昔は良かった

昔のこれは良かった

昔のそれは良かった

昔のあれは良かった

でも忘れ去られた“凡作”が無数にある

その中で人気の高かったもの評判のよかったもの、

“優れた”ものだけが選ばれて残されて伝わって、

それだけが“今”にあるんだから“良かった”のは当たり前

そう昔は良かったっていうのはくだらない

でもかといって今の方が良いってムキになるのもつまらない

ただ大人になったからって

子供の頃を忘れてしまうわけじゃない

そんなの過去のきれいな部分を切り取って

己の都合のいいように美化しちゃってるだけなのさ

そりゃあ過ぎ去った時間はあっという間なんだって

昔あったことをいちいち全部覚えてなんかいられないもん

そう記憶力がいいっていうのも困りもの

“忘却力”はとてもとても大切

“今時の若者は主張しない”

“今時の若者は自己主張が強い”

“今時の若者は全然勉強しない”

“今時の若者は勉強ばかりしている”

“昔は良かった　今時の若者は”

それは古今東西変わらぬ決めゼリフ

そんなの要は過去の自分の失敗や罪を忘れていくからさ

じゃなきゃ悩める人に感情移入するはずだもの

昔起こった嫌なことを一つ一つ忘れていくこと

それが良いことなのか悪いことなのかはわからない

でもとりあえず精神的には健康的だ

それは、確か

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