白黒の君と図書館
高々 ゆう
第1話 少女
ひぐらしが鳴くとある夏の午前中。
僕は涼みに図書館へと向かう。
誰にもいない館内。
窓際の隅の席に座り、高そうで重そうな図鑑を開く。
さほど興味がなく、ページを捲る音だけが館内に響き渡る。
しばらくするとセーラ服を着た小柄な女の子がやってきた。
栗色のショートカットにうさぎの髪留め。小学四年生くらいだろうか。日焼けした顔が眩しかった。
一冊文庫本を持っていた。
ーー太宰治、女生徒。
彼女にとっても似合っていた。
僕から遠く離れた通路側の席に君は座った。こちらに気づいているのかいないのか、自然体に文庫本を読み始めた。
大抵の人は無表情で読むのだけれど、君は目をキラキラ輝かせながら、時折り百面相をしながら、本を読んだ。
ーー可愛い
僕は君にときめきを感じ始めていた。
図鑑を眺めながら君を観察していたのだけれど、気配がするのか、君と目が合ってしまった。
たまらず笑顔を作り会釈をした。
興味なさそうに一瞥した後、ぷいっとそっぽをむかれてしまった。
その日はもう帰った。
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