1,000字未満のこばなし【現代ドラマ】

こばなし

【死のノート】

 隣の席の女子。前髪で片目を隠しており、いわゆる中二病っぽい雰囲気だ。

 彼女はときどき、真っ黒な表紙のノートを取り出しては何やら書き込んでいる。


「アイツ、また死のノート書いてるよ」


 遠巻きに二人の男子がバカにする。よく知りもせず馬鹿にするもんじゃない、とやんわり注意してやった。


 放課後、忘れ物を取りに教室に戻ると、彼女の机上に例の黒いノートが。開きっぱなしのそれを、俺は好奇心から覗いてしまう。


「〇〇と〇〇は200歳まで人生を共にした挙句、互いに愛の言葉を囁き抱き合いながら死亡」


 ――俺と、隣の彼女の名前だ。


「あっ……」


 悲鳴に近い声に振り向くと、入口で口元を抑え立ちすくむ彼女と目が合った。


 そのノートに、俺と彼女のあらゆる死に方が書かれていることを知るのは、もう少し先の話。

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