関ヶ原オールスターキャスト合戦絵巻!信長軍団を倒すべく集合した東国武将。西軍にはあんな武将やこんな武将も!?
🅰️天のまにまに
第1話:一大ドラマティック戦国合戦絵巻はじまり~
時は天正一〇年九月一五日
所は美濃国関ヶ原!!
オンベイシラマンダヤソワカ
オンベイシラマンダヤソワカ
朝霧の中、毘沙門天のマントラが、次第に西へと向かっていく。
見えた!
巨大な毘の旗。
越後の龍の軍団が、ここ関ヶ原にて戦闘態勢で西軍に襲い掛かるために行軍を始めた。
「運は天にあり。鎧は胸にあり。手柄は足にあり。何時も敵を
越後上布を頭に巻き、小兵ではあるが敵を突き刺さんばかりの鋭い眼光の男が馬上で敵を指し示す。
「足利将軍家に徒名す、第六天魔王信長を討ち滅ぼせ! かかれぃ!」
その左、南方に接する中軍には、風林火山の旗。
「謙信の奴、張り切りおる。あ奴は将軍家のこととなると見境がなくなる。というよりも義に厚いとか言う風説を大切にしておる」
床几から立ち上がり、騎乗しようとする甲斐の虎武田信玄は、半里東の十九女池近くの高台に陣を敷く第一三代将軍足利義輝に目をやる。
徳川家康の軍勢二万に守られて、東軍の総指揮をとっている。
「ワシらの命は、あの男に握られているからな。命令には逆らえん。それならば精々武田の利益に結び付けるのが、このワシの役目よ」
◇ ◇ ◇ ◇
「藤孝よ。ようやくここまで来たな。そなたがあの男を連れてこなければ今頃足利の世は、あの信長に簒奪されていたであろう。ようやった」
剣豪将軍と言われた足利義輝。
一七年前、三好勢により攻められ惨殺されるところを、細川藤孝によって一命をとりとめた。
「はっ。しかしそれもあの男がいなくば、ここまでうまくは行きませなんだ。あの医術の技。誠に貴重」
「しかし、なんじゃ。あの西軍にも死ぬはずであったろう者たちがいるではないか。それらのものも助けてしまうとは厄介なものよ」
藤孝がその男を拾ったのは、もう二〇年も前の事。
面妖なる白き衣をまとった大男だった。
大男はこの世のものとは思えぬ医術を持って数多くの武将の命を救ってきた。
その武将がこの関ヶ原にひしめき合っている。
「武田勢と吉川元春の軍勢が衝突します。合戦が始まりますゆえ、それがしは自分の陣へ参ります。御免」
満足そうに眼下で巻き起こる天下分け目の戦いを見つめる元将軍は恍惚の表情。
◇ ◇ ◇ ◇
<主人公視点です>
「仁宗。仁宗はおるか?」
俺を呼ぶ声がする。
細川藤孝だな。
俺、手術院仁宗のパトロンだ。
いや、どちらかというと俺がこいつを利用している。
俺は昭和平成令和の時代からこっちへたまに転生してくる。
「またいなくなったのかと思ったぞ! 今日はずっとここにいよ、公方様の命である」
そんなの知ったこっちゃない。
この戦は、『俺が夢見たもの』。
幼いころにこっちへ飛ばされた時から、「もしかしたらゲームみたいな関ヶ原最終決戦」が演出できるんじゃね?
なんて考えた。
普通の人間なら知識チートで何とかする所だ。
だけど俺はなぜかしょっちゅうこの戦国時代と現代社会を行ったり来たり出来る。
ある程度の荷物も持ってこれる。
「こりゃ、いろいろできる!」
と、思ったんだけど、拳銃とか爆弾とか持ってきても何が出来るわけでもない。
そこで生涯のテーマとして、『戦国時代の早死にする連中を救ってそいつらに戦ってもらおう』と思った。
よりよい世界を作ろうなんて言う大層な仕事をするような偉い人間ではない。
それに最近は危なくなったら意図的に現代社会に帰れるようになった。
だから遊びで関ヶ原オールスターキャスト合戦を演出することに生涯をかけたんだ。
人間、目標があると労力は惜しまない。
必死に勉強して医学部へストレート合格。
凄まじいブラック労働のインターン期間の最中にも、知識技術チートに必要なありとあらゆる能力を身につけた!
医学はもとより、薬学・金属製造業・鉱業技術・精密加工技術。
さすがに広く浅くになったが、目標を達成するのに必要な準備が整う頃には、こっちの歴史も一五八二年になっていた。
それまでに死んでいるはずの有名武将を近代医療で治して生き延びさせた。
足利義輝も義昭が追い出されるまで動かずに高野山で隠居してもらった。
「仁宗。お主は十九女池にて公方様のお側に控えておれ。公方様に何かがあったら何を置いてもお助けするのじゃ」
それは願ってもないこと。
十九女池なら合戦を一望の下に観覧できる!
ここからじゃ全戦場を見られないからな。
「はっ。この仁宗。命に代えてでも」
さて。
準備はすべて整った。
一大合戦絵巻を見ていこうではないか!
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