ミリアッドカラーズ

ゆりもす

プロローグ

 『少年』は変わった。いや、変わらざるおえなかった。

 目を逸らし、遠ざけ、蓋をしていた過去の自分が、憎み、慄き、背を向けた力と向き合ったから。

 全ては自分のため。

 全てはエゴを貫くため。

 必要な過程であったから。

 それが、最悪な結果になろうとも。

 それが、夢を壊すことになろうとも。

 それが、自分が自分でなくなろうとしても。


「違うよ」

 赤き血潮が穢す視界の中、『誰か』は言った。

「あんたはなにも変わってなんかいない」

 じゅくじゅくと斬られた傷が悲鳴をあげる。まるで人間のようだ、と他人事のように思う。

 死ぬ寸前だというのに、僕は彼の声に耳を傾けていた。

 聞きたかった。

 あるいは、思い出したかったのかもしれない。

「この世界に架かる『虹』は、いつも通り綺麗だよ」

 朦朧とする意識に身を委ね、眠りにつく。

 『僕』が『僕』たる根源を、ゆめにみて。

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