いいなあー


「えっ、あっ、そうなんだ!? えー、誰だろ!?」

「アッ、そこは! 有象無象でいいんで! 特定しなくていいんで! いち人類としてね、アドバイスを貰って。それで、Vの世界に飛び込んで色々やって、こういうことも始めて」


 ズッ、とヨウセイは鼻をすする。


「それ、そしたらこうやってトーカさんと会うって目標も達成できて、その、ほんと、ありがとうございます!」

「ウッ、グスッ……こ、こちらこそ、ウッ……バーチャルに来てくれてありがとう!」


コメント:トーカちゃん……

コメント:よかったな……

コメント:運命じゃんこんなの


「うおおおお! てぇてぇ! オラ、オラぁ、涙が……!」

「ヨウセイさん……よかったデスね……!」

「いやVtuber涙腺弱いな!?」


コメント:武蔵野市民に人の心はないのかよ!?!? トーカさんだぞ!!! そこを代われ!!!!

コメント:兵士長……


(テロップ:また仕切り直しました)


「パイセン、時間押してるんで早く進めて」

「わかった、わかったから」


 ヨウセイのTシャツの文字は、金曜日から土曜日に変化していた。


コメント:あ、曜日変わってる

コメント:深夜回ったか


「はい、というわけでね! 今日はトーカさんと一緒に企画をやっていこうと思ったんですが! すでに1本目をやってる時間はないので! 2本目いきます!」

「進行しっかりしてくださいよパイセーン」

「そうだそうだ! へへっ」

「う、うるさ、へへっ……」


 トーカに野次られて、ヨウセイはだらしなく笑う。


コメント:かわいい

コメント:ヨウセイはかわいくない

コメント:いやどっちもかわいい

コメント:つられて笑うな


「ンンッ! はい、次のコーナーは! 『ゲストのお願い叶えよう』です!」

「ヨッ!」


 出演者たちが拍手をする。トーカの合いの手が入ると、ヨウセイはペコペコとした。


コメント:楽しそう

コメント:雰囲気いいな


「なんかね、ゲストを呼んで次にやる事がまたゲスト紹介になっちゃってすいません」

「まーソルジャーがいないのが悪いんスよ」

「いえいえ、兵士長がいないからこそトーカさんに会えたわけで、むしろfine playデスよ」


コメント:うるせーーーー!!!! 好きで出張してるんじゃないわ!!!!!

コメント:草

コメント:トーカさんが来るっていうならPCからVR機材全部ホテルに持ち込んだわチクショーーー!!!!!

コメント:兵士長……


「まあ人生万事塞翁が馬ってことでね。はい、とにかくゲストをお呼びしますよ! この方です!」


 ステージの真ん中に、SFちっくに一人のアバターが転送されてくる。


コメント:おっ

コメント:きた!

コメント:待ってた!


 黄色い着物をたすきがけにして動きやすくした姿。頭の右にはキツネ耳、左にはタヌキ耳をつけた、ちょっとぬけた顔の女の子。


「うわあああああぁァァァ!」


 トーカが叫んで立ち上がる。


「キッ、キッ、きッ↑つねたぬちゃん!」

「こんにちは はじめまして」


 合成音声で言い、きつねたぬ姫は頭を下げる。


コメント:たぬきちゃん!!

コメント:かわいい

コメント:ボイロ勢だ

コメント:トーカおちつけw

コメント:Vのオタクはさあ……


「うわっ、うーわ! 本物だ! かわいい!」

「はい、はい、えー、改めましてね、ご紹介いたします! 本日二人目のゲストは、蕎麦屋の看板娘、きつねたぬ姫さんです! きつねたぬ姫さん、自己紹介をお願いします!」

「はい」


 カメラに向き直ると、きつねたぬ姫はふわりと会釈する。


「こんにちは きつねたぬきです」


コメント:かわいい

コメント:こんきつき!

コメント:一粒で二度おいしい


 そして言葉と共に胸元に出る字幕が暴走する。


からい蕎麦に ご来店お待ちしております」 


コメント:辛いwwwwww

コメント:たぬ姫ちゃんはさあ

コメント:いつまでたってもミスる店名


「ふふっ」

「違う 違う」


 きつねたぬ姫は頭を抱え、トーカが笑ってフォローする。


「誤認識いただきました! サムライ蕎麦、ですよね! きつねたぬ姫ちゃんのお勤めのお蕎麦屋さんの!」

「そうです そうです」


コメント:誤認識かわいい

コメント:蕎麦屋勤めなんだ

コメント:サムライソバ?

