十
元来良秀と言う男は、なんでも自分のしていることに
そこで弟子は、机の上のその異様な鳥も、やはり地獄変の屛風を描くのに入用なのに違いないと、こうひとり考えながら、師匠の前へかしこまって、「何かご用でございますか」と、うやうやしく申しますと、良秀はまるでそれが聞えないように、あの赤い唇へ舌なめずりをして、
「どうだ。よく
「これはなんと言うものでございましょう。私はついぞまだ、見たことがございませんが」
弟子はこう申しながら、この耳のある、猫のような鳥を、気味悪そうにじろじろながめますと、良秀は相変わらずいつものあざ笑うような調子で、
「なに、見たことがない? 都育ちの人間はそれだから困る。これは二、三日前に
こう言いながらあの男は、おもむろに手をあげて、ちょうど餌を食べてしまった耳木兎の背中の毛を、そっと下からなで上げました。するとそのとたんでございます。鳥は急に鋭い声で、短く一声
しかし弟子が恐ろしかったのは、何も耳木兎に襲われるという、そのことばかりではございません。いや、それよりもいっそう身の毛がよだったのは、師匠の良秀がその騒ぎを冷然とながめながら、おもむろに紙を
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