Eggs!!!!〜わたしの同期たち〜

みさか つみ

だって、それは、同期だから

 午後の休憩が終わってすぐの頃、後ろから聞こえてきたのは、聞きなれた声だった。


 「羽入ちゃん、今日ご飯行こうよ。同期の会、どう?」


 提案したのは、三井宗一郎という、私の同期だ。入社して6年目になるが、私と彼、他数名は、未だに他地区の支部に異動しておらず、本社勤務を続けてた。

 

 「ううん、どうしよっかな。他に誰か来るなら、行ってもいいかも、人集まってる?」


 「まだ。羽入ちゃんが第1号」


 「私、まだ行くって言ってないからね?」


 いつもこんな調子で宗一郎に流されそうになる。可愛らしい顔をしていて、彼は結構強引なのだ。


 「えぇ。最終、俺と2人で行こ」うよ。俺、めっちゃ焼き鳥食べたい。焼き鳥、焼き鳥。ね?」


 「焼肉なら考える」


 適当な冗談だ。

 

 「マジ!?」

 

 「さぁ、どうだろね?」


 「同期声かけまーす、我儘」


 ぼそりと小言を言ったのを聞き逃すことはない。

 

 「何か言った?」


 あえてそう聞くと、彼は、おどけたように答える


 「イイエ。」


 彼と話していると、この話は、終わりそうにない。実際、休憩が終わってからの会話だ。見ている上司が居れば、私よりも面倒な小言を言う可能性も充分にありうる。


 「じゃ、午後もがんばろ。」


 そう言って、手を挙げると、彼も手を挙げ、去っていく。

 さて、彼は、どれだけ人を集められるかな、そう思い、人事部の扉をくぐる。



 定時きっかりにバッグの中のスマートフォンが短く震える。

 確実に言える、宗一郎のメッセージだと。案の定、画面上には、彼の名前が表示されていた。定時きっかりに連絡を入れるなんて、暇だと言っているようなものだ。


 『お疲れ様、きっと一番早くに終わるだろう、羽入ちゃんから連絡していきます。30分後入り口に集合で。合計4人集まりました。』


 メッセージアプリを開くと、人を暇人のように書いているが、この中で一番の暇人は、絶対に、誰が何といおうと、宗一郎だ。

 残っている仕事を終わらせてもまだ時間が余りそうだったので、金曜日でもあるし、机の周辺を整理していると丁度良い時間になった。



 会社の入口にメッセージの30分後である午後6時30分に到着した。

 まず見つけたのは、宗一郎の後ろ姿だった。

 そして、その奥にいたのは、星崎要、壁に背を付け座り込んでいる金井希望もいた。


 「あ、ごめん、みんな集合してたの」


 私が慌ててそう言うと、要が口を開く。


 「だって、こいつ、何度も俺のとこ来て、しつけぇんだもん。先輩、さっさと帰してくれた。来週、鬼の残業習慣だよ」


 「えぇ可哀想。先輩早く返してくれたのって、絶対、宗一郎がウザかったからだよね。私んとこには、内線かけてきたんだよ。客の対応中だってのにぃ」


 希望は、はぁと深いため息を付く。

 

 「うわぁ、ありえない。私が一番マシだったわ。ねぇねぇ、三井君、ちょっとどれだけ、同期会開きたいの。こんな急に」

 

 「そんなの花金だからに決まってんだろ。焼き鳥な。店も予約してある。じゃ、行こうぜ」

 

 宗一郎に半ば強制的に同期会を開かれ、それに参加するのは、きっと皆、なんだかんだ言って、三井宗一郎という人間が好きだからだろう。焼肉、を提案していたが、皆が居れば、何だっていいのだ。それに、私たちが同期会をするのは、決まって焼き鳥屋さん“鳥子”(とりこ)なのだ。メニューを空で言える自身もあるほど、私たちは、通っていると言ってもいい。秋も深まる日、食欲は、旺盛だ。

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