情緒不足

 最近、AI搭載の幼児型ロボを育て始めた。


「おとうさん、トリさんが」


 我が子の手のひらの上には小鳥。

 しかし、すでに息絶えているようだ。


「お墓を作ってあげよう」

「……はい」


 僕は庭で土をほり、小鳥を埋めた。

 それから十字架を立てた。


「安らかに眠れ」


 両手を組み、祈る。


「やすらかに、ねむれ」


 僕を真似して、我が子も手を組む。

 しばらく黙とうを捧げ、周囲に静けさが満ちる。


「これでトリさんは天国にいけましたね」

「そうだね」

「ぼく、おとうさんのおかげでうれしいです」

「そうか。ならよかった」


 僕は我が子の頭を撫でる。


「人にされて嬉しかったことは、他の人にもやってあげなさい」

「わかりました!」


 我が子はロボットとは思えない、満面の笑みを浮かべた。


 それから数日後。


「うええええええん!!」


 我が家に駆けこんできたのは、近所の子ども。

 さらに後を追って来たのか、その子の親御さんが現れた。


「どうされました?」

「アンタんとこのAIがとんでもないことしてるの。早くやめさせて!!」


 僕は案内に従い、近所の公園へ。

 そこには、無数の小鳥の亡き骸と、いくつもの十字架が並んでいた。


「うええええええん!!」

「うええええええん!!」


 泣きわめく子どもたち。

 まさに阿鼻叫喚の光景である。


 それをよそに、何やらひたすらに作業をこなす、見慣れた幼児姿が。


「うんしょ、うんしょ」


 我が子は楽しそうに小鳥を埋め、埋めては手を組み……を繰り返していた。

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