第11話 レアドロップ

「武器か……そう言えば悠は武器を使わんのか?他の人間は使っている様だが?」


ワーウルフを倒すと、レアアイテムに当たる武器を落とした。

片手で扱えるタイプの剣だ。

それを見たアングラウスが尋ねて来る。


名前に関しては、改めて自己紹介して以来呼び捨てされる様になっていた。

下の名前を馴れ馴れしく呼び捨てかよって気がしなくもないが、相手はとんでもない力を持つ魔竜だ。

お前呼ばわりされるかよりはマシだと思う事にする。


「武器は使わない」


「何故だ?」


武器を使わない理由は二つある。


「使う意味がないってのと――」


一つ目は、武器に俺の命のエネルギーを乗せられない点だ。

アングラウスと戦った際、俺は自傷ダメージを無視したパワー収束タイプの攻撃を行っている。

アレは自分の体にのみに出来る行為で、武器を持つよりずっと破壊力が高い。


つまり、武器を持つとリーチは伸びるが火力が落ちてしまうのだ。


もう一つは――


「俺だと武器の力を引き出せないからだ」


――使用制限だ。


理由としてはこっちの方が大きい。


「そうなのか?」


ダンジョンで手に入る装備類は、制限の様な物が付いている。

まあ装備自体出来ないって訳ではないが、求められる魔力を満たしていないと本来の力を発揮できないのだ。


「ああ、俺は魔力が殆どないからな」


俺はレベル1の超低魔力。

そんな俺にかかれば、伝説の剣も只の普通の剣と化す。


力が乗せれず、しかも強い武器を持っても単に頑丈なだけ。

流石にこの条件じゃ、装備する意味はないだろう。


因みに、命を使って上げれるのは身体能力だけなので、魔力は最低のままだったりする。


「そう言えば、悠の魔力はかなり……というか、確かにビックリする程低いな。本当に不思議な奴だ」


「まあ俺は特殊だからな」


剣を拾ってベルトに挟む。

俺は装備できない――しない――が、そこそこの値段で売れるからな。

エリクサーの事があるからガンガン稼がないと。


「さて、ボスだ」


Eランクダンジョンは攻略されつくされており、その内部の地図は普通にスマホの専用アプリで購入出来た。

俺はそれを使って、最短でダンジョンボスの待ち受ける場所へとやって来ている。


まあそれでも二日ほどかかったが。

何だかんだで、ダンジョンってのは広いからな。


「少し大きいだけで、大して差は無さそうだな」


ボス部屋——ボスの居る広い空間には、巨大なワーウルフが鎮座していた。

こいつがこのダンジョンのボス、エリートワーウルフだ。

そしてその周りには5匹、通常のワーウルフ達が取り巻として徘徊している。


通常のワーウルフとエリートでは相当な力の差があるのだが、まあアングラウスレベルの魔物からすれば大差ないと感じるのも無理はない。


「お前にとっては雑魚でも、今の俺にとっては結構面倒臭い敵なんだよ」


命一つでも、エリートは時間さえかければ倒せなくないレベルではある。

所詮Eランクのボスだ。

しかも今の俺は命が二つあるので、激闘になる相手と言う程ではなかった。


とは言え、だ。

楽勝かと言われればそんな事はない。

たぶん、何回か死ぬ様な攻撃を受ける事になるだろう。


「やれやれ……我がライバルながら情けない。しょうがない、我が始末してやろう。お前の母親にも頼まれているからな」


アングラウスが大きく息を吸い込む。

次の瞬間、その口から猛火が噴き出された。


――それはボス部屋全体を地獄へと変える。


――更に言うなら、俺もおもっくそ燃やされた


「ほれ、終わったぞ」


「……」


俺は死んでも問題ない。

どういう訳だか衣服類も俺の不死身に含まれので、燃えても再生される。


だが――


「ドロップの魔石と剣がだめになったんだが?」


後スマホも。


「些細な事だ。気にするな」


「いや気にするわ」


エリクサーを買う為にお金が必要だと言うのに……


まあ今回の稼ぎが飛んだぐらいなら問題ないが。

だがこれから先も同じ事をやられたのでは、堪まった物ではない。


「手を出すなとは言わないけど、せめて俺に被害がない様に頼む」


「分かった。善処する」


善処とか、不安が残りまくるタイプの返事だ。

本当に大丈夫だろうな?


「それより悠。何かドロップした様だぞ」


アングラウスに言われて気づく。

ボスの居た辺りに、金属製の盾が落ちている事に。


「おお、レアドロップか!」


ここのボスのレアドロップは、属性耐性付きの盾だった筈。

さっきアングラウスに燃やされたせいで数百万がパァになってしまったけど、この盾を売ればお釣りがくる。


「んじゃ、出るか」


ボス部屋の奥には小部屋があり、そこにゲートがあるので俺はダンジョンを後にする。

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