コメント:聞いたことない店だな


「はい司会の仕事がなくなる前にご説明させていただきます!」


 ヨウセイがやや早口で声を張る。


「えー、サムライ蕎麦のきつねたぬ姫さんです。以前は2Dの体で活動されていましたが、最近3Dの体を得られたということでね、お声がけさせていただきました!」

「されました」


コメント:3Dお披露目会よかったよなあ

コメント:初期勢のひとりだよね

コメント:立ち絵からLive2D、3Dと技術の進歩がすごい

コメント:ただの一発屋かと思いきやだよね


「今日は『ゲストのお願い叶えよう』というコーナーにご協力いただきます! よろしくお願いします!」


 パチパチと拍手が鳴り、きつねたぬ姫はぺこりと頭を下げる。


コメント:がんばれー!

コメント:好き


「えーこのコーナーはですね、せっかく来ていただいたゲストにいい気分で帰ってもらおうと! いうことで、ゲストからの『お願い』を出演者でそれぞれ叶えまして、4人のうち誰が一番お眼鏡にかなったかを決めるコーナーです!」

「がんばんぞ!」

「よっ、接待企画!」

「うるさいよ! 毎度言うけど必死なんだよ!」


コメント:草

コメント:趣旨を正直に言っちゃうのは草

コメント:逆に好感わくわw


「えーというわけでね、今日のゲスト、きつねたぬ姫さんからの『お願い』はお悩み相談と聞いています」

「そうなんです」

「ということで今日はね、お悩みを解決するアイディアをそれぞれフリップに書いてもらって発表して、きつねたぬ姫さんに最もよかった解答を選んでいただきます!」

「選びます」


 きつねたぬ姫は胸の前で手を組んで、コクコクと頷く。


コメント:あらかわ

コメント:ウッッ

コメント:かわいい


「うわかわ……かわいい……きつねたぬ姫チャン……」

「HAHAHA! ケモミミ娘もいいものデスね!」


コメント:たぬきちゃん逃げて!

コメント:たぬ姫あぶない!

コメント:トーカはいつものことだけどオークはガチに感じるw


「はいそこー、よこしまな目で見ない。きつねたぬ姫さんもね、真面目なお悩みなんでね」

「大変な悩みです」

「それではどんなお悩みなのか、お聞かせください!」

「はい」


 きつねたぬ姫はふわふわとした動きで語り始める。


「あの タヌキは お蕎麦屋さんの娘なんですけど お蕎麦屋さん なんですけど みんな みんな 蕎麦じゃないものを頼むんですよ お店の 一番の売上は」


 きつねたぬ姫は溜めて、言う。


「カレーうどん うどん なんですよ おばさんなのに うどん」

「あぁー……」

「Oh Japanese UDON」


コメント:ありがち

コメント:実際あそこのカレーうどんまじでうまいよ

コメント:行きたいなあ

コメント:たぬ姫ちゃんの喋りがかわいい

コメント:おばさん……?


「それで今日は皆様に どうしたらがわの売上があがるのか 相談しにきたんです」


コメント:ガワw

コメント:単発で蕎麦と言えない病


「なるほどね! 深刻な悩みですよ皆さん! これは責任重大ですからね!?」


 ガヤガヤと出演者たちは勝手に呟きながらもフリップに文字を書き込む。


「できたかな? じゃあ最初に発表したい人!」

「あ、自分いッスか?」


 プリン頭が手を上げる。


コメント:ちゃれぇー

コメント:ケイくんからか


「おっ、じゃあケイからいってみよう」

「いやこれ、マジで書いたんで自信あるんすよ。後が霞んだら悪いッスね」

「おー、すごい自信だな!? じゃあどうぞ!」


 ケイはフリップをひっくり返しながら言う。


「蕎麦打ちの実演をする! どっスか? やっぱ目の前で作られると食べたくなるじゃないっスか!」

「お前にはガッカリだよ!」

「ハァー!?」


コメント:ハァじゃないが

コメント:失望しましたヨウセイのファンやめます

コメント:ケイくんはさぁ……


「サムライ蕎麦はそもそも実演やってるから! 動画で紹介してるでしょうよこのニワカ!」

「いや知らないよ!」

「すいませんねきつねたぬ姫さん、予習もしてこない後輩で」

「ゲスト秘密にされててどう予習すんのよ!?」

「大丈夫 大丈夫です 計算けいさん ありがとうございます」

「フォローありがとうだけど算数じゃないからな!? ケイな、オレ!?」

「フフフ」


 トーカが抑えきれずに笑う。


コメント:素笑いありがたい

コメント:トーカちゃんかわいい

コメント:まあゲスト知らされてなきゃ予習はできんわな

コメント:計算もできないな

コメント:ニワカなことにはかわりないゾ


「ヨウセイさん、ハイ! 自信ありマス!」

「おっ、じゃあオークのルグロズさん!」

「Okay!」


 ルグロズは笑顔でフリップをひっくり返す。


「Destroy All Udon Menus!!」

「過激だな!?」


コメント:こわっ

コメント:デストローイ!

