18:LOOP 1,358,688,192
茜の部屋の状況は明らかに数万年の歳月の経過を示していたからだ。
「未来でもこの件の調査は続けているはずだ。それなのに一向に問題が解消しない」
「何か他にも原因があるということ?」
私がそう言うと、彼は私を抱きしめた。
「君の死がループを引き起こしていることは確かなんだ。必ず君をその呪いから救い出すよ」
彼の背中に手を回して強く抱きしめ返す。
警察は私を襲った瑠璃のことを調べていたが、どうやら彼女は身分を偽って生活ししていたようだった。
崩壊したマンションから回収した写真を見つめる。彼女のところがペンで丸く囲われていて「はんにん」と書き殴られている。この筆跡は私のものだと判明しているが、本当に私はループしているのだろうか?
彼女の襲撃から私を守ってくれた空。そして、私たちは結ばれた。そういう意味では、瑠璃が私の未来を作ってくれたのかもしれない。
お腹をさする。空との間に新しい
この子のためにも、私は生き続けなければならない。
***
クローゼットの奥に押し込まれた箱の中に、古いファイルがしまわれていた。おばあちゃんが言っていたものだろうか?
ファイルを開いて中身を見る。
おばあちゃんが70年くらい前に路上で襲われた時、警察が犯人を逮捕したらしい。
瑠璃というその名の女は、身分を偽っていたことが明らかになっている。その後の調査でも、彼女の素性は明らかになっていない。
ファイルから一枚の写真が床に滑り落ちた。
大勢で撮った写真のようだった。ひとりの人物のところが丸で囲まれている。「はんにん」と書き込まれていたのは、あたしだった。
全てを悟った。
あたしがおばあちゃんを時間の檻の中に閉じ込めたのだということを。
涙が溢れてきた。
あたしはどうすればいい?
おばあちゃんをどうやって救い出せばいい?
***
茜のマンションへ向かう黒い影。フードを被った瑠璃だ。
あたしはその背後に向かってナイフを突き出した。くぐもった声と共にこちらを見た彼女は、あたしの顔を見て驚愕の表情を浮かべた。そして、そのまま路上に倒れ込んだ。
ナイフをその場に捨てて、夜の街に駆けた。彼女はしばらくすれば死ぬだろう。自分の死に様なんか見たくなくて、自分の死から逃げるように走った。
どこへ逃げようというのか?
あたしが全ての苦しみを生み出した元凶だというのに。
走って、走って、走った。あてどなく。
交通量の少ない車道の上に
団地の建物の隙間から夜明けを告げるように
あたしはそっと涙を流して、空が夜の色を濃く残す方へ歩いていくことにした。
あたしは
決して明けることのない夜の色だ。
──Timeloop End.
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