ー1ー 神の誕生〜箱庭〜
想像を超える昔。ひとりの神が誕生しました。その名はエル。エルは愛に恵まれていて、邪念はひとつもありませんでした。それが悲しみを生むことも知りませんでした。
エルは天で一人きりでした。
エルは友達が欲しくなりました。エルに寂しいという感情が生まれたのです。
寂しいという感情はひとつの生命となり、エルと同じ神になりました。
エルはその寂しいという感情を分け合う存在に名前をつけたくなりました。
エルは初めて言葉を生みました。
「アマレ」
それがこれから少し出てくる愛と寂しさを持った神、アマレになります。
驚くことに神々はこうして天で次々と生まれていきます。
エルとアマレは兄弟のように仲睦まじく、温かな感情を抱くようになりました。エルはこれを愛と呼びました。言葉はお互いの間で増えていき、いつしか語り合うようにまでなりました。
「アマレ、お前は愛情でできている」
エルはいいました。
けれどアマレは悲しみをうかべました。
「エル、私は寂しさも持ってます」
エルはいいました。
「では、その寂しさを埋めよう」
エルはアマレと共に立ち上がり、アマレを抱きしめました。
天から小さな種が落ちてきました。
神はそれを小さな庭にしました。
これがトゥイたちの住んでいた惑星です。
箱庭、そう呼ぶことにします。
箱庭はまだ暗かったです。
「エル、これでは寂しいです」
「では、光を当てようか」
エルは箱庭に光を当てました。これが属に言う、箱庭の太陽になりました。
「太陽の神よ、箱庭を立派にしておくれ」
ですが、ずっと光に当ててるのもそれはそれでつまらないものです。
「では、暗闇をもたらそう」
箱庭は暗闇で覆われました。
アマレはそれでも退屈でした。
エルは笑いながら、ふと立ち上がりました。
「あの箱庭に私とお前のような存在がいたらいいだろう。きっと私たちの友になるに違いない」
「エル、それは名案です」
残念なことに、これが悲劇の始まりでした。
箱庭には言葉も何も分からない二人の存在がありました。
エルはいいました。エルは気まぐれです。
「片方を、イシューともう片方をアシューにしよう」
イシューとアシューは暗闇が怖いようでした。
アマレは太陽に呼びかけて光を当てて、エルはその間に闇の間に灯す存在を考えていました。
その間もアマレは心配そうにイシューとアシューを見守っていましたが、少し二人は暑そうでした。
「アマレ、太陽が昇っていてもイシューたちは暑そうなのだな。かといって闇ばかりでは怖がってしまう。これならどうだ、私は夜の間、暗闇を灯してくれる明かりを考えた」
その明かりというのがいわゆる月でした。
やがて、風の神、星々の神(ヴァルタ)が水の神、火の神まで生まれました。
火の神は太陽の親族にあたるような存在です。
イルミナがその火の神でした。
年月が立ち。箱庭はすっかり神々たちに運営されていきました。ですが、人間たちにも欲があります。
戦争が生まれました。戦争を生まれることを予期していなかったエルとアマレは深く悲しみました。
箱庭さえ作らなければ、こんなことにはならなかったのです。
箱庭はまもなくエルの力で水ごと洗いざらいされて、箱庭はすっかりしずかになりました。
……そしてエルは、自らを深く責め、自らを無くしてしまいました。
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