選別の儀

 翌日、わたしはおじいさんとおばあさんと一緒に、子爵領にある町の教会へ。

 ここで『選別の儀』を受け、魔法適正を調べる。

 魔法適正は誰でも持っているというわけではない。貴族の子供でも持っていない子は多い。

 でも、持っていると『セイファート魔法学園』の入学許可がもらえ、魔法を学べるとか……魔法、最初はけっこう興味あったけど、子爵領を離れることになると思うと、気乗りしない。

 教会は、私のイメージ通りの建物だった。


「わぁ、初めて来たかも」

「ふふ、アリアは町の商店街ばかり行きますからね」

「お、おばあさん……それは言わないでよぉ」


 おばあさんはクスクス笑う。

 おじいさんは、神官? 司祭? みたいな人と何か話し、私を手招きする。

 おばあさんに背中を押され、司祭さんの元へ。


「初めまして、アリア様。これより『選別』を始めます。こちらへ」

「あ、はい」


 別室に案内された。

 部屋には透明な水晶玉が台座に安置されている。あとで知った話だけど、教会には必ず置いてあるみたい。

 

「さぁ、この水晶に触れ……魔力を送るのです」

「はい?」


 まりょく、って……魔力?

 いきなりそんなこと言われても。とりあえず触れてみる。


「…………ぁ」


 ふわふわした。

 身体から何か、流れていく感じ……触れた部分が熱くなり、一気に燃え上がった。


「うぇぇ!? もも、燃え……あれ、熱くない」

「こ、これは……!?」


 司祭さんが驚いている。

 そりゃそうだ。だって、この炎……真っ白なんだもん。

 純白の炎。すごく綺麗……熱くない、温かみを感じた。


「白い炎。白属性……せ、聖女様、聖女様の魔法です!!」

「せいじょ?」


 宝玉から手を離すと、司祭さんが跪いて私に祈りを捧げ始めていた。


 ◇◇◇◇◇


 屋敷に帰る(外食は中止になった……)と、おじいさんとおばあさんが深刻そうな表情をしていた。

 物凄く嫌な予感……白魔法って回復魔法なんだよね。絶対そのことだよね。

 すると、おじいさんが言う。


「アリア。なんとなく察していると思うが……今日の選別の儀でお前の属性が『白』と判明した」

「う、うん……それ、マズいの?」

「いや、まずくはない。珍しいのだ。『白』属性に目覚めた者は、歴代でも『聖女』と呼ばれる癒しの使い手だけだ。この世界で唯一、癒す魔法……怪我でも、病気でも、聖女の魔法は全てを癒すという」

「おお、すごいねー」

「……このことは、すぐに王都へ報告した。お前は王都の『セイファート魔法学園』への入学許可が下りる。いや、学ばねばならんだろう」

「え……」

「ふぅ……こんなこと、歴代で初めてだそうだ。まさか、聖女が二人も」

「え? 二人?」

「ああ。王都には今、『聖女』がいる。お前と同い年の女の子で、『白』属性に目覚めた子だ」

「うっそ……」

「アリア。お前は王都へ行きなさい……王都にいるワシの息子には連絡しておく」

「……あ、あの。おじいさん、帰ってこれるんだよね? 私……」

「大丈夫」


 おじいさんは立ち上がり、私の肩をポンと叩く。

 おばあさんも、私の肩に手を置いてくれた。


「ここはお前の家だ。何があろうと、わしらはお前の親だよ」

「お、おじいさん……」

「アリア。大変だろうけど……気を付けてね」

「おばあさん……うん」


 こうして、私は王都へ行くことになった。

 五年ぶりの王都……もしかしたら、クロードに……なんて。


 ◇◇◇◇◇


 数日後、私は王都に向けて出発した。

 学園の入学は一年後。十五歳になってから。

 それまでは、王都にある子爵家の家に住む。

 馬車に揺られて一か月……私は、帰ってきた。


「王都……」


 クロード、元気かな。

 風邪、よくなったよね……きっと、大きくなったんだろうな。

 まあ、もう会うことはないと思う。

 馬車は子爵家に到着。馬車から降りると出迎えてくれたのは。


「おお、きみがアリアだね。初めまして、父さんから話は聞いてるよ」


 なんと、子爵様……おじいさんの長男であるケイモン様が出迎えてくれた。

 そして、ケイモンのお隣には二人の男女が。


「紹介しよう。私の息子ケイムスと、その姉ユリアだ」


 わお、イケメンと美少女が並んでる。

 頭を下げようとすると、姉のユリアがニコニコしながら私の元へ。


「初めまして!! やっと会えたぁ~!!」

「あ、あの」

「ユリアよ。歳は十五であなたの一つ上。ふふ、可愛い妹ができたっておじいちゃんから聞いてたの!! ね、私のことはユリアお姉様か、お姉ちゃんって呼んでね!!」

「は、はい。えっと、ユリアお姉ちゃん」

「~~~っ!!」


 ユリアお姉ちゃんはプルプル震えた……なんか、思った反応と違う。

 すると、イケメンがユリアお姉ちゃんの頭をぺしっと叩く。


「落ち着けよ、姉さん。悪いね、姉さんってばずっと興奮しててさ。ああ、オレはケイムス。同い年だけど、一応は兄になるのかな。まぁケイムスって呼んで」

「はい、ケイムス」

「あと敬語はなし。同い年だしね」

「……うん、わかったよ、ケイムス」

「ああ」


 ニカッと笑うケイムス……い、イケメンじゃん。

 なんというか、仲良し姉弟だ。

 こういう異世界物って、意地悪兄や姉だと思ってたけど。


「さぁて、立話はここまで。さぁ二人とも、アリアを部屋に案内してやってくれ」

「はーいっ!! ん~、やっぱり生意気な弟より、可愛い妹だわ!!」

「ふん、オレだってそうだね。生意気な姉より、可愛い妹のがいいさ」

「なんですって!?」

「そっちこそ!!」

「わわわ、けけ、喧嘩はダメだって!!」


 こうして、私にお兄ちゃんと、お姉ちゃんができました!!

 うん、子爵家でもうまくやっていけそうです!!

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