ニート貴族のゲームライフ無双!

双葉鳴🐟

文字化け才能は貴族の名折れ

アルフレッド・スグエンキル。

侯爵家の次男として生まれ、一を聞き十を得る生粋の天才肌。

二つ上の兄コモーノ・スグエンキルを内心馬鹿にしており、両親や侍女もアルフレッドに味方した。


誰もがアルフレッドに期待していた。

幼くして武道や剣術、経営学にも興味を示し。

侯爵家は安泰だと誰もが思っていた。


しかし……アルフレッドが10歳の時。

才能鑑定の儀にて、それが起こった。





「アルフレッドの才能が文字化け? 神官長、これは何かの間違いではないのかね?」


「私もこの職について初めてですよ。こんな不具合は」



順風満帆だった人生に大きな翳りが差し込んだ。


才能鑑定の儀。

それは貴族として生きる上でついて回るステータス。

この才能が優れているかどうかで、今後の人生が大きく変わる。


アルフレッドは生まれながらにして有能だった。

だからきっと有望な才能を授かるに違いない。

両親も執事も侍女たちも。誰もが信じて疑わなかった中、一人勝ち誇った笑みを浮かべるものがいた。



「無能! お前は無能なんだよアルフレッド! それに比べて俺様は有能だった! 侯爵家から消えろ、この穀潰しめ!」



今まで弟にその立場を持っていかれた兄コモーノからの糾弾に、アルフレッドは周囲を見回す。

今まで頼れば誰もが手を貸してくれた。


だから自分が文字化けの才を授かってもそれは変わらない。

そう思っていたアルフレッドだったが……



「そうやって今まで通りが通用すると思うな!? ね、そうですよねお父様?」


「むぅ……アルフレッド。お前には期待していたのだがな。失望したぞ」


「そんな、お父様! これは何かの間違いです! そうだ、きっと故障していたんです。もう一度チャンスをください!」


「そうやって、失敗する度に言い訳をするつもりか?」


「!」



父からの冷たい視線を受け、アルフレッドは固まった。

今までの見守ってくれるような暖かなものではない。

他人を見るような冷たい視線に、ああ自分は期待を裏切ってしまったのだなと落ち込むアルフレッドだった。



「次のデビュタントにはお前を連れて行く予定だったが、早い段階で欠陥が見つかって良かったと見るべきか。お前は廃嫡する。我が侯爵家を守る為だ。分かってくれるな?」


「廃嫡だなんて生ぬるい、お父様、こいつは我が侯爵家を我が物顔で歩いていた裏切り者ですよ? 即刻死刑に処すべきです!」


「コモーノ、今度からはお前が侯爵家を継ぐのだぞ? その浅慮さを多家に利用されるとまずい。もっと大人の対応を身につけたらどうだ? アルフレッドは出来ていたぞ?」


「ですがお父様! こいつは我が家の疫病神です!」


「そうまで対抗心を示すなら、アルフレッドは離れへと幽閉する。それで溜飲を下ろせ、コモーノ。我が家の恥を外に出して噂される方が拙いのだ」


「そうまで言われるのでしたらそれで納得します。良かったな、能無し。お父様からの寛大な処置でお前の死刑はなくなった。だが、俺はお前を一生許すことはないだろう!」



兄コモーノは、弟からその地位を奪うだけでなく、ずっと手に入れたかった味方を手に入れ好き放題やった。

両親はそのヤンチャぶりに頭を抱えたが、すぐに落ち着くだろうと跡継ぎとしての教育を始めた。


離れの屋敷に閉じ込められたアルフレッドは、一日一回の自助の見回りの回数を減らされ、数日もしないうちに死の淵を彷徨うことになる。


兄コモーノの采配だ。

将来性のある兄につけば色々といい思いができると侍女達に宣伝して回っている。


今まで10年に一人の逸材だともてはやしていたのに、才能が文字化けしていたからと早々に縁を切る侯爵家。

そのずば抜けた感知力で他貴族を凌いで成り上がってきた。


離れの屋敷に閉じ込められて一週間後。

アルフレッドは高熱を出して寝込んでいた。

たまに来る侍女が持ち込んだ食事に毒が仕込まれていたのだろう。


思えば兄とあまり良い関係を気づけなかったのが原因なのだが、それすらも周囲の大人の采配なのだから子供のアルフレッドには罪の意識は薄い。


だんだんと薄れて行く意識の中、過去の記憶がフラッシュバックする。


走馬灯だ。

周囲から褒めちぎられて慢心していた自分。

兄より優れていると常に比べられて努力するように努めてきた。



「その努力も、たった一つの才能で潰えるのか」



なんたる理不尽。

死にたくない。死にたくない。


今まで押し殺してきた感情が溢れ出る。


ああ……もう少し、兄とは普通の兄弟らしく暮らしたかった。

親や周囲からの言葉を真に受けない……普通の。普通の?



「なんだ……これ?」



突然、見知らぬ記憶が混ざり込む。

薄暗い部屋。

周囲に散乱した書籍に、水晶版のような映像媒体。

そこに映る小太りの男。

それが覗き込む世界は……



──ブツン



意識が暗転する。

まるで水の中に浮遊していたように目が覚める。

そして思い出した。


流れ込んできた情報を処理しきれずにふらつく頭を軽く振った。

そして今一度ステータスを呼び出す。

ゲームみたい。


見知らぬ知識が言葉を紡ぐ。

そう、この世界はあの男のやりこんでいたゲームとあまりに酷似していた。


そしてアルフレッドの授かった才能もまた、それに類するものだった。



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ネーム   :ーーー

生まれ   :貴族/侯爵家【SR】

才能    :ゲームサイト【UR】

サイトレベル:1

PCスペック:1

<所持金>

  ¥0

<スキル>

遊ぶ  :選択可能ゲームを遊べる

取り出す:ゲーム内アイテムを取り出せる

持ち込む:取り出したものを他のゲーム内に持ち込める

換金  :ゲーム内マネーを¥に替える

課金  :¥を使ってゲームサイトに課金出来る

<選択可能ゲーム:0/1>

◆遊ぶゲームを選択してください

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【レベル1】

<ハッピーベジタブル>

 畑で野菜や果物を作ってフレンドにスープをご馳走できる交流ゲーム。地域ごとにデコって素敵な農園を目指そう!


<牧場ストーリー>

 広大な土地を開拓しながら目指すはその土地一番の大地主!

 交易で資金を集め、第一次産業を牛耳ろう!

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