有限の命を想う

 向こうから惚れられた事はあるのか?

 21の葬式の時、兄がそう言った。

 正直な話、無い。自分はという派遣に従っているに過ぎない。時代や国に合わせて、彼女たちを助け、終生に渡って面倒を見るのに適した関係性を保つ。

 結婚だったり、後ろ盾だったり、パトロンだったり、その形は様々だ。

 何だったらは女ではなかったりする時もザラだし、産んでいないのもザラである。

 その為、今回の葬式も、慣れたものだった。既に見送った姑、嫁いだ上の娘も出産やらなんやらが落ち着いて、あとは大学を卒業するだけの下の娘だけ。

「ふふ、おとうさん、昔から変わらないね。小さい時のままよ。」

 基本的に自分たちのようなものは、ので、下の娘に自分がどう見えているのかは分からない。

 ただ、そのように見えるということは、娘の心は、のだ。思春期の頃から。ややもすると、困窮していた時に助けてくれた「恩人」の時から。

「おとうさん、あのね…。」

「お前の気持ちは嬉しいよ。でも、よくお聞き。」

 ―――向こうから惚れられたことはあるのか?

 ―――…いいや、全て勘違いだよ。


「実は僕、人間じゃないんだ。」

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