魔法をかけて

@yunamikyo

第1話 魔法をかけて

言葉には力が宿っている、「ありがとう」。「ごめんなさい」。一言でも言い方や表情、感情の込め方で言葉は形を変える。思ってもないありがとうは相手に不快感を抱かせ、心の中で感謝していても態度が悪ければ相手に伝わらず関係を悪化させる。京介は素直じゃないと家族からよく言われる。大切な人から言われる正しい言葉ほど、キズつき悲しくなる。誰よりも信じている分、言葉に力が宿るからだろう。だからこそ、悲しくなって、相手に見せまいと嘘で固めた言葉で反発する、だから自分を嫌いになる。「なんであんなことを言ったのだろう」、ごめんなさいが言えないのに、後悔ばかりが膨らんでいく、お母さんと喧嘩した、口から出任せばかり、負けず嫌いな僕は嫌みを込めた言葉の数々で自分を守ろうとする、喧嘩に勝っても何も嬉しくない。だから素直じゃないって言われて悲しくなる。自分のことがどんどん嫌いになっていく、もう自信を捨てちまえって思う。苦しい時ほどよく笑えというけれど、ポジティブになれっていう意味がこもっていると思う、辛い時ほど明るい言葉の力を借りて、自分にありがとう、相手にごめんね、を伝えるべきなんだと思う。

文章にだって同じ力が宿っている。丁寧な字で書いた文章にはその人が文章を書くのが苦手でも、一生懸命に書いたことが相手に伝わる。そして受け取った側はとても嬉しい気持ちになる。

文章を書くのが得意な人がいて、その人はスラスラと文章を書く、彼は文を書くのが好きで勉強しているのだが、誠意込めた文を書いても伝わるか不安に思っている。彼は信用されていないわけではない、自分らしさが分からなくて悩んでいる。文を書くのが生き甲斐である彼の短所は短期で頑固な一面があるところだ。だからこそ、良いことを書いても現実で実行出来ないことに腹を立て悔やんでいる。信用こそ全てだ、時間をかけて字を書いても、言葉を選んで書いても、その人の内側は絶対に見えない。嘘で固めた文を書いているかもしれないのだから。

メールで会話するより会って話したい。その方が何倍も楽しいから。

文章で本音を書いたが果たして、何人が僕のことを信じるのだろうか。

メールでのありがとうは「アリガトウ」に聞こえる。果たして、かっこつけたこの言葉をどのくらいの人に分かってもらえるだろう。電話での声は、実は機械が作り出した偽物の声なんだって、この雑学をうまく説明するのって難しい、言葉に力を宿すのってすごく難しいから小説を書くのって最高に難しい。まるで魔法を使っているみたいだ、小説を書く上で、僕は言葉に力を込めて命をふきこんでいるんだ。そう考えると面白い。だから難しくても頑張れる、その気持ちがこうして小説を書く力になっている。大好きな人に読んでほしくて、ペンを持つ右手に力を込める。「伝われ」て思いながら、「言葉よ立って歩け」って思いながら文を書く。出来たら終わりじゃない。出来てからこそスタートラインに立つ。見てもらってからが本番だ。出来て満足するようではダメ、厳しい言葉を受け入れる覚悟を決めなければいけない。自分に厳しく「もっと努カが必要だった」時に優しく「伝えたいことは全部書いた」。自分を大切にしてこそ、他の人への愛が、自分への愛が、作品を書く愛が生まれるのだから前を向く。

直接会って、「おはよう」という方がメールのオハヨウ、よりも力がこもっている。僕は恥ずかしく元気におはようが言えない。メールでは気持ちを伝えるのが上手い、会う時より緊張しないし、顔が見えないから言葉がたくさん浮かぶ。けれど、メールの文章に想いを込めても僕は物足りない。デジタルよりアナログが良い、メールより電話が良い、電話より直接会うのが良い。会うと緊張して目を見れない、だから不信感を抱かせる。そればかりでは信用を失う、生きた言葉が歩いていっても行き先がなくなる。

直接会って話す方が元気が出る、なにより楽しい。絵文字で書かれた好きよりも会って直接好きといわれたい。


大好きなあなたへ、

こうして文を書くことで想いを届けたら伝わりますか?伝わりますように、が「ツタワリマスヨウニ」と聞こえませんか?命を吹き込むから、しっかり読んでほしいです。

「京介より」

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