【現代版】童話•童謡(ラブコメ・現代ファンタジー複合)

にんじんのへた

沙織と司の物語

合宿の始まり

〜沙織視点〜


今日は5月15日金曜日。金曜日だから嬉しいってわけでもない。私、南条沙織みなみじょうさおりみたいなボッチは土日に予定なんてあるわけない。なかったらなんなのか。お母さんが勉強を強制してくる。もう高校生なんだから自分でやらせてよ、と叫んだことがある。そうしたら「誰のおかげで生きていると思ってんの?予定がないなら将来私に恩返しができるように勉強しときなさい」ときたもんだ。実際、お母さんには迷惑かけっぱなしだと自覚している。一人っ子だし、お父さんは数年前に事故で亡くなっちゃってるし。お母さんは休む暇もなく働いてくれている。そう考えると言い返せなくなってしまった。でも勉強はしたくない。高校受験だけでもううんざりだ。じゃあ合法的に勉強を回避しよう、と思って友達と遊ぼうとするが、友達がいない……。中学までの親友であり今は別々の高校に通っている芽依は連絡しづらいしなぁ。そうなったら勉強するしかないか…と思いながら昼休みを過ごしていた。


「ねぇ、明日明後日って暇?」


急に話しかけてきた彼女はクラスで結構明るくて可愛くて男子からものすごい人気な女子である小鳥遊志歩たかなししほさんである。最近彼氏ができたとか、そういう噂が流れている。誰かは知らない。でも急すぎてビックリした。明日明後日?二日?ちょうど暇だけど何されるか分からない。とにかく暇、と答えておこう。


「ま、まぁ暇だけど…」

「よかった! じゃあさ、あの岳山に集合ね!」


岳山はここから1番近い山だ。でも自転車で20分はかかる。しかし岳山で何するんだろ。なんか面白そうなのあったっけ…?


「え、なにするの?」

「まだなーいしょ! 秘密! あ、持ち物とかの詳細送りたいからLINE交換しよ!」

「あ、うん、いいけど…」


ホントに何するんだろ。それにしてもLINE、か。別にオタクでもないからうちの猫をアイコンにしてるし、交換しても損ないから交換はした。した後でも友達4人かぁ。お母さんとおばあちゃんと小鳥遊さんと芽衣しかいない。コミュ力が全くないのだから仕方がない。


「おーい小鳥遊、なに話してんの?」

「明日の話してんのー!」

「お、じゃあ混ぜて混ぜて」


男子が2人話しかけてきた。1人目は清水司しみずつかさ。私の幼馴染である。家が隣で小中高と同じだが、中学で色々とすれ違いがあって話さなくなった。2人目は大宮大星おおみやたいせいくん。クラスの中でカースト上位の人。半分チャラくて半分真面目みたいな、男子の理想みたいな人。ちなみに私は好きなタイプではない。まず基本的にあまり恋愛なんてしない。


「それで、いいって?」

「うん! ばっちしOK!」

「ナイス! じゃまた明日岳山で〜」「はーい!あ、沙織ちゃんはあとで荷物送っとくから持ってきてね!」

「あ、う、うん」


こうして休日勉強回避できた私はよく分からないイベントに参加することになった。

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話を跨ぐ

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次の日、岳山に行くとすでに3人がいた。


「沙織ちゃーん! こっちこっち!」

「あ、皆さん、おはようございます」

「おっすー」「おはよう」

「みんな揃ったことだしこれからちょっと移動するよ〜」

「めっちゃ楽しみだわ〜」

「うん」


楽しみ?これから何をするんだろう。牢獄?私1人だけを捕まえて3人に虐げられるのか。そう思っていると建物が見えてきた。


「じゃじゃーん! これが私の別荘でーす! 近くて便利でしょー」

「すごいね、これ」

「うんうん、そうでしょ〜! じゃ中に入った入ったー」


まさか小鳥遊さんが別荘を持っていたとは思いもしなかった。


「それじゃあこれからキノコ取りゲーム! 森の中から毒の入っていないキノコを多く取ってきたチームの勝ち! チームは私大星チームと沙織司チームで審査員はお父さんにやってもらうよ! それじゃ16時に帰ってきてね! いってらっしゃ〜い!」


キノコ取りか。毒か毒じゃないか分からないしとりあえず見つけたら全部取っていこう。


「どうやってキノコとる?」

「別れて探す? 効率いいけど」

「え、あ、うん、そうだね、そうしよう」


「……ねぇあいつら、別れて探すって言ってなかったか?」

「…言ってた言ってた。どうしようこのままじゃ…。でも司君のことだしなんか絶対仕掛けるよ! 大丈夫大丈夫」

「…そうだな、じゃ負けないようにキノコ探すか」

「…りょーかい!」


なんか小さい声が聞こえたけど内容は全く聞こえなかった。多分作戦会議をしていたのだろう。とりあえず頑張ってキノコを探そう。


◆ ◆ ◆


結構奥まできた。やっぱり自然は好きだ。休みの日のリフレッシュに最適な心地よさ。昔は司とよくここにきたな、としみじみ思いながら奥まで進んで行った。


「おいそこのお姉ちゃん、ちょっときてくれねぇか」


これはまずい。山賊だ。しかも5人くらいもいる。とりあえず逃げるしかない。足には自信がある。


「あっちょっと、おいこらまてぇ!」


無言でひたすら逃げる。障害物の多い森を逃げるのは難しかった。苔が多く何度も滑りそうになったり、木の根に引っかかりそうになった。しかし相手は大人だ。必死で逃げても全然距離がのびない。逆に段々と縮まっていく。これ以上逃げられない。ここで終わりか……


「何やってるんだ!」


聞き慣れた声だった。びっくりして振り返ってみるとそこには司が立っていた。まさか司、助けにきてくれたの⁈


「この子は殺させない!」

「「「「「………」」」」」

「いや別に殺すわけじゃねぇし物盗る訳でもねぇぞ」

「「???」」


ん?じゃあなんのために私を追いかけてきたのだ?強盗じゃないならなんでなんだろう。知られたくない秘密があったら殺すだろうし。


「ほらこの財布、お前のだろ」

「っ、、、、そうです」


財布届けてくれただけか。心配して損した。


「ってことは沙織、襲われてる訳じゃなかったってこと……?」

「沙織がこの女だとしたらそうなるわな」

「………………」


司、ホントにごめん。でもカッコよかったよ。


「そうや、今までこんな森で何してたん」

「友達とキノコ取り大会してたんです」

「そうか。じゃうちくるか? キノコ大量にあるぞ」

「ホントですか!? ありがとうございます!」

「それじゃあついてこい」


ラッキーだ。財布落としたけど届けてもらい、キノコまで頂けるなんて。こんな暗い女だけど負けず嫌いなんだから絶対負けない。ん?司がキノコの欠片落としてる……?どうしたんだろう


「司、なんでキノコの欠片落としてるの?」

「ないしょ。後々分かるから」

「ふーん、分かった」


まぁいいや、司のことだし放っておこう。


◆ ◆ ◆


凄くキノコのような家にきた。物凄く大きいキノコの中をくり抜いて使ったような感じがする。すごい面白い家だな。


「ほら、飲み物。こんなものしかないが、飲んでみてくれ」

「何からなにまでありがとうございます」

「全然いいってことよ」

「では、頂きます」


すごい甘い…!砂糖水かな。体に悪そうだけど疲れた体には凄くいい……!あれ?なんかちょっと眠気が……

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