第64話 攻撃魔法
「逃げられないねぇ……」
俺も馬鹿ではないので、カイザーギルドによる再度襲撃の可能性は考慮していた。
そしてその中で真っ先に懸念したのが結界よる転移の封殺だ。
何せ一回目はそれで切り抜けている訳だからな。
相手も馬鹿ではないだろうから、その辺りを封じて来るのは目に見えていた。
だから当然対策を――
まあ取ってはいなかったりする。
何故なら、結界を張っても俺の――正確にはぴよ丸のブリンクは封じられないからだ。
アングラウス曰く。
ぴよ丸のブリンクはかなり特殊な物で、結界なんかでは封じられないらしい。
少なくとも彼女の知る魔法やスキルの類では、その転移を妨害する事は出来ないそうだ。
まあ未知のレジェンドスキルなら話は変わって来るそうだが、カイザーギルドにそんな物を持つ人物がいる可能性は限りなくゼロに近いと考えていいだろう。
つまり、その気になれば簡単に逃げられると言う事だ。
まあだがそれ以前に、逃げる必要自体感じないが。
「随分と余裕だな。何か隠し玉があるって所か……」
俺が焦っている様子を見せなかった事で、Sランクの男が警戒に目を細める。
流石にそのレベルまで至ってるだけあって、バカ面の滝口とは違う。
「隠し玉って程じゃない。単に……戦えば俺が勝つってだけだ」
「はっ!何を言い出すかと思えば!
「しっかり見えてるよ。人数は16人。その殆どがAランクで、Sランクは一人――いや、ひょっとしたらその男以外に混ざってるかもって所だな。まあ問題ない」
SSランクがいれば話は変わって来るが、日本最高クラスで数がいないプレイヤーを俺一人捕まえるために態々用意するとは思えない。
万一いたら?
その時は迷わずブリンクで逃げるだけだ。
問題なし。
「一月ほど前は俺の動きに全く反応できなかった奴が、随分と大きく出たな」
「男子三日会わざれば
前に戦った時より命が一つ増えているので、俺の力は大幅に増している。
その力さえあれば……と言いたい所だが、それだけだと目の前のSランクの男一人相手にすら消耗戦を仕掛けないと厳しいレベルでしかない。
当然今の俺の力じゃ、全員を同時に相手して勝つなんてのは無理がある。
――だが、俺は一人じゃない。
「へっ!はったりだな。短期間でそんな強くなれる訳ねぇだろうが。バーカ」
「にわかには信じがたい戯言だが……おい、一応警戒しろ」
滝口はハッタリと決めつけているが、Sランクの男が周囲の奴らに警戒を促す。
「ハッタリかどうか直ぐに分るさ……ぴよ丸、適当に攻撃魔法でサポート頼む」
『偉大なる大魔導士!ぴよ丸様のデビュー戦じゃな!』
ぴよ丸が進化で得たのは、何も変身能力だけではない。
進化した事でレベルと魔力が大幅に上がり、アングラウスの指導によってSランク相手にも通用する攻撃魔法を扱えるようになっていた。
これにより、俺は普通に近接戦をしながらオートで高威力の魔法まで放つ事が出来るという訳だ。
しかも詠唱は体内でぴよ丸がするので、詠唱から発動のタイミングを相手が見切るのは不可能。
更にさらに、普通なら余波を気にして自分の至近距離で強力な魔法なんかは扱えないのだが、俺は不死身なのでそういった制限がない。
しかもぴよ丸の魔力も【不老不死】の効果で一瞬で全回復するので、ペース配分も糞も無いばら撒きまで可能と来ている。
この条件で不死身の俺が制圧されるとしたら、それこそ基礎ステータスに大差のあるSSランク以上のプレイヤーがいた場合だけだ。
「ぴよ丸?他に誰かいるのか……」
俺がぴよ丸に話しかけた事で、Sランクの男が周囲を警戒する。
近くに仲間が隠れている事を警戒したのだろう。
「ハッタリですよ、蟹山さん。俺のサーチには誰もひっかかってませんから」
「滝口……お前のサーチスキルも大した事ないな」
まあ融合してるぴよ丸に気付けと言う方が無茶なんだろうが、せっかくなので煽っておいた。
こっちも大概腹が立ってるからな。
「何だとぉ!」
「下がれ滝口」
滝口が激高して前に出ようとするが、それをSランクの男——蟹山が制した。
前に出てきたら真っ先ぶっ飛ばしてやろうと思っていたのだが、まあいいか。
少し後回しになるだけだ。
「それじゃあ行くとするか」
『準備は既に万端じゃ!ブッパしていいんじゃな!』
「ああ。全開のをぶちかましてやれ」
『ラジャ!受けるがよい!!フレイムテンペスト!』
ぴよ丸による魔法の発動。
それは猛烈な炎の渦となって、眼前の蟹山を一瞬で飲み込んだ。
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