第83話 4割

「それじゃ母さん、行って来るよ」


「悠、ご迷惑をおかけしない様にするのよ」


姫ギルドのSSランクダンジョン攻略の随行は、当然母にも知らせてある。


SSランクはかなり広いので、普通にやったら10日以上かかるからな。

なんの知らせもなくそんな長い期間家を空けたら、母に余計な心配をかけてしまう。


「大丈夫だよ。俺は只ついて行くだけだからさ」


因みに俺は、表向きは映像記録係という事になっている。

表立って保険ですとは、周囲に宣伝する訳にはいかないからな。

姫ギルドも。


大手ギルドに只ついて行くだけという事なら、母も余計な心配をしなくていいのでこっちとしても有難いのでウィンウィンだ。


「アングラウスちゃんとぴよ丸ちゃんも、悠の事お願いね」


「まかせよ」


「マヨネーズの切れめが縁の切れめ!じゃがマヨネーズがある限りは大船に乗った気でいるとよか!」


やっすい縁だな。

まったく。


因みに俺は大荷物を背負っている。

中身はほぼ全てマヨネーズだ。


俺は不老不死なので食事は必要ない。

そしてアングラウスも、100年ぐらいは食事抜きでも問題ない体質となっている。


そのため、この中で食事を欲するのはぴよ丸だけなのだ。

なので必然的に、荷物は奴の食い物に収束する。


まあ、そのぴよ丸も融合中は不老不死だから本当は食事など必要はないんだが……


こいつは長時間マヨネーズを食わせないと、五月蠅くて敵わんからな。

SSダンジョン攻略は2週間の予定である長丁場なので、その間えんえん喚かれたら地獄である。


「ふふ、お願いね」


「じゃあ行って……っと、その前にぴよ丸は中に入ってろ」


こいつを連れて公共機関を使いたくないからな。

臭い物には蓋を、て奴である。


「なんじゃい!マスターはワシとアルティメットドッキングしとらんと外も歩けんとね!仕方ないやつじゃ!とう!アルティメットドッキング!」


余計な事ほざいてないですっと融合しろよな。

突っ込む気もおきん。


「じゃあ行って来るよ。憂の事頼んだよ」


「ええ、大丈夫よ」


家を出て、俺はダンジョンへと向かう。

場所は現地集合だ。



◇◆◇◆◇◆◇



――ダンジョンゲート前。


「初めまして、顔悠です」


「ギルドマスターの姫城アイギスだ。聞いたよ。うちのメンバーの壁を取り払ってくれたんだってね」


姫ギルドのマスター。

姫路アイギスが笑顔で握手して来る。


彼女の印象を一言で言うなら……精悍なデカマッチョだ。


胸が出ているため女性である事は認識できるが、もしそうじゃなかったら見た目で一発で女性と気づくのは少々難しいかもしれない。


「姫ギルドのマスターとして礼を言わせて貰う」


姫ギルドで突破に挑んだのは10人――田吾が別のメンバーに連絡して集めた。

その内、999の壁を突破できたのは4人だけだ。


一発で成功したのは一人だけで、三人が二回目を受け二人が成功。

そして最後に残った山路が三回目にして突破しての四人である。


え?

なんで二回目に残りの六人は挑まなかっただって?


その辺りは俺も良く分からない。

直接聞いた訳じゃないから――突破はスキルをかけたら後は放っておく形なので、その日は帰って翌日三人に減ってた。


時間の都合がつかなかったとか、きっとそんな理由だろう。

たぶん。

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