ハンマー・ROCK・スレッジ

三峰黒兎

第1話 『鉄槌』

帰宅してけいは激昂した。

妹、美兎みうの悲鳴を聞き、部屋へ駆けつけると義父が盛りのついた犬のように腰を振っていたのだから。


無理矢理犯される美兎を助ける為、

手近にあったハンマーを手に取ると

俺は迷いもせずに義父へそれを振り下ろす。


1回目、頭蓋が割れる鈍い音が響き。


2回目、呻き声をあげて転げる義父の首を掴み、額を割る。


3回目、命乞いをする義父の眉間を叩くと両目が勢いよく床に飛び出た。


「お兄ちゃんもうやめて......」


美兎を突き飛ばし、義父にハンマーを狂ったように振り下ろす。


何度目だろうか。

床に義父の脳や頭蓋が散乱し、

鼻腔に鉄臭い血液の匂いが漂うようになったのは。


気がついたら、俺は返り血を身体中に浴びながら美兎に抱きしめてられていた。


そこから先は記憶が曖昧で覚えていない。


留置所で義父を殺した事実を知り、

その後、美兎は義父の子供を妊娠し海に身を投げた。


昼食後、俺はスプーンを捻り切り、鋭利な先端を躊躇なく首に突き刺した。

こんな掃き溜めみたいな世界など、生きていたくないからだ。


「ーー?」


幸か不幸か。俺はまだ死ねないようだ。

暗い視界が徐々に見えていき、心配そうに覗き込む女の顔。


「俺はいったい......悪い夢か」


彼女の膝枕から飛び起きると、そこには知らない世界が広がっていた。

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