有限の命を想う
向こうから惚れられた事はあるのか?
21世紀の日本人の妻の葬式の時、兄がそう言った。
正直な話、無い。自分はこの母らを助けよという派遣に従っているに過ぎない。時代や国に合わせて、彼女たちを助け、終生に渡って面倒を見るのに適した関係性を保つ。
結婚だったり、後ろ盾だったり、パトロンだったり、その形は様々だ。
何だったら母は女ではなかったりする時もザラだし、産んでいないのもザラである。
その為、今回の葬式も、慣れたものだった。既に見送った姑、嫁いだ上の娘も出産やらなんやらが落ち着いて、あとは大学を卒業するだけの下の娘だけ。
「ふふ、おとうさん、昔から変わらないね。小さい時のままよ。」
基本的に自分たちのようなものは、見たいように見えるので、下の娘に自分がどう見えているのかは分からない。
ただ、そのように見えるということは、娘の心は、昔から変わっていないのだ。思春期の頃から。ややもすると、困窮していた時に助けてくれた「恩人」の時から。
「おとうさん、あのね…。」
「お前の気持ちは嬉しいよ。でも、よくお聞き。」
―――向こうから惚れられたことはあるのか?
―――…いいや、全て勘違いだよ。
「実は僕、人間じゃないんだ。」
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