ヒーロー退治
星宮コウキ
序章 少年にとっての「ヒーロー」
その日は、建物という建物が崩れ落ち、街中のあちこちで悲鳴が聞こえていた。後に『機獣騒動』と呼ばれる大災厄に見舞われたのだった。
まだ幼かった操は、何が起こったのか理解できないまま、瓦礫の中に埋もれていた。激しい音を伴って破壊されていく街の中で一人ぽつんと取り残された少年は、助けを呼ぶことすらしない。それができないほど、街は混乱に包まれていたのだ。やがて災厄は、操のことも死というどうしようもない武器で狙ってくる。操がそれから逃れる術はなかった。
そんな絶体絶命の危機の中、操は助けられた。しっかりと守ってくれた、ずっしりとした安心感のあるその熱い姿に。見返りを求めず、恐怖をものともせず立ち向かっていくその背中に。
操だけではない、街のみんなが命を救われた。人的被害をほぼ出さなかった彼らは、正に平和を守るヒーローだった。
操はそんなヒーローに憧れた。ヒーローのようになるのが夢だった。
「ちょっといい?」
桜が散り終わって、木々が緑に染まってきた晩春のこと。
高校一年生になった操の世界は、真実を探る少女にそう問われてから変わり始めた。ヒーローのことを何も知らなかったのだと、思い知らされることになった。
彼らの抱えているもの、彼らが信じているもの、彼らの目的。操はそれらを何も知らなかった。いや、知ろうとしてこなかったのかもしれない。自分の夢が、憧れが、脳裏にある輝かしい過去が、壊れてしまうような気がしたから。
そんな自分の夢を守るために理想に閉じこもった操は、真実を探る少女によって図らずも、理想の外の世界を知ることになる。自分の夢と向き合い考える機会を与えたのだ。
ヒーローのように、って何だろう。
操にとって、ヒーローとは何なのだろうか。
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