コメント:やっぱりオークだわこいつ

コメント:紳士的な顔してこの発言よ


「HAHAHA! UDONメニューを無くしてしまえば、蕎麦の売り上げ上昇間違いなしデス!」

「本末転倒でしょそれ! ねえ、きつねたぬ姫さん!?」

「それは」


 きつねたぬ姫は腕でバッテンを作る。


「ですよね~?」


コメント:かわいい

コメント:バッテンかわいい

コメント:チャンネル登録した


「うどんを楽しみにしてくれる人も 多いので」

「ほら聞いたか! 反省しなさい反省!」

「あと うどんがないと 売り上げが厳しい」

「切実なとこぶっちゃけちゃった!?」

「HAHAHA!」

「笑い事じゃあないんだよ!」


コメント:まあ蕎麦粉の方が高いからな

コメント:蕎麦アレルギーの人もいるしね

コメント:サムライ蕎麦はビジネス街だから余計でしょ


「はい、次行きましょ、次」

「オラ、いいか?」

「おっ、いこうかトッポリさん!」


 巨大なにわとりがフリップをもたもたと回す。


コメント:不器用

コメント:こういうとこ人柄でるよね


「蕎麦の生産者表示をするってのはどうだ? オラが作りました、ってやんだ!」

「あースーパーであるようなね!」


コメント:あーあれね

コメント:あれ責任者であって生産者じゃないとか聞いたけど

コメント:きのことかの工場で作るやつはまあ微妙なとこ

コメント:ちゃんと作りましたって言ってるやつは本当にそうよ


「でも別に知らない農家のオジサンの顔が表示されてても、それを理由に蕎麦を選択するってことなくない?」

「そんじゃ、きつねたぬ姫さんが打ちました、ってやる!」

「あー美少女が打ちました的なね?」

「わたしは 売ってないので 売ってない 叩く 打てないので」


コメント:たぬ姫ちゃん!?

コメント:買った!!!


「はい、産地偽装はダメでーす」

「そっかぁ……ゴメンな……オラ」


 トッポリはがくりと肩を落とす。


コメント:ドンマイ

コメント:ケイよりはよかったぞ


「気にしないで ありがとう」

「そうだよトッポリさん! いい線行ってると思う!」

「と、トーカさん!?」

「おっ、ということはトーカさんも回答が用意できましたか!」

「はい」


 トーカはにこりと笑う。


「あ、でもその前に、せっかくですからヨウセイさんの回答も聞いてみたいですね」

「えっ。じ、自分ですか?」


コメント:確かに

コメント:聞きたいな


「ええーっとぉ……」

「お、パイセン、アドリブに弱いねー?」

「うるさいよ! えっと、そう、そうですね! やっぱり新メニューとかじゃないですか? そう! カレーそば、どうでしょう!? カレーうどんも、カレーが主役みたいなところあるでしょ。ならカレーそばにしてお手頃価格にしたら」


 きつねたぬ姫は……両手を口元にあてる。


「カレーそば ある」

「すいませんっしたァ!」


 ヨウセイはジャンピング土下座をした。が、その額が地面につくより先にガツッと大きな音がする。


「いってェ!? いって、あっぐ、いてぇ……」

「大丈夫 大丈夫ですか」

「だだだだ大丈夫です!」


コメント:草

コメント:ヨウセイくんにはガッカリだよ

コメント:痛そう

コメント:カレーそば食べたい

コメント:HMD壊れるぞ

コメント:カレー用の太麺わざわざ作ってるんだよな


「パイセン、若くないんだから無理しないでくださいよー」

「いや若いからね!? ていうかデリケートな話はやめよう!?」


 ぜいぜいとヨウセイは息を整えつつ司会に戻る。


「そ、それではトーカさん! 回答をお願いします!」

「はい! あの、やっぱりね、新メニュー開発とかは、すでに試されてると思うんですよ。サムライ蕎麦さんもプロなので。そこを私が考えても、上回る案が出ないかなと」


コメント:なるほど

コメント:確かに

コメント:毎日蕎麦のこと考えてるプロだもんなあ

コメント:素人がちょっと考えたぐらいのことはやってるよね


「なので、私がどうなったら食べに行きたいかで考えました!」


 トーカがくるりとフリップを回す。


「私の提案は! きつねたぬ姫ちゃんが蕎麦を打つ、です!」


コメント:!?

コメント:トーカちゃん?

