第2話 人気のない、風紀委員。
風紀委員は人気がない。
ハンカチとティッシュは持ってなきゃいけないし、スカートだって短くしちゃいけない。
爪だって三日に一度は切らなきゃいけない。
茶髪も駄目だし、ピアスもタブーで、髪型も、私くらい長いと、後ろで一つ結び。
なんてお色気のない委員会なんだろう?
って、私にはどれも、辛くもなんともない規定だけど。
だから、じゃんけんに負けても、別にどおって事なかった。
逆に、みんなの役に立てたみたいだから、それだけは喜んでおくことにしよう。
でも、男子と二人一組になって委員会に入らないといけない。
一体どんな男子と組になるんだろう?
それだけが心配だった。
私は、元々内気で、何となく男子が苦手で、何を話したらいいんだろうか…とか、どんな態度を取ればいいんだろう…とか、ついつい深く考えすぎてしまう所がある。
けれど、その後に、その男子と組むと分かって、私は少し安心した。
だって、その人は、私と同じくらい…ううん、私にも増して人見知りで、真面目そうで、騒がしい感じはしなかったから。
人見知り同士、無理に話さなくて良いし、委員会もその方が滞りなくお役目を果たせる。
その人が、今日から私の委員会のパートナー。
風紀委員は人気がない。
でも、それは女子の委員が決まる前の話。
僕は、とんでもないじゃんけんに負けてしまった。
その子は、入学式でも目立ったほど、奇麗で、同級生からはもちろん、二年、三年の先輩方からも好かれたとお見受けした。
そんな女子と、同じ委員会のパートナーとなってしまった。
クラスの男子は、早くも僕に敵対心を抱いてるやつもいるみたいだ。
迷惑な話だ。
風紀委員は、面倒だから、負けた奴がやる、そう言い出したのは、男子全員じゃないか。
だから、みんながじゃんけんに勝って、喜ぶ姿に、僕は安心して負けることが出来た。
しかし――…女子が本宮に決まったと知った瞬間の男子連中の反応は、じゃんけんをする前と真逆だった。
「颯志、お前大変だな」
そうだ。
こういう人だ。
こういう人が、本宮さんみたいな人と接していいんだ。
じゃんけんに勝ってしまった男子連中の憎しみにも匹敵する視線の中、それを案じて声をかけてくれた人物。
その名は、
僕の小学校からの幼馴染で、とても明るくて、優しくて、高校生とはお思えないほど、おおらかな人間だ。
とてもいい奴なんだ。
僕は知っている。
僕はとにかく人見知りで、小学校の頃は女子より背が低くて、馬鹿にされていた。
いじめの対象にされそうになった事もあった。
でも、それを守ってくれたのが、尊君だ。
僕は、心から尊君を、その名の通り、尊敬している。
そんな事を言うと、尊君は恥ずかしがるから、本人の前ではあんまり口にしないけど。
「まぁ、俺の勘だけど、本宮は良い子だと思うぞ。大丈夫だ」
ほら。
こんな風に言ってくれる人、他にはいない。
男子連中は、もう一度じゃんけんしようとか言ってるけど、それを抑えてくれたのも、尊君だった。
「まぁまぁ。一回決まって事なんだから。しょうがないじゃん!」
その尊君の言葉に、みんなは、渋々納得した。
そうして、大不人気と、大人気の風紀委員は、男子は、武田颯志。
女子は、本宮茉莉子。
この二名に決まった。
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