コメント:どうやってwwwww


「……ええっと」


 ヨウセイは言いよどむ。


「それはそのー、どうやって?」

「はい! サムライ蕎麦さんは蕎麦打ちをしているところ、通りから見えるようにしているじゃないですか」


 トーカは追加でホワイトボードを呼び出し、描きながら説明する。


コメント:やってるな。目合わせてくれないけど

コメント:へえー、楽しそう

コメント:おじさんが黙々と打ってる。たぬ姫ちゃんのとこで動画にもなってるぞ


「そこのスペースをですね、窓ガラスをモニタにしちゃいましょう! で、職人さんの動きをモーションキャプチャーして、モニタの中できつねたぬ姫ちゃんが蕎麦を打つんです!」

「お、おお?」

「あとですね! アピールできるものはどんどんしていきましょう! トッポリさんが言った生産者表示じゃないですけど、こだわりの材料をお使いですよね? 蕎麦粉をこね鉢に入れたら、そこから蕎麦の産地とかこだわりポイントを表示して。水を入れたら水の情報。道具の情報とかもいいですね!」


コメント:ハイテク

コメント:蕎麦屋らしからぬサイバーなイメージで草

コメント:なにそれ未来じゃん?


「なるほど……それは見ちゃいますね。しかもケモミミ美少女が打ってるし」

「お店の前に人が集まれば、お店に入る人も増えるんじゃないかなって。やっぱりね、今までのお客さんは今までのメニューが食べたいと思うんです。だから蕎麦を売りたければ、新しいお客さんを獲得するしかない! 何より私はきつねたぬ姫ちゃんが蕎麦を打っているところが見たい! ――どうでしょう!?」


コメント:いいね!

コメント:確かに

コメント:常連ほど定番メニューってあるだろうしな

コメント:行列の法則か


 きつねたぬ姫は――親指を立てた。


「採用」

「やったー! 採用だー! 優勝!」


コメント:優勝!トーカ優勝!

コメント:知ってた

コメント:みんなの意見を昇華させた感

コメント:かわいい好き


「まさかの採用ですが、えぇ、いいんですかきつねたぬ姫さん。なんかめっちゃお金かかりそうですけど」

「パイセーン、金から入るのは器が小さいっすよ」

「いやでもほら、蕎麦打ちを見せてた職人さんだってねぇ?」

「あの方 常々 一人で撃ちたいって言っていたので」

「わかるけど物騒だな!?」


コメント:草

コメント:銃器の話になってて草

コメント:まあ人に見られながら蕎麦を打ちたいかって言われたらねえ


「バ美肉のいい機会ってことですね! 技術の話は私に相談してくれたら、いくらでも乗りますので!」

「やったぜ お願いします」

「ビジネスの話まで行ってる!? なんだこれ、すごいな!?」


コメント:バラエティでビジネス成立

コメント:Vバラとは

コメント:トーカプレゼンツ?

コメント:ぜったい行く


 場面が切り替わり、アイキャッチが入った後、一同横並びになる。


「――はい、というわけで」


 エンディングテーマが流れる中、ヨウセイが話し始める。


コメント:ED好き

コメント:この曲好き


「今週のVバラは以上です! ゲストに来ていただいた彩羽根トーカさん、きつねたぬ姫さん、ありがとうございます!」

「こちらこそ! とっても楽しかったです!」

「とてもよかったです」


 きつねたぬ姫はコクコクと頷く。


コメント:二人ともお疲れ様です

コメント:めっちゃ視聴者増えたな

コメント:トーカ効果

コメント:いや面白いわ。来週も見る

コメント:チャンネル登録しました


「ちょっと ちょっとだけ 心配だったので」

「パイセンの舵取りが?」

「HAHAHA!」

「君たちね!?」

「家 朝から 朝から兵士長が」


 きつねたぬ姫はだだをこねるように手を上下させる。


「あの人 あの人の国の名前が うまく言えないので」


コメント:あぁ~

コメント:一般名詞じゃないからね


「あぁ……まぁそれがウリの人たちですからね」

「えー、でも聞いてみたくないッスか?」

「こら! 女の子に何てこと言うんだお前は!」

「えっ、でも私も聞いてみたいです! 言ってみて欲しいな~!」


コメント:トーカちゃん?


「わかりました」


コメント:たぬ姫ちゃん!?

コメント:草


「わかっちゃった!? い、いいんですかきつねたぬ姫さん!?」

「女に イオンはありません」

「なんかもうすでに怪しいですが!」


コメント:兵士長起きろ!!

コメント:兵士長よかったな

コメント:起きてるしいるよ! 控えてただけで……憎しみを……

コメント:草


「それでは最後は、きつねたぬ姫さんに締めてもらいましょう! 今日欠席したアサカラ兵士長の所属は~!?」


 ヨウセイの振りで、きつねたぬ姫はドヤ顔で言った。


大腸だいちょう 和平わへい くろ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る